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アジェのパリ#07/パリ・チェンジング

今日のバケットをペニンシュラへ買いに行くついでに、裏口にあるテラスカフェでお茶した。その時の話である。

「クリス・ラウシェンバーグChristopher Rauschenbergという人がいる。ワシントン州オリンピアのエバーグリーン州立大学の先生だ。写真と芸術を教えていた。彼は写真を通してベレニス・アボットと知己が有った。そのおかげだろうな、ラウシェンバーグは1997年から1998年にかけて、アジェが撮った場所で、アジェと同じカットで500余枚の写真を撮った。それを写真集にしたのが「paris changing」だ。左側に1900年代初頭にアジェが撮った写真を載せ、右側に彼が撮った同じ場所同じカットの写真を載せている。見事な対比だ。」

「それって、あなたのアイデアじゃない?そのおかげで、私、重いカメラバッグを持って、当てもないのにパリの街をウロウロ歩いたアイデアじゃない。・・やられちゃったわけ?」
「やられちゃったというか・・まあ、同じことを考えてた人がいた、ということだ。」
「1997年というと・・あなたより後じゃないの。あ~あ、やられちやたわけね。」
「ははは、ラウシェンバーグは組織力も有ったし資金力も有ったし、なにしろベレニス・アボットという強い味方がいるからな。僕らみたいに二人だけで、検討つけながら1日かかりで一枚撮れるかどうかというのとは、違うさ。」
「くやしいわね」
「くやしくはない。同じアイデアを形にしてくれる人がいて嬉しい。」
「くやしいのは重い思いをしただけで終わった私よ。」
・・すいません。
クリス・ラウシェンバーグの写真集は素晴らしい。 後に、同じアイデアでベレニス・アボットがNYCの今昔を撮っているが、これも素晴らしい。写真とは斯くあるべしという作品だ。
「あ。思い出したわ。そういえばそのニューヨークの写真集って、あなたが同じアイデアでニューヨークでやるぞ!と言ったらMoMAのギフトショップで、同じアイデアの写真集を見つけて・・悔しがってた、アレでしょ。やっぱり悔しいんじゃないの♪」と得意満面に嫁さんが言った。

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無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました