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甲州ワインの謎#01/酒の肴の歴史話

店は閉めたままなのにもなぜかワインの在庫はドンドンとなくなってきます。ふしぎだなぁ。どうもワインセラーの底に穴が開いているらしい。困った困ったと云いながら夕食になってます。
夕食はたいていママの実験作を消化する時間で、続くときは同じ料理の改良版が10日くらいは普通に続くのです。まあ、大事だからね。最大ソリューションを求める道は遠いです。きょ~りょくいたします。
て、ことで・・珍しくついでに出るワインが今夜は国産ワインでした。
甲州種です。
甲州種はですね、とても謎に満ちた葡萄なんです。
ママの実験作を食しながら、甲州種のことを話し始めると、古代史の深い闇の中をさ迷うことになるのです。・・・さ迷ってみよう。

甲州種は長い間、その出自が不明でした。ところが2013年。酒類総合研究所が、そのDNAを調べたところ、甲州種は日本原産の葡萄でないことを発見しました。ヴィティス・ヴィニフェラ種(Vitis Vinifera)と呼ばれているヨーロッパ種だったのです。
もう少し正確に言うと。。ヴィニフェラ種のDNA75%と中国野生種ビティス・ダビディ(Vitis davidii)25%のハイブリットなのですよ。
こりゃびっくりだ。

甲州種は古くから、今の埼玉県・勝沼域上岩崎と下岩崎で生食用に細々と栽培されていました。ワイン用なんかじゃないよ。日本でワインを作ろうなんて気になる前から甲州に有った葡萄なんですよ。
・・ルーツは、奈良時代の僧・行基が薬師如来から授かったものという説。あるいは平安時代末期に雨宮勘解由という人物が見つけたものという説がある。いずれも1000年も前の話です。
どちらの説を採ったとしても、つまり奈良・平安の御代から、実はヨーロッパ種である「甲州」という葡萄が、この地にあったということになります。
では。いつ。だれが。どのようして。
ヨーロッパ原産の葡萄をこの地へ持ち込んだのか? 
まったく歴史の闇に紛れ込んで、直接的な資料は何もない。だから。。。何の縛りもなく、その伝搬ルートを勝手にモーソー出来るのですよ。こいつは酒の肴にゃ最高でしょ?

まず、どうハイブリットなのか?という話から始めましょう。長くならないといいなぁ。新古細工が裏どりにえらい手間取ってるから(^o^;;
ネタはこの論文です。
https://www.frontiersin.org/.../10.../fpls.2020.532211/full
ヴィティス・ヴィニフェラ種は中央アジア・アララト山の麓辺りが出自です。
何回か書いていますが、ワインとして適正な葡萄は少ない。どう少ないかというと糖分の含有量が主たる原因です。葡萄液中の酵母が糖度を分解するわけなんですが、酵母は空気があると分裂して自分の子らを無数に作ります。しかし空気が無いとアルコールを作る。したがって意図的に葡萄液を空気から遮断すると、酵母は液内の糖を全てアルコールに替えてしまいます。・・ところで云うまでもなくアルコールには殺菌力がある。したがって酵母は自分が作ったアルコールによって殺菌されてしまうのです。その液内の酵母が総て自分の作ったアルコールで殺菌されてしまうポイント。そのポイントがジャスト・液内の糖が総てアルコールに替るポイントだと、これが何よりも理想ですね。
酵母が死んで、なおかつ糖が残っていると、出来上がったワインは甘ったるく尚且つ早くダメになります。
酵母が生きているうちに糖が無くなってしまうと、出来上がったワインは酵母の臭いと味が残ってとても不味い。
ヴィティス・ヴィニフェラ種は、その最も適正なポジションにある葡萄なんです。
ところがですね。ヴィニフェラの種を植えてゼロから作ろうとすると、その絶妙なポジションが取れないのです。したがってワインを作る葡萄は枝を折って接ぎ木することで増やします。実はもう6000年以上そうやってワインは作られ続けました

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました