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ボージョレーへ出かけるのには/beaujoLais nOuVEauに秘められたLOVE#01

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ボージョレー地方へ出かけるのには、パリからTGVを利用するのが一番スタンダードです。出発駅はパリ・ガールデ・リオン。目指すはデジョンの先、リオンの手前、マコン・ロシェです。ボージョレー地方は、ここから車で20分足らず。もし泊まる予定でしたら、サンタ・ムールの村がお勧めです。

ぜひ運転手には「ロッシュ・ド・ソルトレが見える道を通ってください」と指定してください。この地区は、旧石器時代の遺跡がたくさん残る地帯で、その中心に奇岩ロッシュ・ド・ソルトレがあります。なんとも不思議な、地面から斜めに突き出た巨大なサンゴの化石で、この手の奇岩は大抵、頂上に教会が建立されるのですが、ロッシュ・ド・ソルトレには有りません。でもその麓には連々と葡萄畑が広がります。殆んどがシャルドネ種です。マコンは白ワインの産地なのです。ボージョレー地方で作られるワインの殆どが赤ですから、この棲み分けは面白いですね。

もし可能ならば、運転手さんにお願いして、少しだけ車を停めてもらって、降りてみるのも良いかと思います。畑の土を見てください。そして目の前の巨大なサンゴの化石の岩山を見つめながら、少しだけそれを口にしてみましょう。この辺りがまだ海底だったころの香りと味がするかもしれません。ロッシュ・ド・ソルトレと名付けられた理由が判る。

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僕はいつも初めて訪ねる葡萄畑では、必ず少しだけその土を食べることにしています。土はワインの味を決める大きな要因です。その畑の土を口にすると、その土から出来る葡萄、その葡萄から出来るワインが、パースペクティブに見渡せるのです。そして忘れない。言葉に翻訳して記憶するより、確実な方法だと僕は思っています。だからぜひ、あなたにもお勧めしたい。

さて。再度、車に乗ってそのまま走ると、すぐにサンタ・ムールの村へ到着します。

サンタ・ムールは600人余りの小さい村です。いかにもフランスの田舎の村で、真ん中に教会が有って、周辺に幾つか商店が店を構え、日曜日と月曜日は何もかも微睡みの中に沈む、そんな土地です。

実は最近、日本人のシェフが此処にレストランを出しました。オープン半年でミシュラン一つ星を取った。なかなか素敵な店です。ボージョレーに行かれるなら、ぜひ寄ってみてください。
http://www.sa-au14fevrier.com/


このサンタ・ムールという村。最近、日本ではちょっとした人気になっているのです。
サンタ・ムール(Saint Amour)は、キリスト教史の中に登場する聖人の名前です。サンタ・ムール教会には、彼の聖遺物がたくさん残されています。文字通り此処は「聖なる愛の村」ですから、この教会で結婚式を挙げる方が多いのです。村側も歓迎です。いつのまにか「此処で結婚式を挙げると、来世でも同じパートナーに出会える」という話まで出来てしまいました。おいおい、キリスト教だろ。最後の審判の日まで死者は蘇らないよ・・と、ツッコミを入れないように。幸せなお二人に、幸せなお話を贈るのは良いことですからね。


言うまでもないことですが、もちろんサンタ・ムールはワインの村です。レストランでもホテルでも、地のワインが当然のように出ます。これが実によろしい。果実味豊かで、爽やかな喉ごしと酩酊感なのです。ボージョレーの実力ここにあり!という感じです。


現在、ボージョレー地方には10のクリュ・ボージョレー(Cru Beaujolais)があります。名前を挙げると。サンタ・ムール、ジュリエナ、シェナ、ムーラン・ナヴァン、フルーリー、シルーブル、モルゴン、レニエ、ブルイィ、コート・ド・ブルイィの10地区です。村の数で云うと22村。サンタ・ムール村は、その中の一つです。ボージョレー地区の一番北の外れにあル。もし何日かかけてボージョレー歩きを試みるのでしたら、ここをベースにして回るのが良いと思います。きっと此処なら長期滞在しても不便は感じないと思うからです。

個人的な好みで言うと、僕はモルゴンのガメイが好みです。10のクリュ・ボージョレーの中で、若くても最も豊潤さを感じさせるワインだからです。

優秀なガメイは、並みのピノ・ノワールより遥かに美味しい。モルゴンのガメイは、それを最も実感させるワインです。もともとガメイは、ピノ・ノワールと北方耐寒冷種とのかけ合わせですからね。出自はとても良いのです。言ってみれば、美人でモデルをやってるお姉さんの妹というところでしょうか?頑張り屋で、目立たない性格。そんな感じです。

この本では、そんな控えめだけど、じつは途轍もない実力を矯め込んでいる葡萄。ガメイについて書いてみたいと思います。

だれが何処から。そして、どう姿を変えていったか。そんな話を書いてみたいと思います。もちろん、ヌーボーの誕生と興隆そして陰りについても書きたいと思います。

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無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました