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なぜ市民ランナーは怪我してしまうのか

ランニングブームは落ち着き、一時期のようにランナー増加は見られなくなりました。では、そもそもランニングを始める人がいなくなったのか?と言えば、恐らくそうではありません。キッカケこそ人それぞれ異なりますが、毎月のように新しくランニングに取り組み始める方がいます。しかしそれに対し、残念ながらランニングを止めてしまう人も少なくないのです。

運動習慣を持つことは、健康面から見てメリットが大きいでしょう。ランニングがのめり込めるような趣味になれば、それだけで毎日に活力が生まれます。それにも関わらず、ランニングを止めてしまう人がいる。私は、これをとても残念に感じています。もちろん、誰にでもランニングが合うとは限りません。どうしても好きになれない、あるいは身体的に難しいという方もいることでしょう。しかし実際のところ、ランニングを止める原因として多いのが“怪我”。そして怪我でランニングを止めてしまう方の中には、裏を返すと「怪我さえなければ続けられていた」方が多いはずです。

走っていれば怪我するのは仕方ない?

もし走っていて怪我した場合、皆さんはどうするでしょうか。恐らく多くの方は「走るのを止めて痛みが引くまで療養」「接骨院等に行って治療を受ける」という、いずれかの行動を取るはずです。確かにその結果、怪我は治り、再び走れるようになるでしょう。しかし果たして、これが正しい選択なのでしょうか。怪我したら療養・治療して、治ったらまたいつも通り走る。これでは、残念ながら怪我から脱却することはできません。

「走っていれば怪我するなんて当たり前」

こんなことを言う人がいます。市民ランナーだけでなく、トップアスリートの中にも少なくないでしょう。中には怪我が自分を追い込んだ結果だと考え、ポジティブに捉える方すらいるようです。

しかし、怪我なんてしないに越したことはありません。怪我すれば、治るまで運動できなくなってしまいます。体力・筋力などの身体機能は低下し、同じ状態を取り戻すには、完治した後かなりの時間を要するでしょう。その繰り返しでは、思うように走力など上がるはずがないのです。すると「なかなか記録が伸びない」「いつまで経ってもフルマラソンが完走できない」など、少しずつネガティブな気持ちが湧き上がってきます。その結果、ランニングがつまらなくなり、止めてしまうのです。

怪我は回避できます。実際、私は年間7,000kmほど走っていますが、怪我なく毎日のように走っています。実業団レベルから見れば別ですが、市民ランナーとしてはかなり多い方でしょう。そんな私も、マラソンを始めた当初は怪我していました。腓骨筋炎や肉離れ、トレイルを走った際には捻挫も起こしています。しかし私は怪我を仕方ないとは捉えず、「どうすれば怪我せず走れるのか」と考えました。考え方を変え、取り組み方を変えれば、怪我する必要なんてないのです。まずは「怪我は仕方ない」という常識を疑ってみてください。

学びのない市民ランナー

ランニングを趣味として始める場合、まず何から始めるでしょうか。ほとんどの方はシューズやウェアを購入し、すぐにでも外へ走りに出かけるはずです。そして清々しさや達成感を得て、また翌日も走る。この繰り返しによって、次第にランニングが生活へ溶け込んでいくのでしょう。平日なかなか走れないという方なら、週末にまとめて多くの距離を走るかもしれません。しかしこの過程にこそ、怪我のリスクを高める要素が含まれています。

例えばテニスを始めようとするなら、スクールに通う方が大半です。ラケットの持ち方、ボールの打ち方を基本から学び、徐々に試合ができるまで技術を習得していくことでしょう。あるいは水泳も、カナヅチでいきなりプールに飛び込めば溺れてしまいます。スイミングスクールへ通い、レッスンを通じて泳ぎ方を会得していくのが通常です。

これに対してランニングの場合、多くの方は“誰かに習う”という過程がありません。五体満足ならば、走るという行動そのものは誰にでもできるでしょう。シューズを履いて外に出てしまえば、とりあえず走れてしまいます。そのため、ランニングは“誰かに習う”という発想が生まれにくいのです。しかし結論から言えば、ランニングにも技術があります。技術を知らず、また学ばずに走り続ければ、怪我してしまうのは必然ではないでしょうか。テニスラケットの握り方を知らず試合に出れば、おかしな持ち方で手首を痛めてしまうのと同じ。技術とは競技力だけでなく、怪我しないための土台でもあるのです。

身体の動かし方、着地の仕方、あるいは呼吸まで。ランニングにも学ぶべき正しい知識がたくさんあります。そうした知識を会得することは、実践的なトレーニングを始める前段階と言えるのではないでしょうか。そしてトレーニングというものは、土台があればこそ効果を発揮するもの。怪我しない走り方、トレーニング方法を知れば常に高いパフォーマンスを維持することができ、結果的に怪我による療養がない分だけたくさん走れるはずです。趣味として長く走り続けたいと考える方はもちろん、記録更新を目指すシリアスランナーにとっても、非常に重要なことではないでしょうか。

怪我なく走り続けるために

こうした背景から、本マガジンではさまざまなランニング理論やトレーニング方法について取り上げていきいます。いずれも私自身が実践し、「効果あり」と確信したもののみ。幸いにも私は仕事を通じ、多くのランナーやトップアスリートから情報を得る機会に恵まれています。しかしそれをそのまま伝えるのではなく、必ず自ら実践・検証し、独自の理論として組み立てた内容です。また、学生時代に十種競技という特殊な種目に取り組んだことも、走りや動きを考えるうえで活かされています。

健康志向のファンランナーから、上を目指すシリアスランナーまで。世の中に数多あるランニング理論の1つに過ぎませんが、誰かにとって道標となるように。私自身、競技を通じて、常に情報・知識をアップデートしています。少しでも多くの方々が高いパフォーマンスを発揮し、怪我なくランニングを楽しめること。それが、本マガジンの目的です。

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