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書けん日記:22 家之庭目白

1月も終わりが近い頃に、寒波到来。
昭和に建てられた日本家屋、断熱とかそういうのがほぼ皆無な私の古屋の中では、部屋の中でも吐く息が白く――火鉢で炭を焚いても、部屋の空気は シン と痛みのように固い冷気がこもったままで。
窓の外、夕暮れから即暗くなる庭を見れば、大粒の雪が降っていて。
「あっ……これは積もるな(察し)」
と、かじかむ手でキーボードを叩いたりマウスをポチる夜を過ごすと――

ひまわりの種を入れる手作り餌台

積もりました。三河の田舎は、けっこう降りました、積もりました。
朝も早くから、不肖はそそくさと起き出して。釣り用の防寒具に身を包んで、雪かきスコップ抱えて、家の前の歩道――小学校の通学路になっているそこの雪をえっさえっさ雪かきして、汗まみれに。同じく雪かきに出てきた隣の家のお爺さんと挨拶している間にも、雪は降り続いて。
歩道の雪かきだけで、体力使い果たしてぐったりした不肖は……。

それでも、書けん身体に鞭打って、裏手の庭の雪もかいて、地面を露出させて。
こうしておかないと、スズメたちが地面に降りてエサと、小石を食べられないので雪の日はこれがうちの庭の労役となっております。
かいた汗が、服の下で冷えて体温を奪う雪かきタイム――

……例年ですと、もう雪をかいている間に、露出した地面を見つけたスズメたちが垣根に集まってちゅんちゅん騒いでいたものですが。いつもは庭に来ない、セグロセキレイまでやってきて朝の喧騒、という雪かきの風物詩……だったのですが。

今年は――前回、画像を貼らせていただいた、例の猛禽あいつ
あの鷹が、あれからもちょくちょくうちの庭に立ち寄って野鳥の眼光を投げているせいで、スズメたち小鳥が怯えて。
庭は、沈黙の春。
雪かきしても、そこに米ぬか飼料やパンくずをまいておいても、枝に輪切りミカンを差しておいても……小鳥たちの喧騒は、遠く――

夕暮れに、ふと餌場を見ると鳥パンは減っているので、小鳥たちは来てはいるようなのですが……猛禽を警戒してか、集団でバーっとやってきて、ガーッと食べて、サーッと行ってしまう。
眺めるチャンスもあまりなく、以前のようにカメラを向けると即逃げされて……。
しかも。あの鷹くんも、たまに庭の木の枝にとまって野鳥の眼光を投げているのを見つけて、カメラを向けるとやはり即逃げ。撮れ高ゼロ。こちらの日記の記事のネタも提供するつもりがない鷹くん。
「必要なぶんは見せたということだ。これ以上は見せぬ」
と、何処かの闇の武闘家のような鷹くん。おのれ。

スズメやヒヨドリが警戒して立ち寄らないと、他の小鳥、メジロやシジュウカラ、ジョウビタキも庭に立ち寄らなくなって。来ても、こっちの視線を感じるとすぐ逃げてしまって。かわいい孫が、あんまり実家に立ち寄ってくれなくなったお爺ちゃん気分をヴァーチャル体験している――
そんな、書けん不肖の雪の日でした。

その雪も消えた明くる日、以前の日記「つとむ」でネタにした、親戚の姪っ子家族が法要の帰りに私の家に立ち寄って。私には傍若無人を具現化したような姪っ子は、

姪「おじさん。今度またライドさせてほしいんだけど。Goのイベントがあるの」
不肖「おじさんがポケモン知らないと思って。ライドって。私は乗り物かい。+ボタン押すのかい」

などと話していると――ちょうど。

意外と人を怖がらないメジロ

庭の木立に、輪切りミカンにメジロが。たぶんムコジロー。
姪っ子家族に、不肖は沈黙のサイン――どうやら世界共通のアクションである シー をして。窓の外、庭木の小枝でミカンをついばむ小鳥を、しばし鑑賞して。
メジロを、初めて近くで見る姪っ子は

姪「小さくて可愛い。あの子、飼ったらだめなの」
不肖「おじさんが逮捕されるからやめてください。野鳥の捕獲と飼育、ダメ絶対」
不肖「手に取るなやはり野に置け蓮華草 という歌もあるけど。野鳥もそうだね。まあ、その歌はね。もとはけっこうアレな意味だからね、君は知らなくて良い」
姪「だったらミカンをあげるのも本当は違うくない?」
不肖「おじさん、アイターな正論とカンのいいガキは嫌いだよ――」

などと話していると。庭のメジロのちいかわ感が、たいそう気に入った姪っ子は。
テレビ東京の大人気ドラマシリーズ『孤独のグルメ』のエンディングテーマのフレーズで

「めじー。めじー。うっちのにわ、Foo」
などと歌いながら、親戚家族そろって帰りの車に――

そして、ひとり残った不肖は――
「…………やられた」
うちの庭めじーのフレーズが、しばらく脳にこびりついて離れなかったと云う。


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