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その扉は小さな雑居ビルの中に。

3冊の作品ファイルを抱えて面接に向かった先、
イラストレーター集団〇〇〇〇の事務所は
意外や意外、
小さな雑居ビルの中にありました。
ぜんぜんオシャレでも、クリエイティヴでも、なんでもない
フツーの街中のフツーの雑居ビル。
それでも
「イラストレーターの集団なんて雲の上の存在」
と思ってた私には、雑居ビルでもドキドキしました。

作品を見てくれたのは
アポイントの電話で対応してくれた営業のUさんでした。
Uさんはアイビーの(VANです。VAN)ブレザーをピシッと着て
そのうえ、ボストン眼鏡なんか掛けたりして
今までの会社訪問で出会わなかったシュッとした営業マンだったので
そこにもちょと緊張したのです。
そんなこともあって私は
ただただ黙ってUさんのファイルを捲る手を見てるだけでした。

そして、Uさんは私のイラストを見終わると
「社長とも話し合って、結果はまた電話します」
とおっしゃいました。

ではでは、よろしくお願いします・・。
とUさんに頭を下げて会社を出てから
何ヶ月経ったでしょう。
「ここだ」
と心の奥に確信でもあったのでしょうか。
それとも他の会社へ行きたい気持ちが失せてしまったのでしょうか。
私はもう会社訪問をしなくなっていました。

そして連絡がないまま年を越しました。
正月に田舎に帰省したら、父が
「そっちに就職先がないんやったら、田舎に戻って
 どこかツテで働くところみつけてやろか?」
と言いましたが
私はうなづきませんでした。
なんでだろう。
イラストレーター集団〇〇〇〇からウンともスンとも連絡がないくせに
「ここだ」
と、心の奥でもう分かってたのかもしれません。
ほかで働く気がしませんでした。

冬休みが終わって
大学に戻ってからしばらくして
Uさんから私のところへ電話が来ました。
「社長と話し合って、mikaTaoさんに決まりました」

ということで。
私のイラストレーターの扉がここで開いたのでした。
あとから振り返ると
巡り会う人やモノゴトとは
ぐるぐる遠回りしながら
絶妙のタイミングで巡り合います。
そしてそうなることは
じつは自分の心は知っているんだと思います。


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