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わたしのクリスマスケーキとトロイカ。

私が子どもの頃は
クリスマスケーキといえばバタークリームで
「それよりもショートケーキの方が美味しい!」
という母の持論のもとに
ホールのクリスマスケーキは買ってもらえませんでした。
たしかに母の言うとおり、生クリームのショートケーキの方が美味しいんだけど
子ども心には
「サンタさんやツリーが上に乗った丸いクリスマスケーキが食べたいな…」
と思いながら
しかし私は親に駄々をこねる子どもじゃなかったので
黙っておとなしく、母の買ってくるショートケーキを口に運びました。

あるクリスマスの夜のこと。
晩ごはんのあと、母の買ってきたショートケーキも食べ終わり
私はひそかに
これからみんなで何かクリスマスらしいコトするかなー?
と期待しました。
ほら。
小学校のクリスマス会だとこういう時は
「みんなのうた」を手に手に『ジングル・ベル』とか『きよしこの夜』とか
歌いますね。
それからプレゼント交換なんかもしますよね。
私はそういうのがあると思ったんです。
なのに。。
とくにクリスマスを祝う…とか、なにか特別なことを話す…でもなく
ふつーにケーキを食べ終わった母は
さっさと台所へ立って行って、晩ごはんの後片付けを始めたのです。
なんていうか
とりあえずケーキを食べたらクリスマスはおしまいっという感じに。
私は台所の母を追って聞きました。
「なぁ。歌とか歌わんの?」
そしたら母は一言答えました。
「歌わんよ」
……………………………。
そこで私は台所の柱にもたれて
「ゆーきーのしらかばなーみき ゆうーひーがーはえるー」
と、一人で『トロイカ』を歌ったのでした。

今でも「クリスマス」といえば
たった一人で柱にもたれて歌ったこの『トロイカ』を思い出します。
誰も聴いてなかったなー。歌い終わったとき拍手もなかったなー。
そもそもうちはクリスマスパーティなんかする家じゃないってこと忘れてたなー。
しかし、なぜにこんなマイナー調の歌を歌ったんだろう。
子どものくせにね。
さびしかったのかな?

クリスマスはせつない。