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#01 マスクシース開発者 Saya Sayuri 第3回

最終回はとても大きな話になったけれど、真摯に考え語る彼女の視線は高校時代から変わらない。そこが Sayuri の魅力なんだって、また感じたなーーー
さて。マスクシースは今後どーなる!?



▶新しい文化の創造 !?

――ところで、「マスクシース」という名前はどこから ?

いわゆる「ケース」は、外して→形状をととのえて→しまう
といったイメージのアイテムだと思うので、違うかなーと。

柔らかく包み込むようにマスクの上からかぶせて一緒に動く構造だから、
どちらかというと、「ホルダー」や「キーパー」のほうがイメージに近い。
心強いマスクの「相棒」になれば……と思ったとたん、
「あ、鞘だ!」って。
私の名字がSaya だから、思いついたときは、かなりウケたんだけれども(笑)

構造と合致した美、「収める」という所作のカッコよさ――
ためらいがちに、人目につかない所で行っていた「マスクを外す」という
ネガティヴな行為を、人前で堂々と、相手の目を見ながらエレガントに外す
ポジティヴな行為に変える――まさに、刀の鞘!

――たしかに、奥深い!

当初、「マスクシース(Mask Sheath)」という名前には、周囲の誰もが
反対した。Sheathという英語が日本では馴染みが薄いし、
概念として受け入れられにくいのではないか、って。
でも、「新しい概念」の商品には新しい名前が必要だと、説得して回った。

願わくば、「新しい文化の創造」という域まで到達してほしい――
たとえばお茶席で、亭主がまず、マスクシースでマスクをエレガントに
外し、一連の流れのなかで、袱紗さばきに移行する、とか、
国連総会や国際会議の檀上で、演者がそれぞれの国の伝統生地で作られた
マスクシースをとり出し、その柄について短く説明したあと、エレガントにマスクを外してスピーチに入る、とか――

――おお、それは凄いな。

そんなことが当たり前となるような世の中になれば、
日本発の「新しい文化の創造」といった域にまでたどり着けるんじゃないかと――

――壮大な構想ね。
  実際、海外の人たちの反応はどうだった ?

マスクシースを贈った友人たちには、
「“Very Japanese!” めっちゃ、日本人的。こんなこと考えるのは日本人しかいないよ」
って呆れられたけれど、皆、生地や所作の美しさに魅せられて、動画を撮り始めたりしてる。

そもそも Sayuri's を起業したきっかけは、
渡米時に「何か『私の日本』をもっていきたい」と思ったこと。
自分の baseである日本の文化は大切にしたいし、
その美学を伝えるものとして、マスクシースが育っていけば、
それほど嬉しいことはないと思う。

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――マスクシースの今後の展開は ?

まず、「洋柄版もぜひ」というリクエストにお応えして、
クリスマスシーズンに向け、11月上旬に洋柄マスクシースを発売する予定。
縁あって、英国米国直輸入のマスクシースにぴったりなイメージの生地を
手に入れることができたので――

それから、〈はれのひシース〉というニックネームの、鶴と菊の柄のマスクシースも開発中――
こちらは宴の席においていただき、使用後はそのまま引出物として
お持ち帰りいただけるというアイテム。

――様々な展開、楽しみだなぁ !

目下の目標の1つは、街で偶然、「シースってる」人を見かけること(笑)。
物事が浸透するには時間がかかると思うけれど、
msms運動(「マスクシースで街を清潔に」=More Sanitary with Mask Sheathという運動)に共鳴してくれる人がいれば、まわりの人に広めてくれるなどして、少しずつ輪がひろがっていくと思う。

運動を盛り上げて、「文化の創造」につなげていく――

「つなぐ」というのが、まさにマスクシースの隠れコンセプト。
レオ・レオニの「スイミー」のように、マスクシースを目に大きな魚となって、コロナという大魚に立ち向かっていけたらと――

父に言われたの。
「コロナで人が分断された時期に、何もないところから生み出した概念で
 まわりの人たちとつながり、支えられ、1つの目標に向かって進んでいけ
 るなんて、これほど人間として誇らしいことはない。
 新たな人々とつながる――そういったことの方に、何十倍、何百倍の価値
 がある」って。

今回の製品開発にあたっても、実に多くのたちが協力してくれて、本当に
有り難かったし、それこそが人生の宝だと思う。

「ちょうど転勤になったので、古巣と新天地双方の人たちに贈りたい」という高校の友人、
「ホールインワンを出したので、その記念品として購入します」という
ロースクール時代にインターンシップでお世話になった弁護士の先生、
マスクシースを装着する様子を動画に撮ってSNSにアップしてくださった
中学時代の恩師――

開発チームの外側にそのような人々がいて、さらにその外側の人々へと
輪が広がっていく――

そういう人たちの思いの全てをのせて、マスクシースが世界中へ飛び立ち、
成長してくれていったらいいな、と思っています。

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美しい日本の織物と絹製品の店/Sayuri’s
代表 Saya Sayuri

◆プロフィール
青山学院大学国際政治経済学部・桐蔭横浜大学法科大学院卒業
商社勤務後、ミズノ㈱初の「クラフトウーマン」として同社養老工場試作室へ。当世一流のクラフトマンらとともに、内外のツアープロやトップアマのクラブ作りに携わる。その後、米国西海岸にて法律事務所勤務のかたわらSayuri’s設立。帰国後、聖路加国際病院秘書等を経て、現在に至る。

インタビュー:鈴木美香
写真:橋本剛 @合同会社ムーンベース



<取材後記>
Sayuri さんへのインタビューは、高校同級生・橋本氏が所有するプライベートスタジオで行った。もちろん、私たちにカメラを向けているのも、やはり「〇十年~?!」の時を経た彼である。
忙しい中、この企画に快く協力してくれた友人たちに感謝しかない。
マスクシースが繋げてくれた輪が、どこまでも拡がっていくことを
私も夢見て。


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