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目が覚めたあなたは、知らない部屋にいた。

不意に目が覚めると、知らない部屋にいた。

体を起こしてあたりを見渡す。外はまだ暗い。


部屋にいるのはあなた一人。


部屋の中は薄暗く、周りがよく見えない。

「おーい」
控えめに声を出してみるが、返事をする人はだれもいない。

枕元には見知らぬ光るボタンがある。押すべきか、押さないべきか…

「おーーーーい」
あなたはもう少し大きな声を出してみる。


すると、一人の若い女性がやってきた。
「〇〇さんは今日はここに泊まりに来ているんです。もう夜なので寝ませんか?」


あなたなら、この後どうするだろう。
彼女のことを信じてまた寝るだろうか。



藤原竜也が主人公の映画みたいな展開だけど、老人ホームにいるお年寄りの中には、こんな夜を毎日過ごしている人がいる。
(老人ホームに勤めていると、大げさじゃなく一晩に10回くらいこんなやり取りをすることがあります。)

若い方にはちょっと想像しにくいかもしれません。
多分一番想像しやすいのは、ホテルに泊まりに行って、朝起きた時。
一瞬、「あれ?ここ家じゃないな??ここどこだ??天井めっちゃ高いしすごいきr...あぁそうだ私今日ホテルに泊まってるんだ」
ってなったことありませんか?

私たちはすぐにホテルに来ていることを思い出せるからいいけれど、
もし、そのままどこに来ているのか思い出せないとしたら?
その混乱がずっと続くとしたら?

その上目が覚めた理由が「トイレに行きたかった」だったら地獄です。
トイレの場所も分からない、誰も部屋にいない、ここはどこなんだ…


本当に恐怖。



「人は歳を取ると、子どもに戻っていき、最後には赤ん坊の様になる」
と言われることがありますが、私は、「年を取るにつれて寝ているときの自分に近づいていく」という感覚が近いように思います。

私たちがホテルで目覚めたときのような「あれ?ここはどこだろう?」という混乱が、生活の色々なところに広がっていって。
夢の中のように、昔の出来事と、今起きていることの境目があいまいになっていって。
少しずつ自分の身体が重たく感じられるようになってきて、体を起こすことも億劫になってくる。

そして、最期の長い眠りにつく。

大きな病気をせず、自然に亡くなる場合にたどるプロセスは、そんな感じなのかなぁと思っています。



コロナウイルスでピリピリしている近頃。
みんな元気に穏やかに生きていてほしいなぁ、と思う最近です。

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