見出し画像

【評価A】Netflixアニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』レビュー

はじめに

久々に良いアニメに出会えた気がします!

『サイバーパンク エッジランナーズ』,非常に面白かったです.
今から約半年前に公開された大注目作品.
今更と言われようが何のその.
レビューしていきます!

導入部のまとめ以降はガッツリネタバレを含みますので,ご注意ください.

感想概要

おもしろさ評価はAです.

  • S: 評価Aの中でも特に好きな作品

  • A: 何度も観返したくなった,原作も読みたくなる/読んだ作品

  • B: けっこう面白かった作品

  • C: まぁまぁ面白かった作品

  • D: 最終話まで観るのがやっとな作品

  • E: 途中で観るのをやめてしまった作品

なんならSに昇格する可能性まであります.

今までネトフリには入っていなかったのですが,本作品を観るためだけに1500円近く払って入会しました.
結果,お金を払ってまで観てよかったと言える作品でした!

観るきっかけと期待値

きっかけは友人の紹介です.
アニメ好きの人にオススメされて,否,激推しされたので,観てみようと思いました.

そういう経緯なので,かなり期待値は高かったです.

感想

まず,感想ではありませんが,本作品はNetflix限定作品ということもありますし,本作品の導入部の内容についてまとめてみます.

なお,阿良々木暦のモノローグ風で書いてみました.
鬱陶しかったらすみません笑

【あらすじ】 導入部のみ

本作の主人公デイビッドは,成績優秀で,心優しい青年だった.
思春期よろしく,ちょっとばかしアウトローなことに手を染めたり,母親の言うことに逆らってみたりしてはいたが,基本的には,素直で,親孝行な青年だった.
それが良いか悪いか,正しいか間違いかはともかくとして,唯一の肉親である母の願い,母の夢を叶えるために,日々努力する青年だった.

母の願い.
貧困から抜け出し,一流の暮らしをすること.金持ちになること.

カネが正義であるこの世界──ナイトシティにおいて,この考えは至極当然である.

子は親の道具ではない.
子は親に支配されるべきではない.
子は親に対して自由であるはずだ.

ゆえに,デイビッドの母にはそれなりの批判があるかもしれない.
しかし,デイビッド自身はそれを良しとし,また,母親の期待に応えようとしていた.

だから勉強を頑張った.
周りは金持ちのボンボンだらけで馴染めなかったけど,頑張った.
成績は優秀だった.

けれど,母は死んだ.
テロリストの闘争に巻き込まれて,突然に,死んだ.
母の死に必然性はなかった.
助かる見込みはあった.
助かるはずだった.
しかるに,死んだ.

金がなかったから.
金がなくて救急医療にありつけなかったから.
金がなくて簡易的な医療しか受けられなかったから.

葬儀を挙げる金もない.
遺体を一時的に安置してもらうための金もない.
だから,母はすぐに手元に戻ってきた.
缶に詰められた遺灰として.

手元には,母の遺灰と遺品.
それと,学費・医療費・家賃・その他諸々の請求書だけが残った.
金はない.

唯一の肉親を失い,夢を失い,人に,社会に失望し,未来に絶望し,一文なしになった人間は,何をするだろう.何を思うだろう.

学校にはもう行けなくなった.
成績が優秀だという事実など,何の意味もない.

そして,彼は出会った.
エッジランナーに.
エッジランナーとして生きていくと,決めたのだった.

【補足】エッジランナーって?

エッジ(末端)+ランナー(走者)なので,直訳で「末端を駆け抜ける者」といったところでしょうか.

いや,なんの「末端」だよってことになりますが,ここでは「社会(ナイトシティ)の端くれ」という意味でしょう.

本作品の世界観としては,行き過ぎた資本主義の末路(最悪のシナリオver.)といった感じなので,社会の中核として君臨しているのは有権者一人ひとりではなく,超巨大企業(作中ではアラサカという軍事企業)です.

企業を支えるのは社員であったりブランド力だったり技術力だったりしますが,それらは全て表の顔です.サイバーパンクな世界観では,表の顔よりも,裏の顔こそが要です.

その裏社会の実働部隊,すなわちアウトローを請け負う“末端”が,エッジランナーというわけです.エッジランナーは時に,殺人や略奪といった汚れ仕事をも引き受けます.

感情移入しちゃうよなぁ

第1話で,執拗なほどに,主人公に感情移入させられます.

主人公の境遇があまりに悲惨すぎて,主人公に頑張れと,前を向いて生きてほしいと切に願ってしまいます.

鬼に家族のほとんどを殺され,妹を鬼にさせられた『鬼滅の刃』の炭治郎も大概ですけど,デイビッドはそれ以上の悲運にあると言っていいでしょう.

悲運な主人公には必然,感情移入してしまいます.

そして,その哀れな主人公が,“道”を踏み外し,崩壊していく様が痛々しくて,胸を抉ってきます.

若者に明るい未来を見せられない社会はダメだ

本作を通して改めて強く感じたのは,若者に明るい未来を見せられない社会はダメだということです.

デイビッドは才能があって,努力もできる人間です.

しかし,理不尽な境遇のせいで,進むべき道を間違ってしまいます.

彼の歩んだ人生は否定できるものではありません.
彼の生き様は誇るべきところもあれば,彼の人生が他者の人生を変え,それが巡り巡って何かを変えることもあるでしょう.

ただ,彼がアウトローに身をやつしたことは,道徳的に正しいはずもありません.自分の利益のために他人の命を奪っておいて,誰が正しいと言えるでしょうか.

デイビッドの歩んだ道は間違っています.
でも,思うのです.

もっと社会がまともであれば.
もっと福祉が充実していれば,あんな結末にはならなかったのではないかと.

僕は資本主義を否定しません.
むしろ資本主義の信者です.
競争に次ぐ競争で,市場の原理が作用した結果,現代の快適な暮らしがあると思っているからです.
それと同時に,資本主義だけが社会の唯一のドグマとなり,成熟を通り越して腐敗すれば,本作品のような生き地獄が待っているとも思っています.

本作品の世界では,資本主義がいよいよ腐りきって,信じられないほどの格差社会が生まれています.

社会福祉もほとんどない社会で,貧しい家に生まれた人は果たして,未来に期待し,社会のために責任を感じ,真っ当な人間になれるでしょうか.

答えは否です.
未来に期待できない社会で,前向きに生きていくことはできないでしょう.

これは近頃,僕が感じていることでもあります.

詳しく書くと本筋とは離れてしまうので省きますが,昨今の日本経済や国会の様子,公金の使われ道,国際情勢などに目を向けていると,陰鬱とした気持ちになります.

ナイトシティと日本とでは状況が全く異なりますが,それでも,ナイトシティの状況を日本の今に重ねてしまいます.

僕は今年新卒で,今の日本には期待できません.
だからと言ってアウトローに走るなんてことはしませんが,それでも,投げやりな気持ちにはなってしまいます.

「業」というもの

皆さんは「業」という考え方をご存知でしょうか.
これは仏教の考え方で,自分の行為はそれに呼応した結果をもたらすといったようなものです.カルマともいいます.
因果応報と似たような意味合いです(実は因果応報も仏教用語).

僕は仏教徒ではないので詳しいことはわかりませんが,この考え方自体は支持しています.

ゆえに,俗にいう「ダークヒーロー」がハッピーエンドを迎える作品は好きではありません(と言ってもそんな作品パッとは思いつきませんが).

どんなに同情できる背景があっても,道を踏み外した人間は,幸せになってはいけないと思うのです.

その点,本作のダークヒーローたるデイビッドは,慈悲なく死を迎えました.まさに業です.

デイビッドは人をたくさんコロしました.
エッジランナーとして,人をコロして金を稼ぎました.
亡き母の遺産を“背負って”,死んだ仲間の夢を追い,愛する人の夢を叶えるため,不平等で理不尽で残酷なナイトシティを,エッジランナーとして誇りを持って生きました.

でも最期は呆気なく死にました.
デイビッドは決して“特別”ではなかったのです.
だから,アダム・スマッシャーという本物に,呆気なくやられました.
守れた仲間はルーシーとファルコだけです.
あとはみんな死にました.

デイビッドの師たるメインは志半ばで死にました.
長い間ネットランナーとして支えてくれたキーウィには裏切られ,そのキーウィも結局死にました.
自分を想ってくれていた仲間のレベッカもアダム・スマッシャーに瞬殺されました.
想い人ルーシーは生き残すことができたけど,月にも行かせてあげることができたけど,一緒には行けませんでした.これからもそばにいてほしいという彼女の願いを叶えることもできませんでした.

本作品には魅力的なキャラクターたちばかりですが,みな幸せになっていないのです.

『DEATH NOTE』の夜神月や『闇金ウシジマくん』の丑嶋馨,『進撃の巨人』のエレンと同じように,デイビッドもまた,誇り高き生き様の末に,慈悲なき死がありました.

自らの行いには,その結果が伴うのです.

おわりに

本記事本編では触れませんでしたが,本作品,かなりエロ・グロがしっかり描写されている作品なので,そういうのが苦手な方は注意が必要です.
とはいえ,グロが苦手な僕としては,そこまで気にならなかったです.
エロが好きな僕としてはエロ要素は別になんとも思いませんでした.

そうそう,これも言っていませんでしたが,ヒロインのルーシーは悠木碧さんが声優を担当しています!
大人の色っぽさがとてもマッチしていて控えめに言って最高でした!

悠木碧さんと言えば僕の中では,ポケモンBWのアイリス,まどマギのまどか,ワンパンマンのタツマキ,俺ガイルの小町,ヒロアカの梅雨ちゃん,うる星やつらのテンちゃんのイメージが強いですが(もっと絞れよw),ルーシーの声はこれらのどのキャラクターとも違くて,悠木碧さんの声幅・演技力に改めて魅了されました.いやホントにすごいですよね.大好きです.

『サイバーパンク エッジランナーズ』,いかがだったでしょうか.
Netflixオリジナルのアニメなので観るハードルは少しありますが,これだけのためにNetflixに入る価値があると思います!(にしても月1500円は高いなぁ……)

皆さんもぜひ!

この記事が参加している募集

#アニメ感想文

12,683件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?