悲しみによって愛は死なない/ 【MikaGoRock 美加語録】
私には好きで好きでたまらない人がいた。
その人は死んだ。
それは私の父なんだけれども
順番からして私より先に死んでしまうだろうという事は
私にとっては悪夢だった。
そんなことが起こったら
私はもう立ち直れないかもしれないと思った。
いつも太陽のように輝いている人だった。
そしてある朝
あまりにも穏やかに旅立っていた。
あまりにもあっぱれな最後だったので
あっけにとられて暫くは大丈夫だった。
そして忙しさが過ぎ去ったあと
私は悲しみの淵に立った。
その淵の落ちたら、立ち直るのは難しいだろうという事は
自分の動物的な本能が知っていた。
でも、滑って落ちた。
落ちたかった。
悲しみの引力に引っ張られていた時
突然ピンク色の桜吹雪が舞った。
それは四方八方をピンクに染め
激しい桜色の嵐に
わけもわからず巻き込まれて我を忘れた。
それはとうてい太刀打ちできない津波のように
全てを飲み込んでさらっていった。
悲しみも虚しさも
あらゆる重たい感情が引き離され
後に残るのは何もない喜びだった。
その歓喜にしばらくひたっていると
私は悲しみの理由を忘れ、日常に戻った。
そしてまた悲しみの底なし沼に
引き込まれ始めると
またしても桜吹雪がやってきた。
全てが吹き飛ばされ
後に残された私の抜け殻は
はち切れそうに溢れていた。
全てが塗り替えられいった。
愛によって。
最も恐れた人生の悲しみと
人生の枠を超えた愛の矛盾は
いつも愛が勝ってしまうのだった。
それを何度も繰り返しているうちに
悲しみは癒え始めた。
いや、悲しみを感じる間も与えられず
喪失感さえも味わうこともく
悲しみの淵は閉じた。
人生でそれほど愛せる人に出会ったのだという喜び。
それほど愛することができたのだという驚き。
悲しみによって愛は死なない。
最も恐れていた
人生で最悪であるはずの出来事は
人生で最高の体験だった。
あれほど恐れていた不安や予想が見事に外れたことを悟った。
人生は自分が予想した通りのことは起きない。
そしてそれこそが人生のギフトなのであると。
人智をはるかに超える大いなるものによって与えられる
それはあまりに大きすぎるので
小さな頭脳では到底予想がつかないものであると。
そしてこの確信の積み重ねが
少しづつ私を強くしていく。
そしてその中に、ある種の滑稽さを感じて
クスッと笑ってしまうのだ。
そして数年たった今でも
父のことを考えると桜吹雪が舞う。
そして安心して涙を流す。
(Photo: 河津桜©MikaRin)
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