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復帰を目前にして、不安になっている自分への戒めの言葉

 長い道のりだった。
 本当に途方もないと感じた長い長い道のりだった。

 しかし、その道の果て、悲願とも言えるものが
 今、目の前にある。

 私は、2年半ほど前に「コロナ感染後遺症に伴う重度のうつ病」を患い、
 この期間、お仕事も休職していた。
 それが、来週に復帰許可の内示が下りる予定。仕事、ひいては社会復帰が
 ようやく叶うといったところまできた。

 私がうつ病に罹った時のことは、また別の機会に書くとして、
 今、感じているのは、喜び4割、不安6割といったところだ。

 2年半も仕事を休んでいれば、
 職場環境が変わったであろうこと、私の仕事内容も変化するだろうこと、
 他にも、適応せねばならぬ諸々の事情が山積みであろうことは、容易に
 想像できる。

 また、うつ病の再発率はおよそ5割、2人に1人の確率だとも言われ、
 さらに、コロナウイルス後遺症という医学的に未だその全貌が解明
 されていない不確定要素も加味すれば、もう少し再発率は高く見積もる
 必要があるのかもしれない。
 事実、医者から「予後がどうなるか、全くわからない」と言われている。

 そのような不安、懸念事項を思えば、
 果たして、復帰できました、めでたし、めでたし。で終わる話だとは
 到底思えないのである。

 しかし、私もこの2年半を無為に過ごしていたわけではない。
 もちろん、症状が酷かった時は、この世の地獄とはこのことかと
 思わんばかりであったが、常に「これから先」を見据えて考えてきた。

 なぜ、発症したのか。どうすれば予防できるのか。
 そのようなことを私自身が考えることに意味はない。
 それらは、医学的専門家が研究すれば良いことなのだから。

 では、私が考えるべき「これから先」とは何か。
 休んでしまって止まった時間の2年半をどう取り戻すか?
 そのために、仕事に打ち込んで猛ダッシュで駆け抜けること?
 いずれも違うと断言できる。

 私が真に考えるべき「これから先」のこととは、
 自身をコントロールする術を学ぶこと。

 誤解を恐れずに書くが、
 うつ病を発症するリスクが高い人の特徴には似通った部分があるそうで、
 例えば、完璧主義な性格、割り切りが苦手、正直者、責任感が強い等の
 要素が挙げられるそうだ。

 その部分だけ切り取ってみれば、それらは美徳とも言える特徴であり、
 さして問題のなさそうなものに見える。
 しかし、決定的かつ致命的な点を見落としてはならない。
 それは、「人1人ごときの力など知れている」ということ。

 どれだけ優秀な人間でも、どれだけ要領の良い人間でも、
 どれだけ世渡り上手でも、どれだけ努力家であろうとも、
 人1人に出せる力を過大評価してはならない。

 特に、完璧主義的な思考をする人間には、このような点は
 全く考慮しないことが往々にしてある。

 自分さえ頑張れば
 自分さえ我慢すれば
 今は辛くとも、自分ならなんとかできる

 そのような狭い視野になればなるほど、
 本来持っている能力をどんどんすり減らし、消耗し、最後には力尽きる。
 自分自身では「完全」「完璧」を目指しているつもりが、
 その手枷・足枷のせいで、どんどんそこから遠ざかっていく。
 そして、遠ざかっていっていることを自覚はできても、それを
 自らの力量不足、努力不足のせいだと言い張る。

 冷静に考えれば、
 人は誰しも、「完全」でも「完璧」でもないことくらい、
 簡単に分かるし、それを目指すこと自体にどれだけの意味があるのかを
 正しく分析・評価できるはずだ。
 まして、「自分さえ」と考えること自体が、甚だ傲慢であることも
 理解できよう。そこまで、人は全知全能ではないから。

 しかし、そうできない心情に陥ると、
 視野はどんどん狭くなり、卑屈になり、自分を卑下し、負の連鎖に嵌る。

 休職前、すなわりうつ病発症以前の私は、
 このような思考をしていた人間だった。
 完璧主義、個人主義、実力・成果至上主義。

 確かに、心身が元気であれば、
 人よりも成果は出せるのかもしれない。
 あるいは、日々、勤勉だと周りから評されるかもしれない。
 しかし、言ってしまえば、結局、それだけのことなのだ。

 身を置く環境にもよるのだろうが、
 こういった人間をダシに使って、面倒ごとを押し付けようとする
 狡猾な人間も一定数はいるだろう。
 その是非はここでは問うつもりはないが、知らず知らずのうちに
 そういった人間たちに踊らされているだけとも知らずに、
 一心不乱に操られ続けるなんてことも珍しくないとも聞く。

 その果てにあるのが、心身の疲弊、消耗、そして、喪失だ。
 うつ病を発症したという1つの結果に行き着いた以上、
 これまで通りの思考パターンでは、必ず同じことが起こる。
 ならば、いかに自身の思考パターンを変える、あるいは
 新しい要素を組み入れるか。それが問題なのではないか。

 復職まであと10日あまり。
 実際に、職場環境がどうであるかなどは、行ってみなければわからない。
 しかし、1つだけ決めておこうと思う。
 完璧主義、八方美人的な生き方はもはや自分には必要のないことだと。

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