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生まれ変わり ケン・リュウ

結論:星新一のショートショートに、詳細な心情描写と、現代社会問題提起をプラスした感じかな。20篇の短編はどれも重くて深くて心に突き刺さるけど、根底には作者様の人間愛が溢れているな、と感じます。ふう……(圧倒されて言葉も出ない)

 やっと届きました。図書館で24番待ち。おそらく2ヶ月くらい待ったんじゃないだろうか。毎回本屋のSF本棚で「買うかー、待つかー」と唸っておりました。本棚の限度もあるし。でも結果、買おうと思います。Kindleじゃなくてハードで。それ程面白かったです。この深い内容を短編に凝縮できるっていうのがすごい。

 ハヤカワっていうと読むのに数学や科学知識が必要なハードSFってイメージがあるかもしれないですが、こちらの作品もまあ、出て来ますけど。それを理解できなくても読めます。(超文系人間が言い切り)。というか読めるように書かれている所に、作者様の懐の深さと優しさを感じる……。

 介護ロボットが家へ来た話、温暖化で水に覆われた地球の話、突然地球にやって来た453機の謎の探査機の話、異星に着いた人類の地球外生物とのファーストコンタクトについて……などなど。話の概要、取っ掛かりは分かりやすいですが、読み進めるうちに、マイノリティとか、シンギュラリティとか、貧困、難民などなど、社会問題などが、押し付けがましくなく絡んできて。日常忙しくて知らず知らず頭の隅に追いやって来た大切な問題を提起され、色々考えさせられます。

 ラノベ好きなら、唐時代の伝記小説を元にした「隠娘」がオススメ。暗殺者として仙人に育てられた娘が、空間を制して姉弟子達と繰り広げる戦闘描写に息を飲んだ。「自分のために自分の人生を盗む」という言葉が素敵。

 個人的には最後のVRを用いた資金援助システムを取り扱った「ビザンチンエンパシー」に痺れた。理性と共感の熾烈な論議、からの読者の自分が無言で刺されたかのようなラスト。なにこれ。こんなの思いつかないわ〜(涙)。作者様と対して年変わらないのに、古文、数学、プログラム、経済、技術、多岐にわたる知識量に脱帽しまくり……。

 好き嫌いせず何でも読む、そういう人に私はなりたい……(白目)。


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