どうして深夜まで開いている店は、居酒屋と牛丼屋しか無いのか|『夜カフェ』の提案
1日頑張った自分への労いに、美味しいコーヒーが飲みたい。
その願いが叶うお店は、私に家路には無かった。
どうしてカフェって早く閉まっちゃうんだろう。前職の居酒屋営業が終わり、終電帰りの私が立ち寄れる飲食店は、居酒屋か牛丼屋しか無い。
お酒は好きだけれど、今日はあの明るい電球色の店内に入る気分じゃない。お腹が空いているわけじゃ無いし、居酒屋でソフトドリンク1杯でゆっくりするだけじゃ、何だか申し訳ない。
消化不良のまましょうがなく自宅に帰り、いつものコーヒーで我慢する日は少なくなかった。
「だったら自分でそういう場所作ろうかな」
名案だった。『夜カフェ』。仕事終わり、居酒屋に入る体力は無いけれど、家に帰る前にひとりでゆっくりしたい。決してお酒が飲みたいわけじゃない。明日の朝までの仕事を深夜に追い込みたい。そんな会社員層、とりわけおしゃれなカフェには入りづらい中年サラリーマンにぴったりではないか。
そんなことを意気揚々と語り出し、5分前に思いついたその案がどれほど独りよがりだったかを、すぐに思い知る。
「俺は『コーヒーと言えば朝』ってイメージかな。夜に飲みたいとは思わない」
当時同棲していたパートナーは遠慮がちに、けれどしっかり異論を伝えた。
そうか、だから深夜まで営業しているカフェって無いんだ……。
一般的にそうであることには、然るべき理由がちゃんとあった。
途端に恥ずかしくなり、私の空想は夢物語に終わった。
*
店長は、天職だった。
前職の居酒屋店長を辞めて丸2年、今でもそう思うのは、責任者について話す自分がどれほど楽しそうで気持ち良いか、実感するから。辞めて後悔はしていないけれど、より良い環境でもう一度やりたい気持ちはある。
今のパートの出勤時間が増えるほど、もちろん貰えるものも増えるけれど、自分が本当にやりたいことをする時間が減っていく感覚がして。けれど、ずっとPCで作業する仕事は私には向いていなくて。
働き方を少し考えたとき、前職のときに語った『夜カフェ』のエピソードを思い出した。それと重なったのは、カフェインが効きすぎてしまう今のパートナーの言葉だ。
「コーヒー好きなんだけど、夜眠れなくなるから朝しか飲めないんだよね」
「カフェインレスコーヒーもあるけど、やっぱり普通のコーヒーに比べると美味しくない」
先日10年ぶりに再会した高校の同級生も、「カフェインは控えているから喫茶店ではホットミルクを頼む」と言っていた。
カフェインレス。カフェインが効かなすぎて困る私には無縁の選択肢だった。
何となく「意識高い」「健康志向」そして「女性」のイメージが強いワード。けれどカフェインに対する耐性に、男女差はきっと無い。
『夜カフェ』で検索すると、都内や大阪、福岡などの大都市から地方都市まで、その名が存在することがわかった。けれど利用目的はデートや女子会、大人数の飲み会終わりで飲み足りない2軒目候補が多い。
コンセプトは、お店のイメージは、立地は、客層は……。気づいたら「カフェ 独立」でキーボードを叩く自分がいた。
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