見出し画像

✦2 「アートはアートのためのアート」のおさらい

「アートはアートのためのアート」とは、アートには実用性や機能性を超えた自己完結的な価値がある、という考え方です。個人的にはアートに対する批判を受け付けないための、自己防衛的な概念だと思っています。

この考え方には具体的には以下のような特徴がある。

  • アートは鑑賞するためのもので、実際の生活で使うものではない

  • アートの価値はアートそのものの中にある。外部の目的を達成するための手段ではない

  • アート作品は作者の内面や表現の純粋性が最も重要である

  • 観客は作品から受ける感動や美的体験が目的で、実用性は問題ではない

この考えは「art for art's sake(アートはアートのためにある)」という言葉に代表され、19世紀後半のアール・ヌーヴォーなどの芸術運動で唱えられました。

これに対して、現代アートの多くは実用性や機能性を重視しているため、「アートはアートのためのアート」とは一線を画す特徴があると言えます。しかし、アートの本質をめぐるこの考え方の対比は、今日でもアートの意義を考える上で重要なポイントだと思っています。

アートが自己完結的な状態から

実用性を併せ持つ方向に変化した理由

1つ目は、 postmodernism(ポストモダニズム)の影響です。 1960年代以降のポストモダン思想は、絶対的な真理や価値観を否定し、多様性や大衆文化を重視するようになりました。アートにおいても権威主義からの解放が唱えられ、実用性の追求が自由になりました。

2つ目は、コンセプチュアルアートなどの革新的なアートの登場です。 アイデアそのものを作品とするこれらのアートは、作品のかたちや美的完成度を重要視せず、思想的メッセージ性を優先させました。このため実用的機能を作品に取り入れやすくなりました。

3つ目は、社会環境の変化です。 高度消費社会の到来や大衆文化(特にSNS)の発達により、アートもエンターテイメント性や実用性が求められるようになったことが背景にあると考えられます。

このようにアートを取り巻く思想的、社会的文脈が変容したことが、実用性重視の傾向に拍車をかけた根本的な理由だと分析できます。アートの概念そのものが流動的に推移してきた結果だと言えます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?