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「サロン!雅と俗―京の大家と知られざる大坂画壇」が面白い

京都国立近代美術館「サロン!雅と俗―京の大家と知られざる大坂画壇」は、「日本美術史研究最後の未踏のジャンル」といわれている、近世大阪のアートワールドを探求する、研究発表的な展示。なにせ研究途上であるから、展示にはワサッと感があり、簡単に「何か見た」感は与えてくれない。宝探し的な面白さがある。未踏のジャンルですから。

「サロン!」と聞けば、この人、木村蒹葭堂。絵も描く博物収集もする。この人の周りに人の輪ができた。

超富裕だった近世大阪には町人画家、文人画家のサロンが隆盛した。いま「知られざる」状態な理由は、岡倉天心が大坂の主流だった文人画を評価しなかったから、が通説。天心さんのせいだけじゃないだろう。権威になびいて、身近にあったお宝を簡単に手放してしまうのは、もったいことだった。

ブッと吹き出す若冲写し。作者は松本奉時。人物略年譜には表具師で蛙好き、とある。大坂のアートワールドでは、素人がのびのび描き、楽しんだ。

図録の解説には日本人とほぼ同数で海外の研究者が寄稿している。大坂画壇、実に、日本人が大好きな「外国で注目される日本文化」だった。外国人研究者によるディープかつリスペクト溢れる解説にグッとくる。

海外で研究が進む画家、佐藤魚大。すいません存じ上げませんでした。正直に言うから舌抜かないで。
大坂の琳派の画家、中村芳中の作品。こんないい作品が大英博物館蔵にあった!
大英博物館が所蔵してくれていた、なんと64名の合作。趣味人や画家が集まって絵を描いたり即売したりのサロン「書画会」での寄せ書きかもしれない。ワサッとした空気が伝わる。

日本では評価がつかない大坂の文人画家の作品は、大英博物館蔵に数多く収蔵され、研究対象となっている。里帰りした20点のうち、複数の画家が同じ画面で筆を競っている「合作」は、当時のサロンの活気やらネットワークやらを真空パックしたみたいで、ワサッと感をそのまんま味わいたい。

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