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これはアウトだ。「あまから手帖」リニューアルの、残念すぎる盗用デザイン

並べて見たら、色も、白場の幅もおんなじだ。

老舗雑誌の「あまから手帖」が、今号から新しいスタッフでリニューアルすると聞いてきたので、楽しみにしていたのだが、表紙見て、呆気に取られた。
おしゃれ雑誌として人気だったWall paper の街ガイドブックそのまんま。
しかも元にしたのはTOKYO版。発行年2019年。
デザイナーの手元にあったものをそのまんま使った疑惑濃厚だ。

老舗雑誌の顔に泥を塗らないでほしい


海外のおしゃれ雑誌のデザインを「リスペクト」して真似っこするのは日本の雑誌の常道だが、これは真似でもオマージュでもなく完コピ。アウトだ。

洋書だから読者にはバレないだろう、ファイドンもまさか日本の地方の食べ物雑誌のことを訴えてこないだろう、シンプルなデザインだしこれを意匠の盗用とは言い切れまい、と軽い気持ちかもしれないが、誰かの作った作品を隣に置いてやっつけた仕事だ。
老舗雑誌の顔に泥を塗るなと言いたい。

あまから手帖」の名誉のためにしっかり書いておくが、この版元は、雑誌に書いた原稿を別冊に流用されるに際して、きちんと連絡をくれた上で、少額ながら流用費を振り込んでくれるような、今時めずらしい律儀で誠実なカルチャーをもっている。私も独立してから20年、安心して仕事をさせていただいてきた。
このリニューアルに関わった新しいスタッフは、地元で真面目にやってきた版元のカルチャーを、まず共有してもらいたい。

しんどいのはわかるけど、フェアにやろうや、雑誌さん


情報の仕事は、原稿を納める側も受け取る側も、やりとりしているのが形のない「知財」だという共通の認識がないと、成り立たない。
雑誌(の版元)がくたびれすぎて、企画はおろか、道義的なことすら考えられなくなってるのは今に始まったことではないけれど。

我々フリーランスはちゃんと見てるし、危ない版元には警戒してますよ。

原稿の無断流用や勝手な加工をしたりする版元とは、まともには付き合えない。
また、コンテンツを何らかの形で第三者に不当に使われた時、著作者にかわって毅然と抗議の申し入れをするか、つまり版元がきちんとコンテンツの管理責任を意識しているのかもしっかり見てます。
著作権を侵害しない、された(と感じた)ら説明を求めて、必要なら抗議する。一線にもならない面倒なことであっても、人間関係に角が立っても、それは「知財を扱う業」の仁義だと思う。

こういうことは、業界内のしがらみや人間関係に配慮して、あるいは単に揉め事が面倒で、「ひどいですねえ」と、薄ら笑いで過ごされることが多い。
この盗用に気づいた私も、見ざる言わざるで済ましておけば、面倒なやつだとも思われず、仕事を失うリスクもない。

しかし版元のサラリーマン編集者と違って、野良仕事の我々フリーランスには、自分の著作がどう扱われるかは死活問題。
もっと大きく言えば、職業上の尊厳にかかわる。
版元には、そこを公明正大にしてもらわないと困るのだ。

「あまから手帖」は、長年お世話になっている雑誌で、愛着もある。
リニューアルでよい再スタートをすることを期待していたが、こんなあからさまな著作権侵害を平気でされると、今後、この雑誌が店やスタッフと、どの程度の信頼関係をつくってゆくつもりなのかが、不安になる。

この件、考えることがたくさんあるので、今後書き足してゆくが、今日はここまでにしておく。



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