見出し画像

「リトル外国」ではない、隣人のマーケット。日本が多文化共生の食に出会う時が来た。

あまから手帖 連載「食からSDGs」2022年 10月号より(写真:伊藤信)バックナンバーはhttps://www.amakaratecho.jp/ でどうぞ。

外 国 人 技 能 実 習 制 度 で 在 留 す る 外 国 人 「 ニ ュ ー カ マ ー 」 は 2 7 万 人 超 ( ※2017 年の統計より)国籍では近年、ベトナム人が急増し、彼らのための食品店も街に増えた。その「リトル外国」が、外国人市民との共生の場になろうとしている。

富田林にある、日本人経営のベトナム食材店。



雑居ビルの一室にアジア食材がぎっ しり並び、アヒルが歩き回る。
ここは、 いま街に急増しているアジア食品店。

富田林はいわゆる企業団地で、ベトナ ム人実習生や留学生が多く住む。彼ら が食材を求めて遠方まで買い出しに行 くのを見た内海将樹さんが立ち上げ た。日本人経営のベトナム食材店は、極めてまれだ。
内海将樹さんのご実家は地 元 の 寿 司・懐 石 店 で、料 理 修 業 中 に 出 会 ったベトナム 人の 奥 様 チャンズンさんと の結婚も、この店をオープン す る 縁 に な っ た 。

リアルベトナム食材店。孵化前の卵・自家製バロットも!

「“リトル外国” への旅行気 分で来る人がほとんど」とい う日本人客に向けて、ベトナ ムの食文化も伝えている。有 名なベトナムの珍食・孵化前 の 卵 ・ バ ロ ッ ト を 販 売 。自 家 飼育の鶏(またはアヒル)の 卵を、ホーチミンから取り寄 せた孵卵器で育てる。

料理人でもある内海さんの本場 の味へのこだわりも異例だ。ハーブや野菜は自家 栽培、鶏やアヒルも飼育。飲 食 ス ペ ース で 食 べ ら れ る バインミーは 、和 食 の 技 で 焼 い た 卵 と 紅白なます、特製ソースを添 えている。食にうるさいベトナム人を喜ばせている。

「雇用 側の人たちからも喜ばれました。到着 した研修生を連れてきて食事させたり、『頑張ってくれた子に』とお菓子を買 いに来られたり」。

食材を売買するだけでなく、そこを利用するベトナム人が、生活上のさまざまなことで 内海さんを頼って相談をもち かける。ちょっとした日越交流窓口になっているのだ。

「全く儲からないですが(笑)、いろ んな人が集まるのが楽しい。人は食 のアクセスのある所に集まって住むし、 食つながりでいろんな発信もできる。 雑貨屋だったら、こうはならない」。

アヒルが遊ぶ、「外国人市民」とローカルの交流の場

富田林市は2009年「多文化共生 推進指針」を策定。ニューカマー(来 る人)ではなく「外国人市民」という言 葉を使うことを決めた。いま日本は多 文化共生への取組みの真っ最中。理解 と交流のための最強のツールとなるの が食だ。その架け橋となる食材店や料 理店は、もう「リトル外国」ではない。



シ ョ ウ キ ュ ウ テ ィ エ ン ベ イ カ ー
SHO-KYU TIỆM VÂY CÁ
ミ ャ ン マ ー 、イ ン ド ネ シ ア 、タ イ の 食 材 も 扱 い 、飲 食 スペースでは生タイガービールやフォーを味わえ る。料理教室などの交流イベントも開催。 ●富田林市若松町西1-1809-1

この記事が参加している募集

#SDGsへの向き合い方

14,720件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?