「ゆらぎ」
夏休みが明けて、1週間。
我が家の繊細息子にも私にも不安定の大波が来るのではないかとドキドキしていたが、どうやら私の方にだけ波が来ているらしい。
でも、どこかおかしい。
いつもの波と、何かが違う。
息子をフリースクールに送り届け、「今日は付き添いか?付き添いなのか?」と、いつものように息子の様子を観察し、ソレ今だ!の絶妙なタイミングで、「昼頃迎えに来るね!」と息子に伝え、逃げるように立ち去る。
今のところ、「行かないで」と、引き止められない。
帰りの車の中、スピッツの音楽をかける。
落ち着いている。
いつもなら、「っしゃー!帰れっぞーーー!」ってテンションぶち上がってるところだけど、
私の心の中は、静かなのだ。
帰宅し、アイスコーヒーをグラスに注ぎ、冷蔵庫に冷やしておいたポッキーを出す。
椅子に座り
ふーっと息を吐いた。
と、その時。
チロリンとLINEの音。
スマホを見ると、フリースクールの先生からだ。
嫌な予感。
私は、・・・ひとまず見なかったことにした。
このタイミングで考えられることは、ただ一つ。
「帰りたい。迎えに来て」
・・・・
とりあえず、私はポッキーを食べた。
ポキポキ食べた。
冷え冷えのポッキーが私は好きだ。
ポキポキポキ。
静かだ。
私は自分の静けさを感じながら、最近の自分の不調について考える。
数日前。
私はまた、プツッときれてしまった。
思い出せないくらい些細なことに。
最近、このパターンが本当に多い。
私は、「っざけんじゃねー」と、強めの言葉(毒)を吐き、寝室に逃げた。
ほんとにもうイライラする。
毒を吐いた自分に嫌気がさす。
なんなんだ、これ。
いつからこんなんになった?私。
自分に戸惑う。
どうでもいい兄弟喧嘩なんて、少し前までは完全スルーできていた。
男の兄弟なんて、こんなもんだって。
今は、腹が煮え繰り返りそうなくらいムカつくのだ。
2人の泣き声が、ものすごくうるさい。
プツッときれてしまった私は、そんな自分の変化に動揺し、なんだかとてつもない悲しみが襲ってきて、泣けてきた。
わけがわからない。
どうして、以前のようにできないんだろう。
去年、HSCの息子を理解したくて、ペアトレを7ヶ月間受けた。
学んでいる時は、その全てが新鮮で私は懸命に取り組んだ。
息子も私も、何かが変わった気がした。
私は、学んだことを忘れてしまったのだろうか。
以前の思考に戻ってしまったんだろうか。
悔しい。
悔しい。
何これ。
何なんだよ、ほんとに。
めっちゃ涙出るな。
止まらないな、涙が。
そのぐちゃぐちゃになった行き場のない感情が、涙に変わってどんどん出てくる。
その時、息子の足音が聞こえてきた。
私は、必死に涙を拭いた。
息子が、部屋に入ってきた。
「お母さん、さっきはごめんね」と、謝ってきた。
わかっていた。きっと、来てくれること。
でも、私は、息子の目も見てあげられなかった。
言葉が出てこない。
頭を撫でてあげられない。
抱きしめてあげられない。
「うん。」
とだけ、伝えるのでもう、無理だった。
息子は、部屋を出て行った。
私は、膝の力が抜け、堪えていた涙が溢れ出した。
また、呼吸が乱れてきた。
在宅だった夫が部屋から出てきてくれた。
何も言わず、泣いてうずくまっている私の背中を撫でてくれた。
ただ、ずっと撫でてくれた。
私は、「わからない」と泣きながら訴えた。
夫は、ただ静かに聞いてくれた。
呼吸がだいぶ整ったので、夫は仕事に戻った。
はぁ、とため息をつき、洗濯物を取り込むためにベランダに出た。
ベランダから見える夕焼け空が、とても綺麗だった。
秋の気配がするな、と思った。
息子を抱きしめてあげられなかったな
どうか、抱きしめてあげられますように
と、願った。
ポキポキポキ、ポキ。
私は、ポッキーを食べ終えた。
LINEを開く。
『○くんが、水晶をみんなに見せたいので、持ってきて欲しいそうです。○くんの本音は、お迎えの時じゃなくて今すぐ持って来て欲しいですが、お母さんのご都合もあると思いますので。お母さんご都合いかがですか?』
水晶・・・・。
お迎えの時でええやないかぃ
でも、あれでしょ、今すぐ見せたい!って感じでしょ?
あぁ、あと1時間はゆっくりしたい。
だって、今帰宅したとこやん。
母の叫び。
『今、手続き中なので、終わり次第向かいます。30分早めに行くのでどうでしょう』
と、返した。
息子と離れるために、私が考えた「っぽい理由」リストから「何かの手続き」をチョイスした。ちなみに他には「業者が来る」「銀行に支払い」「書類提出」などがある。
『それでいいよ、とのことです』
と、返ってきた。
ホッとした私はそこから1時間だけ家でのんびりした。
息子をフリースクールに迎えに行ったあと、幼稚園に次男を迎えに行った。
その時に、園長先生と話すことができた。
園長先生は長男の特性を1番に見抜き、理解し、息子の花を開かせてくれた先生だ。
先生は、私に話してくれた。
「それは、お母さんだって変化しますよ。○くんだって、成長しています。これからも変わっていくものだと思いますよ。」
変化。
急にプツッと切れてしまったり
やけに静かだったり
とてつもなく悲しかったり
優しくできなかったり
心の中どろっどろの毒まみれだったり
動と静の狭間で、私はゆれにゆれている。
そうか。
これが噂の「ゆらぎ」か。
仲良しの姉様たちがいる。
「お嬢(と呼ばれている)!40代はくるよ。突然くるから」
と、よく言われていた。
私は、一体何がくるんだ?と、わからなかった。
それが、きたのか?
これが、姉様たちの言っていた「くる」なのか?
だとしたら、結構、きついな。
ゆらいじゃってるな、私。
結構ゆらぎすぎて、酔ってるな。
でも、これも自然の流れだ。
変化を受け止めよう。
ある人は言った。
「自分と向き合う過程に涙がある」と。
ある人は言った。
「泣くことは、やっぱりいい」と。
私は、この言葉に力をもらった。
弱っている時に、まるっと肯定されると、それは力になる。
どんな時も向き合ってきた。
その度に泣いてきた。
そして、なんだかんだ、なんとかしてきた。
きっと、今、次のフェーズに行こうとしているにちがいない。
そこには涙が必要で、それは、きっと私を強くしてくれるはずだ。
ゆらぐ、母。
成長する、繊細息子。
のんびり。
ゆるりと。
試しに、
「お母さん、ゆらいじゃってるから、そこんとこ夜露死苦!」
と、息子に言ってみた。
見事にスルーされた。
でも、私は諦めなかった。
「お母さん、今、ゆらいじゃってるから、喧嘩やめてほしい」「お母さん、今、ゆらいじゃってるから、お風呂に入ってほしい」
何かにつけて、「母は、今、ゆらいじゃってる」アピールをすると、何か伝わってるみたいで、喧嘩をやめてくれたりする笑。
このゆらいじゃってる作戦は、私を救ってくれるかもしれない。
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