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ツキコを演じたあの子


【友だちのおはなし】


個性豊かな友だちを綴る勝手に友だちシリーズ。

友に向けた、私からのラブレター。

🔸「米粉を操る女
🔸「彼女にフリージアの花束を

友だちシリーズ


第3段。


私が舞台役者を目指し始めた頃(1番とんがっていた時代)に出会った、


Uちゃんのおはし。


私は、就職活動をしているときに、ある企業の会社説明会で「あ、私やりたいこと演劇だったわ」と気がつき、帰宅してすぐ「私、就活辞めて、演劇やるわ」と言って、母の目を点にさせた過去がある。

それから、20代全てを演劇に注いできた。
何の迷いもなかった(若かったなぁ)。

私は、ミュージカルがやりたくて、とりあえずネットでその活動をしている団体を探した。

いくつか候補をあげ、見学しに行った。

その中の一つの劇団に私は入ることにした(実はそこで「米粉を操る女」に出会った)。

その劇団のリーダーが当時通っていたミュージカル学院の卒業公演を観に行った。


そこに、Uちゃんは出演していた。


黒髪ベリーショートの彼女に私は釘付けになった。

内容はあまり覚えていないが、家族の場面で、Uちゃんは親と口論になり、雑誌を叩きつけものっすごい怒っていた。(という芝居だった)
そのど迫力に、演劇人生に足を踏み入れたばかりの私は一瞬にして心奪われてしまった。

あの人、かっこいい・・・。


それが、私のUちゃんの第一印象である。

終演後、リーダーがUちゃんに私を含む劇団のメンバーを紹介してくれた。

ゾロゾロ大勢で行ったもんだから、Uちゃんの第一声は、

「なんか、業界の人みたーい!(キャハハハハ)」

だった。

え、ついさっきめっちゃキレてた人ですよね?

同一人物とは思えないほど、ニコニコキャハキャハとても可愛いらしい人だった。

こ、こ、これが、役者というものなのか。
私は、そのギャップに驚き感動したことを今でもはっきり覚えている。


私は、Uちゃんとお近づきになりたかった。

そんなある日、ミラクルが起きた。

私が通っていたダンススタジオがあった。
私は代々木方面から歩いていた。
前を新宿方面から歩いてくる人がいた。


Uちゃんだった。


「えーーーーーーー!」


なんたる偶然!
なんたる偶然!
なんたる偶然!

Uちゃんも同じダンススタジオに通っていたのだ。
もう、これは、運命でしょ。

そこから私たちは一瞬で仲良くなった。

Uちゃんが、「十戒」の海外ミュージカルに誘ってくれた。
しかし、当日私たちは痛恨のミスをおかすことになる。
開演までの時間私たちは、会場近くの(確か)ドトールで喋りまくっていた。
何気にUちゃんが時計を見た。

・・・・・

「えっえっえっ!時間過ぎてる!」

開場時間どころか、もう開演時間を遠に過ぎていたのだ。

あーーーー喋り過ぎたーーー
私たちは猛ダッシュで開場に向かった。


お店で一緒に食事をする時も同じ現象が起きる。
席につくとすぐに喋り始めちゃうもんで、注文するのを忘れる。
お店の人が、「あのぉ、ご注文はぁ・・・」といつも気まずそうにしているので、

『喋る前に注文』

これが、私たちの外で食事する際の決まりだ。
注文するまでお口チャックだ。


Uちゃんは、私の立ち上げた劇団の記念すべき第1回公演に出演してくれた。

『きみが生まれるとき』

生まれる前の子どもの話で、Uちゃんは「ツキコ」という子どもを演じた。

ツキコはみんなの輪には入らず、ずっと1人読書をするような子どもだった。
ブレない心の強さと優しさを持つ凛としたツキコは、彼女にピッタリだった。

「朝だよ」

「雲の上には違いない。でもここではないもう一つの朝。眩しい光が差し、温かい風の吹く、朝に向かうんだ」


私は彼女のツキコが大好きだった。


Uちゃんとは、歴史がありすぎる。

私が実家ですったもんだあって、家を飛び出したことがあった。
その時、Uちゃんは私を助けてくれた。
彼女は、私の暗黒時代を知っている。

(あの時のご恩は、墓場まで持っていきます。)

初めて富士山に一緒に登ったのも、Uちゃんだ。
テレビで富士山のご来光の映像が流れた。

「あ、富士山登ろう」

と、不意に私は思い、迷わずUちゃんを誘った。
彼女はすぐに「行く!」と返事をくれた。

富士登山、過酷すぎた。
山頂に向かうに連れ、吐きまくる私と、全然平気な逞しいUちゃん。
ほんと、この人、すげぇと介護されながら思っていた。

Uちゃんと一緒に登った富士山、私は一生忘れないだろう。

そしてこの富士登山は、私にとって人生のターニングポイントだったと振り返って今は思う(この話はまた追々・・・)

私の大好きな祖母が亡くなった時、すぐに遠くからわざわざ喪服姿で家に来てくれた。
祖母は生前、Uちゃんのことを「彼女は大したもんだ」と大絶賛していた。
Uちゃんは、老若男女問わずものすごく「会話」するのが上手で、祖母もUちゃんとの会話をいつも楽しんでいた。
会話の糸口を見つけるセンスが抜群なのだ。

Uちゃんは、
料理と歌と字が上手で、
宝塚歌劇と猫と古民家と小説が好きだ。


Uちゃんは、
旦那さんとものっすごい仲が良い。


Uちゃんは、
私のnoteの記事を、笑っちゃうから仕事の休憩時間にこっそりトイレで読んでいるらしい。

Uちゃんは、 
可愛いさと美しさを兼ね備えている人だ。


私は以前、自分から数年後の自分に手紙を書いていた時期があった。
Uちゃんも、真似て書いていたらしく、つい先日、「手紙が出てきた」と連絡をくれた。



過去の自分から届いた、今の自分宛ての手紙だ。


当時、私はしんどい時期が続いていた。
いわゆる暗黒時代。
未来の自分に手紙を書くことで、「きっと、この手紙を読んでる私は、今のしんどいことも辛いこともきっと乗り越えているんだ」と思うと、救われる気がした。

過去の自分が、今の自分に語りかけてくる。

こちらは、こんなですが、
そちらはどうですか
私は、乗り越えられましたか
ちゃんと向き合って、元気にしてますか
笑ってますか

今の自分が、過去の自分に語りかける

あなたは、ちゃんと向き合って乗り越えられたよ

しんどかった過去の自分に、「今、幸せだよ」と、時空を越えて伝えるのだ。

そんなこともあったなぁ
私は乗り越えてきたんだなぁ

と、振り返る。
それが密かに楽しかった。


この、私の密かな趣味みたいなものをUちゃんは、「おもしろいねー!」と言ってくれた。
そして、本当にUちゃんも手紙を書いていてくれていたことに、私は感動した。

またUちゃんは10年後の自分に手紙を書いたらしい。

なんて書いたのかな。
10年後、また教えてね。


私はまた彼女の芝居が見たい。
初めて舞台で彼女の芝居を見てからずっと彼女のファンである。
役に真摯に向き合い、役を生きるその姿には説得力があり、本当に魅力的なのだ。

彼女が今ツキコを演じたらどうなるだろう。
17年という年月が合わさって、彼女はどんな風にツキコと向き合うのだろう。

なんて、ひとり想像して幸せな気持ちになった。

17年前は、ツキコはあの子で、あの子はツキコだった。
でも、今はちょっと違う。
今も変わらずあの子の中にツキコがいるけど、その全てを大きな愛で包み込んでいる彼女がいる。


私と出会ってくれてありがとう。
人生を豊かにしてくれてありがとう。

も一度言っちゃお。

私はあなたの芝居が、見たいのよ。

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