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箱をなだめながら生きていく。それもまたありなのかもしれない

週末家族で夕飯を食べていたら、次男が「なんかかゆい…」「暑い」と上半身をかきむしり始めた。

「お風呂上がりだから暑いんじゃなくて?」

結露している窓を見ながらエアコンを切って「パジャマ脱ぐ?」と半袖シャツ姿にして再び食事に戻るも、「いつもよりかゆいなぁ」「なんでなんだろう」と体をかきむしる指は止まらず舌打ちしたい気持ちになった。

またか…。

次男は肌が弱い。私譲りのアトピー肌。しかし重度ではなくきちんとケアすれば人に気付かれない程度のものだ。

それなのにお風呂上がりの薬タイムをいつも嫌がって裸で逃げ回るのでちょっとしたストレスだった。掴まえて保湿すると涙を流して抵抗する。

「ベタベタする」「気持ち悪い」

という理由で次男にとってもストレスのようだったが今日はいつもの薬をかかりつけ医にもらいに行き、先生からも「ちゃんと塗ろうね」と直接言ってもらった日でもあった。なのに変わらず同じことを繰り返すのでため息だ。イライラする。

「毎回毎回逃げないのっ!」「お肌ちゃんと守らないと治らないよ!」

薬のストックも増えたことだし、泣き顔の次男を取っつかまえていつもよりしっかり保湿した。それなのに…次男の上半身には小さなブツブツがどんどん広がっていく。

あぁ、まただ。たまにあるやつだ。なにかに反応して体がチクチクして搔いているとどんどん広がっていくやつ。私も子供のときになったことあるやつ。卵が肌につくことはないからハウスダストかもしれない。次男のことだから他にもアレルギーをもっているのかもしれない。

私は夕飯を食べ続けた。

「掻いたらますます広がるよ」「とりあえずごはん、たべな?」

卵にハウスダストアレルギー、生まれつきの筋性斜頸、就学前検診では視力が0.7以下で眼科医に「おかあさん、ちょっと」と呼び止められ、斜視も発覚。食べ物の好き嫌いが多く、布の感触へのこだわりが強い(綿100%でもOKなものと嫌がるものがあったり、服のよれを嫌がったり)。

どれも軽度で、命に関わるものではない。

でも蓄積でたまにどっとつかれる。

はーあ、またか。

(受け入れなよ…)

(今日は無理)

「お医者さんに行ったばかりなのに、なんでなんだろうねぇ。もういやになっちゃうね」

嫌みっぽく言ってしまう。

うつむいて搔きむしるのを止めない次男。

私が食事を続けるのを見て夫が「見せて」と次男の体をチェックする。と大きな声で、

「あぁっ、ここ!」

と言い夫が私の顔をじっと見ている。

あー、こっちもまただわ…。

イラッとして思わず声を荒らげた。

「あのさぁ『あぁっ!』とかいってお母さん見る子供みたいな顔で、私のこと見ないでくれる?」「自分も大人で、この子の親だよね?なんで『おかーさ~ん』みたいな顔してんの?自分でどうしたらいいか考えたらいいだけだよね?私はあなたのお母さんじゃ、ありません!」

我ながらまた最後は嫌みたっぷりな言い方だ。

夫にはこういうところがある。

子供と戦いごっこをしているときに、調子に乗った子供が夫を激しく叩いたりすると『あぁっ!』と目を見開いて私をみる。

私はその表情が嫌いだった。

なんで私をみてんの?

考えていることはわかるけどさ。

「お父さんにそんなことしちゃダメでしょ!」

って言えって?…そんなの自分で言ってよ。

日常の小さな不満がグググ…と蓋を持ち上げて箱のなかから吹き出そうとしている。

やばい。

夫にどうしてもらおうとか考える方がめんどくさい。1から説明するのがめんどう。だから私がやるほうが早い。

「もう一度お風呂入る?」

次男に聞くと

「うん、前、水のシャワー浴びたら治ったから浴びる」

真冬なのでぬるめのシャワーを浴びさせ、カーペットなどアレルゲンの疑いがありそうな場所に行かせず薬を塗り直してパジャマを着せるとかなりすっきりしたようで夕飯を食べ始めた。

ホッとした。

私も食事に戻る。

夫は食器洗いをしてくれた。土日の夕飯作りは夫担当なので洗い物はやろうと思っていた。

「ありがとう」

「あ、うん」

私の不満をかわしたり、なんでも決めさせるところは嫌いだけど、いやみを言っても尾を引かないおおらかな性格はまあ好きだ。

特に夫にイライラしていない少し前(今は生理前でイライラを自覚)、ネットを徘徊していたらある歌詞が目に飛び込んできた。

「祝婚歌」 吉野弘                                                                                                                              二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい

つい最近、某SNSでほかの方がUPされているのを流し読みしていたのでこの歌詞を見るのは2回目だった。

そのときは「こんな歌があるんだなあ」くらいの気持ちでよんだけど再び目に入ってきたということは私に対する何らかのメッセージだったりするのかな?と感じた。

2回目は1回目より心に残る。

そして今日は特に沁み入ってしまう。

正論吐くあたりとかね、私、オラオラって顔の前に正論押し付けちゃうから。

生きていることのなつかしさか、いつかなつかしく思う日が来ることもあるって一瞬でも思えたら不満の箱の蓋は「とりあえず今日のところは勘弁してやるわ」といった感じでパタンと閉じた。

(またすぐ開くかもしれないけど)

そしてこの言葉もまた、私の前に2回現れた。

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確か一度目は育児の指南本で、二度目は長男の歯医者さんのパンフレットに書いてあったのに最近気づいたものだ。

メモして冷蔵庫に貼る。

うん、そうだ。私はがんばっている。

がんばっているね、ありがとうねって言われたい。

でも「あなたのせいで!」「あなたがこんなだから」と思わなくても、それは実現できるはず…。

私もOKで、あなたもOK。

それのほうが気持ちが良い。

言葉には言霊が宿るからか、

嫌なことをたくさん言ってしまった日は

胃腸がどんよりした感じになる。

無かったことにはならないけど、綺麗な言葉や景色を見て少しでも心を掃除をしておきたいなと思う。

ーおまけー

塗布薬の苦手な次男。「特別✨」「かわいい💕」「変身💫」などのワードに反応することをふと思い出し「これ、塗ったら可愛くなれる魔法のお薬ってことにする?」「お薬の名前どうする?」「どんな絵にする?」と聞いたら見事にハマりおとなしく塗らせてくれた!気分屋ですぐ飽きるかもしれないので今回はイケたってだけかもしれないけど…この繰り返しかな~😂

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