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【よみもの】夜を超えろ

シングルの薄っぺらい布団に残った香り。
夜遅く、毛布を被って思いっきり息を吸う。むせるくらいに腹にちからをこめて。
鼻をくすぐるのはもちろん自分の匂いではなく、連泊していった想い人のものだ。

朝が苦手だから、日がよく入る窓辺に頭を向けられるように枕を配置する。今日も月明かりがこの部屋を照らしている。きのうはふたつの影が重なっていたけれど、今日は自分の影ひとつ。
起き上がって窓辺に寄り添う。昨日までの香りはいまの自分には毒でしかないから、避けるようにして窓の外、月の香りを嗅いでみよう。布団の残り香は寂しさを呼ぶ毒だ。

正直な話、奥の奥で心に触れたいという肉欲というよりは
愛情を持ち寄るだけのふれあいが好きなのかもしれない。だから余計に、湿っぽい思いになるのだ。その軟らかい頬に触れて
軽く触れるだけのキスだけで、夜を越せる気がするから。

三重県で、シンガーソングライターをしています。代表曲は「ひかりとつき」など。サポートや投げ銭でいただいたお金は制作機材やサイトなどの維持費充てています。応援よろしくどーぞ!!!