怖くて眠れない夜がきた。けれど明けない夜はないんだよ。(#8)
2023年5月24日
恐怖で眠れない夜がきた。
いつかそうなる気がしていた。
私は布団に入ってすぐ眠れるタイプである。それなのに全然眠れない。
じわじわと焦りと恐怖が押し寄せてくる。
乳がんが怖い。
本当は叫びたいほど怖い。
死んだらどうなるんだろう。
子供の頃は、『死への恐怖』を強く感じたものだった。
死が身近にあり、こちらとあちらの境はあやふやだったように思う。
しかし、大きくなるにつれて私の「生」の方が力強くなり同時にすっかりこの感覚を忘れてしまった。
子供の時分は、死の恐怖を感じるとすぐに父の布団へ潜り込んだ。そこには絶対的な安心感があり何物からも守ってもらえる場所であった。
大人になった私にはそんな絶対的安全地帯などなく、むしろ自分が子供にとっての安全地帯になってしまったのだ。
ああ、あの安全地帯が懐かしい。
仕方がないので音楽を聴いて気を散らす。
ワンピースの映画が流行していた。
一見自信たっぷりの歌姫は、心に深い闇を抱えている。
その歌姫が自分自身のために歌っているように感じる。
私は最強!大丈夫、怖くない!!
私なら乗り越えられる!
と自分に言い聞かせる。
それが返って惨めさ情けなさに涙が出てくる。
隣に眠る娘に泣いていることがバレないように声を殺して泣いた。
それでも朝はちゃんとくる。
空が白んで、新聞配達のバイクの音がする。
そう、無限に続く闇はなく、いつでもいつも通りになるのだ。
大丈夫。ちゃんと終わる。
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