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1998年のクロノス②


平塚駅で

南口に出る。

反対の北口に比べ賑やかさに欠ける…今日は特にそうだろう。

テレビでは緊急事態宣言が発令されると言っている。

そんな日なのに私は平塚までやって来た。

昔の映画がリバイバル上映されてるとの事でやって来たのだ。

世の中が騒々しいのをよそに私はこんな楽天的に行動をしている…些かバツが悪いが映画館への道を大股で進む。

映画館の入る商業施設は案の定閑散としていた。

時刻は13時過ぎ…本来ならば食事を楽しむ人、買い物をする人で賑わっているのだろう。

映画館のロビーは私以外の客が居ない…設置してあるモニターの新作映画の予告だけが虚しく流れていた。

チケットを発券し、座席に向かう。

客は私だけ…私だけの為に映画が始まる。

映画が始まる。

単発カラーのスクリーンに序曲が流れる…

目は確かにスクリーンを捉えているのに、心は何処か違うところにあるような気がする…

そのワケはあの時、分からずじまいだった…いや、分からないフリをしていた。

きっとその方が楽なのだと言い聞かせて。

#やってみた大賞  #創作 #記録

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