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宮﨑駿監督「君たちはどう生きるか」感想とか考察とか

見たあとに感じたこと、思ったことを忘れたくないなあと思ったので書き散らしてみます。独り言に近いです。
全体的にうっすらネタバレですが、具体的な描写が出るところは注記します。

出てくる要素について

「宮崎駿」てんこ盛り

まず思ったのが「今までの宮崎駿要素てんこ盛り」だなあということ。宮崎駿監督作品で出てきたあれこれがそこかしこに出てくる。例えば、

  • 冒険と少年の成長

  • ボーイミーツガール

  • ばあちゃん

  • カッコいい姐さん

  • 飛行機(戦闘機)をはじめとする機械的乗り物

  • キモかわマスコット的存在

  • 無垢な命の象徴

  • 瀟洒な洋館

  • 戦争(日本の戦争に限らず)、争い

  • 軍隊

  • 炎と浄化

  • いのちへの弔い

  • 森・海・宇宙といった大自然のちから

  • 滅びゆく文明

  • 海や森にいる名前のない(実在しない)生き物

  • あちらとこちら、それをつなぐトンネルあるいは扉

  • 愚かで愛すべき普遍的人びと

  • 「生きること」を象徴する食事の描写

  • おいしいパン

まだあるかもしれない。
いろんな作品の要素がそこここに感じられるので、「これラピュタっぽい!」「この辺ハウル!」「もののけ姫で見たー!」みたいなことを思いながら見てました。ナウシカもカリオストロも千と千尋もポニョもあるよ。

なので今までの宮崎駿監督作品を楽しく見ていた人には、「あれ○○で見た!」的にも楽しめると思います。私は楽しかった。
なんていうか、お子様ランチのような、自分の好きなもの全部入れましたー!感があります。

これまでと違う要素

逆に、これまでの作品にはなかった、あるいは強調されていると感じたのは、

  • 次へ「繋ぐ・継ぐ」ということ

上記は今の監督の年齢や立場を思えば、そりゃあ考えますよね…となるけれど、鳥はわからん。好きなのかな。誰かが「鳥の群衆が苦手な人は見ないほうがいいです」って言ってましたが、確かにめちゃくちゃ鳥出てくるので鳥苦手な人はやめといたほうがいいです。リアルなのもデフォルメされたのも出てくる。
明らかにメタファーなんだけど、それが何を意味するのかはまだちょっと深められてません。

各要素への個人的感想

あくまで主観です。

大まかなストーリーに関して

冒険と主人公の成長・変化、そしてボーイミーツガール、大好き。まさに王道。宮崎監督が大前提としてアニメーションを子どもが見るものとして制作しているのがわかる。ワクワクドキドキを得るもの。
でも今回は、冒頭部分で子どもだけを対象にしていないんだなと感じました。でもあの描写、あそこの表現だけで映画館で見てよかったなと思った。ちょっと怖いけど。
感想に「わけがわからん」という人もいるらしいですが、まあ確かにわけがわからんと思うのはわかる。監督もそう言ってるし。でもあの世界観を「そういうもん」として見られるかどうかが分かれ目ではないでしょうか。

キャラクター像

ばあちゃんと姐さんだいたい毎回出てくるよね。監督ああいうキャラクター好きなんだよねたぶん。私も大好き。
でも二枚目キャラはいなかったので(CVキムタク(たぶん)はそうなのか…?)やっぱり好きなのはばあちゃんと姐さんなんだろうな。今回も大変いい味を出しておりました。

主人公はと言えば、何せ公開されてる情報があのビジュアル1種なもんだから、最初誰が主人公なのかわからなかった(笑)ちゃんと人間です。少年。
今までの宮崎監督作品にはあんまりいないタイプの主人公だけど、私は好きです。
ヒロインも今までのヒロインとはちょっと違うかな。かわいい子は出てきます。ヒロインじゃないけどめちゃくちゃカワイイ子(子?)も出てきます。
生き物…?生き物。

まだ見てないけど気になっている人へ

各所で言われているかもしれないけれど、映画はやっぱり映画館で見るのがいいです。音響や迫力が全然違う。先ほども述べましたが冒頭での自然描写が圧巻で、怖いと感じるくらいでしたが、あの恐怖も演出なんだと思います。そこで感じることも含めて、作品に込められたメッセージにつながるんじゃないかとこれを書きながら思いました。
何年か後には円盤になるだろうし金ローでもやるかもしれないけど、迫力と良い音響を身体で感じたいならぜひ劇場へ。
今までの宮崎監督作品で好きな作品があるなら、見て後悔はしないと思います。
見られるなら劇場で見ておいたほうがいい作品です。映画ってみんなそうだけど。




ここから先はネタバレありの感想です。




ネタバレ感想

キャラクター

主人公は「真人」というけれど、作中でも言っていた通り「真の人」「しんひと」ということなんだろうなと思いながら見てました。「しんじん」とか「まひと」と読むと仙人とか達観した、その道を究めた人という意味だそうだけど、今の段階の彼はまだそこまでは行っていない。でもそこに至る可能性のある人ってことなのかなと。
傷をつけたこと、たぶんわからん人にはわからん描写だなと思っていたけど、終盤でそれが自分の「悪意」であることは示してくれましたね。そして彼が自分でそう言ったということが、変化のしるしの一つなんだなと思いました。
でも母さんって呼ばせなくてもよかったんじゃないかなーと個人的には思う。求めていたんだろうけど。変化の表現をわかりやすくするためには必要だったのかな…うーん。

ばあちゃんと姐さん。最初今回のヒロインはばあちゃんなのか…!?ってびっくりした。ヒロインじゃなかったけどある意味ヒロインだった。助けてくれたし守ってくれてた。みんなかわいい。
ヒロインはナツコさんかヒミちゃんか、みたいなとこもあるけど、ある意味どっちもで、担当の役割が違うダブルヒロインだったのかな。というかここら辺、監督の「母」に対する思いも垣間見える気がします。散々言われてきてるけど、母的ヒロインの作品多いよね。今回どっちも母だもんね。
ナツコさんが最初は拒絶したの、あれ真人を返すためだったんだろうな。

鳥たち。
インコのメタファーはわかるけどペリカンがわからん…墓守かと思ったらそうでもなかったし。というかあの墓にいたの何だったんだろう。「なんかやばいやつ」って感じでゾクゾクしました。匿名掲示板のオカ板で語られる物語みたいで好き。

大叔父さん。「跡を継いでほしい」と言っていたけれど、真人は明確には継がず(継げず)、元の世界に返した。石は砕け、積み木はテーブルごと宙に還った。
あの人が監督自身を投影しているのだとしたら、後継を諦めることの示唆なのかもしれない。
余談だけれど、吾郎監督作品は精緻で丁寧で美しいけれど平坦だと個人的には感じていて、駿監督の画面や音の演出は無二だなあと今回改めて思ったのでした。魅せ方がね、巧いのよねやっぱり。

そういう意味で際立ってたアオサギは「腹立つけど憎めない」キャラクターを巧みに表現していたと思います。見た目ちょっと気持ち悪いときあるけど。女性陣はヒロインだけどアオサギは相棒。冒険には欠かせない。
穴あいたら飛べないけどなんか詰めればイケる、そのゆるさが好き。

あとワラワラグッズ化はよ。
(公式の方針で7月末現在パンフレットもまだ出てません)


ストーリーとか演出とか

私は宮崎監督作品の食事に対する描写が本当に好きで、幼少期にラピュタを始めて見た時から、いやトトロを見た時から直感的に好んでいました。ラピュタパンもサツキのお弁当も美味しそうだったんだ…。
ハウルやポニョはその演出が顕著ですね。
今回もお屋敷にいたころの食事はあんまり描写がなかったり「美味しくない」と言っていたりしていたのが、あちらに行ってキリコさんにご飯食べさせてもらうところからかなり生き生きとしていて、「生きる」ことを間接的に表現してるんだなーと思いました。シチューの材料謎なのに(イヤあの魚?か)美味しそうだったもん。
魚をさばいたのも、「いのちをいただく」表現なんでしょうね、たぶん。
そういえば魚もらいに来てたあの幽霊みたいなひとたち、なんだったんだろ。幽霊みたいだけど魚は食べてるんだよねえ…。キリコさんは「生きてる奴はめずらしい」みたいなこと言ってたけど。

食事と言えば、宮崎監督作品に出てくる「美味しい食事」ってパン食が多くありません? さすがにトトロには出てこなかったけど、ラピュタも魔女宅もハウルも美味しいパン出てたじゃないですか。カリオストロと紅の豚とポニョは麺だけど。監督卵とジャムとパン好きなのかな。
ヒミちゃんがくれたやばいくらいの量のバターとジャムのパン、めちゃくちゃ美味しそうでした。カロリーぜったいヤバいけど。

私は宮崎監督の描写する滅びの文明も大好きで、廃墟とか見に行きたくなるのはラピュタに性癖を刺されたからだと思っています。最後にすべてが崩れ去って消えていくの、いいよね…。

毎回監督が描くのは「生きる」姿で、食事も労働も自然も、その中に生物が「生きる」姿が反映されていると感じています。今回も一人の少年が生きること(新しい家とか新しい母とか学校とか)に惑い、悪意を持ち、拒絶しながら、「あちら」の世界の「生きる」ことに触れて自らの「生きる」を見つめ、問い、見出していく話なんだと思いました。タイトル「君たちはどう生きるか」ですし。
それを不思議な世界で、いのちの表現で、大自然と人間社会の対比で、あるいは人間の文明で、様々な角度から描かれていると思いました。

つまるところ、自らの生き方を問うには自らの生きる世界を見つめなければならないわけで、でも生き方を問わずに生きていくこともできてしまう現代、「世界を見つめ、自らの『生きる』を問い続けよ」というメッセージが込められているように感じました。
これは私がこの作品から受け取ったものの話です。


本当に独り言を書き散らしていたので読みにくかったと思います。ここまで読んでくださってありがとうございました。
これから他の人の考察とか感想とか見にいきたいと思います!いい作品は人の感想見るのも楽しい!そういう作品に出会えたことも嬉しい!

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