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【読書記録】『機巧のイヴ』乾緑郎

 ◆「人」って、狂ってるかもしれない

 「日下國くさかのくに」で生まれた機巧人形オートマタ伊武イヴ。彼女を中心にくり広げられる、人々の狂喜乱舞物語です。
 「日下國」のモデルは日本。時代は、三部作通して、江戸末期から大正にかけて、でしょうか。
 「伊武」は意思を持ったからくり人形です。老いない美しさ、そして計り知れない技術をその身に持ち合わせた伊武は、出会った人々を無自覚に狂気に導いていきます。本当に些細な、でも当人にとってはとても切実な思いを、伊武との出会いによって行動に移していく様は、「自分もそうしてしまうかもしれない」と思わせるリアリティがありました。

 個人的に最も没入したのが『新世界覚醒篇』です。架空の世界ではあります。が、先にも言ったとおり、当然現実の世界をモデルにして書かれていることは明白です。
 同巻終盤、よくあのシーンを書かれたな、と。身震いし、しばらく現実に戻って来れませんでした。

 不本意ながらKindle版で。(私は文庫で読んだし……。文庫好き)


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