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『院の御子』・・・「畿内編 序」

御子とその周辺人物(ネタバレ注意)

■院の御子(いんのみこ)………………主人公。九条院 呈子(しめこ)の女房であった隆子(肥後守藤原資隆の娘)と後白河院の子として生まれる。後白河院は、ある理由によって、この主人公に名を与えない。なので、彼女はある一時以外は、最後まで「御子」「姫宮」などと呼ばれ、鎌倉側史料『吾妻鏡』にもそう記されている。

■後白河院(ごしらかわいん)………………平清盛の権勢を誇る中、清盛を利用し、利用される苦しい立場の法皇。父に認められなかったがために、「四宮」と呼ばれて東宮にもなれず、平民や遊女たちと今様を作って遊んでいた。かなり激情的性格であり、美しいものを好むが、政治のためなら気に沿わぬ者とでも平気で手を組んだり捨てたりできる。

■藤原成親(なりちか)………………権大納言にまで出世する貴族。眉目秀麗で京の人々のあこがれの的。情に深いやさしい男で、妻子も大事にしたが、同時に後白河院とは男色の関係にある。後白河院から赤子であった御子殺害を下命されるが、殺すことがとてもできず、子のない九条院に養育を頼んだ。その後も、御子をいつくしんで見守り続けているが、その真意は単なる愛情か政治的配慮なのかわからない。

■源義経(幼名 牛若丸)………………母である常盤御前は、九条院の雑仕女であった。その縁で、時折鞍馬から降りてきては九条院の屋敷に遊びに来る。御子の兄的存在。が、ある時ふと姿を消してしまう。

■仲影(なかかげ)………………御子の乳母子。御子より7歳年上で、実の妹のように御子を守り、その後御子を主君として、行動を共にする。

■當子(とうこ)………………御子の乳母子。御子の数か月前に生まれる。出過ぎたこともしないが、芯の強い女性。常に御子の味方に徹する。

■以仁王(もちひとおう)………………後白河院の第三皇子。御子の兄にあたり、御子にとっては初めて肉親の温かみを教えてくれる人。御子と同じく後白河院からは冷たくあしらわれ、親王宣下をもらえず、元服も一人で自ら行った。度量頭脳武術ともに優れ最も皇位に相応しいがゆえにもっとも遠ざけられている。政権を掌握しておきたい後白河院に扱いづらいと思われて避けられている。

■長谷部信連(はせべのぶつら)………………以仁王の一の家臣。以前は宮中警備の役を仰せつかり、大盗賊を捕縛するなど華々しい活躍をしていたが、以仁王の人物に魅せられ家臣となる。武芸に秀で、清盛にこれぞ真の武士と言われる。御子に武芸の基礎を教えた人物。

■覚山坊(かくさんぼう)………………もとは、園城寺派の僧だったが、成親と懇意にしていたことから、後白河院の目に留まり、加持祈祷などを仰せつかる。御子への「ある罪の意識」から、神出鬼没しながら御子を最後まで支え、後白河院の間者の役割も果たす。

■安倍泰親(あべやすちか)………………かの安倍清明の子孫。陰陽頭という役職にまで上り詰め、事件や天災を予見する力はあるが、狭量であり、自尊心と虚栄心にとらわれた人物。

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