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【安全登山のために】”登りたい山”と”登れる山”は違う

“夫れ未だ戦わずして廟算勝つ者は算を得ること多ければなり。未だ戦わずして廟算勝たざる者は算を得ること少なければなり。算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況んや算なきに於いてをや。吾此れを以てこれを観るに勝負見わる”

冒頭の文章は「孫子の兵法書」に書かれているものです。登山に当てはめて意訳すると

「前もってしっかりとした準備をしてきちんと計画を立てなければ山から無事に帰ってくることはできない。そして、無事に下山できるかどうか確信の持てない山に行ってはいけない」となります。

帰ってこれるかどうか確信もないまま山に行くのは愚かな行為です。そんなの行ってみなければわからないと言う人もいるかもしれませんが、一歩間違えば命に関わる登山は無事に下山できる確信がないなら行かない方がいいです。必ずうまくいくという確信があって初めて踏み切るべきです。

登山中に事故を起こさない最も確実な方法は山にいかないことです。良い軍師は戦をしないことを第一としてます。戦をしたいという人に付いていくと命がいくらあっても足りません。

もうひとつ冒険について書かれているものがあってこれも登山にも言えると思ったので紹介します。

冒険は体力と度胸で大自然に挑むと思いがちですがこれは全くの誤解。冒険とは充分過ぎるほどの事前の準備と完璧な計画のもとで出発するもの。目標へ確実に到達し必ず生還することです。

冒険だからこそ絶対に成功させなくてはいけない。

2017年6月3日、クライミングの世界では誰もがその名を知るアレックス・オノルドがアメリカ・カリフォルニア州にあるヨセミテ・エルキャピタンのフリーライダーを「フリーソロ」で登攀することに成功してクライミング史上まれに見る偉業を成し遂げました。しかも3時間56分で。

フリーソロはひとりでロープとその他の道具を使わない失敗イコール死というクライミングスタイルです。フリーライダーはエルキャピタンの主要なルートの一つで37ピッチ約1,000m、グレードは5.12d。

興味がある方はナショナルジオグラフィックのサイトに記事があるので読んでみてください。

ロープも使わずに1,000mをひとりで登るという一見無謀に見える挑戦こそ綿密な準備と計画があるということがよくわかります。

山に行ったら絶対に家に帰ってこないといけません。つまり、雑誌を見てうわ、この山かっけ~!登ってみてぇ!登ってみてぇけど写真で見ると岩ばっかで危なくねぇ。でもまぁ雑誌に載ってるぐらいだからおれなら行けるっしょ!

という軽い気持ちで行ってはいけないということです。

最近の長野県の年間遭難件数は20年前と比べて3倍になっているそうです。登山者が増えたからだと思うかもしれませんが確かに登山者も1.4倍に増えてます。しかし、遭難件数は1.7倍と登山者の増加率より高い傾向にあります。しかも、この6割が晴天という条件が良い時に起こってます。

原因の半数は滑落。登山者の技術や体力が十分ではない自分の力量以上の山に登っているからではないか?という意見が多いようです。データを調べずに雑誌などの印象で判断するといつか痛い目にあいます。

では、どうやって登りたい山と自分の体力・技術が適切かどうか判断するのか?

私が一番いいと思う方法は経験豊富な人や登りたい山に何度か行ったことがある人と一緒に山を歩いてみて行けそうかどうか判断してもらうことだと思います。一緒に登れば行けるか行けないか大体分かります。

私も初めての人を連れていくとき必ず一度ハイキングに行ったり、2500mを超えて岩があるところへ行く場合はボルダリングに行ったりします。岩があるところは一回クライムダウンを経験しているだけで安定感が変わってきます。

外岩やボルダリングを経験している人はわかると思いますが、難しいのは登りより下りです。

登りは体力があればなんとかなるものですが、下りは技術です。経験です。慣れです。岩稜帯はとくに下りの技術がないと事故につながりやすいです。

そんな人が身近にいたら苦労しないよ!という声が聞こえてきそうですが、身近にいない場合は長野県、山梨県、静岡県、新潟県、群馬県、栃木県、山形県が作成した「山のグレーディング」も参考になると思います。「山のグレーディング」は長野県のサイトが他県の情報も含めてまとめられているので長野県のサイトがおススメです。

技術的難易度は5段階で評価してます。グレードはA〜Eの5段階でAが初心者向けでEが最難関です。難易度Cのコースを歩いていて不安を感じたり、道に迷ったりした場合はまだ難易度Cのレベルに達していないと判断できます。

Cのコースを問題なく歩くことができるようになって次のDレベルのコースにステップアップできると考えます。

どんなルートを登るのか自分の体力や技術で大丈夫かなどを確認し足りないなら事前に準備する。事前の準備と正しい計画を作って提出共有するだけで70%成功と言えます。

ただし、完璧な計画があっても時としてうまくいかないのは戦も冒険も同じ。結果としてうまくいくかいかないかではなく、事前にいかにしっかりと計画するかが大切です。

計画の立て方やうまくいかない場合に現場でどのように考えてどのように対応していくかは別記事でお伝えします。

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