台所とキッチンとバナナ
オランダの本屋さんの一角に日本人作家をまとめて平置きされていた。
いつも思うのだけれど、オランダで紹介されている日本人作家の小説はネコを題材としたものが多い。この一角もたくさんのネコが表紙を飾っている。
本を眺めていると、本とおしゃべり好きな女性がHiro Arikawaの The Traveling Cat Cronicle を勧めてきた。すごくよかったらしい。ちなみにすっかり忘れていたが、以前にも知り合いのオランダ人3人からこの本を勧められていた。
私はよい本を思い出させてくれた彼女に、お礼として吉本ばななの「キッチン」を紹介した。
目がチカチカするような吉本ばななの『キッチン』。
強烈な色彩からカラフルなアメリカのケーキを作ってそうな雰囲気なのに、背後にはには漢字で「台所」と書いてある。昔読んだ『キッチン』が一瞬思い出せなくなるくらい強い印象の表紙だ。
さらっと彼女に「キッチン」のストーリーを話すとすぐに「買うわ」と言った。「それ以上、話さないで」と。
私は家に帰ってゴソゴソと本棚から取り出して『キッチン』を読み、改めて表紙を眺めた。
そうそう、これこれ。
2本だったり、3本だったり、柄の部分で繋がっていたり繋がっているようで重なっているだけだったり……。たくさんのバナナが穏やかな色彩で描かれた表紙。
バナナ(ばなな)が人間の繋がりを表現している、この表紙がやっぱり私は好きだと思った。
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