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彼女ノオト。#002/ときめきJourneyの先に。(前編)

はじめに

彼女は、私の住まいを奇跡のように美しく整えてくれた。

それは、同時に、私の心も整えてくれるようなプロセスでもあった。

そして、そのプロセスにおいて、人生や生き方について、相対峙することになろうとは。

その一部始終を前編・後編に分けてしたためた。

インテリアコーディネートを初めて体験したオンナと、そのオンナに真摯に向き合う彼女が、まるで共に旅をしているような。そして、その旅で出会った風景や感情の揺れ動きを少しでも共有できたら。

本日は前編で、私の体験談を。
明日の後編では、その続きと彼女の紹介を投稿する。

そう、旅は一日では終わらないのである。

是非、最後までお楽しみいただけると幸いだ。


ときめきJourneyの先に。(前編)

ある日、日本橋室町の福徳神社で、私はお参りをしていた。

見頃を迎えようとする桜が、界隈の風情をぐっと引き立ており、その明媚な光景に己の心にまで花が咲くような感覚だった。

ちなみに、その日は一粒万倍日・天赦日・寅の日が重なる超強運日!…の前日。
聞けば、そのような日は決まって大行列ができるのだとか。


そのほん少し、10分前のこと。

私は洗練された空間の一番奥に鎮座する重厚なソファに腰かけ、福徳神社の鮮やかな朱色の鳥居を眼下に眺めていた。

壁一面ガラス張りの、モダン&コンテンポラリーをテーマとするインテリアショップを訪れていたのだ。

我が家のリビングに敷く手織りのラグを購入するために。

写真中央右寄りに鳥居が見えるだろうか。
BoConcept日本橋のスタッフから福徳神社のことを聞き、帰りがけにお参りに行った。

その数日前まで、ラグを購入することなんて考えていなかった。

飲みこぼし・食べこぼしを得意技とする小さな子供達がいる我が家においては、日本とブラジルの距離ぐらい縁遠いものと思っていたくらいである。

ましてや手織りのラグだなんて!!(凡そ16万円するのだ...)

ガラス張りの向こう側を眺めていると、オフィスビル立ち並ぶ中、江戸の情緒が融合している日本橋室町の美しい景観と、北欧モダンが思いの外マッチしていることに驚く。

そして、その情景から、新たな境地に立つ「次の私」に出会える予感が重なり、ただただ静かな興奮を覚えていた。

住まいのことやインテリアのことを考えた時、
どうせ誰も家には来ないし…、どうせセンスないし…、どうせ子供に散かされるし…、などと思ってはいないだろうか。

これまでの私も完璧にその派閥に属していた。
どうせ…と、端から諦めていたのだ。

ところが、彼女が教えてくれたのだ。今まで諦めていたのは、住まいやインテリアに対してではなく、「人生」に対する諦めだったということに…。

少し大袈裟に感じるだろうか。

始まりは雨だった

彼女に我が家のインテリアをコーディネートして欲しいと依頼したのは、2023年が明けた間もない頃。寒い雨が降る日だった。

昨年末に20年近くに及んだ会社員生活に終止符を打ち、これから作家として生きていくことを決断した私。今後は自宅で過ごすことも増えるし、これまでなおざりにしていた統一感のない空間を整えたいと、割と気軽に依頼したのだった。

フェミニンなショートカットと洗練されたファッションに身を包む彼女は、愛らしさと知的さが同居している。そんな彼女は、私の急な申し出に、一瞬驚いた表情を見せた。

が、すぐさま「是非させてください」と、清々しい笑顔をたくわえ快諾してくれた。

気軽に依頼した割には、その返答に私は意外にもホッとする。

その帰り道。
今まで敷居が高いと感じていたインテリアコーディネートに対して、どうしてああも、さらっと依頼できたのだろうと、少しばかり思い起こした。

だが、そんなことよりも彼女から承諾を得たことで、これからの変化の兆しを予感し、胸が高鳴るばかりで、その時は大したことに感じなかった。



その数日後、リビング・ダイニング・和室が一続きになっている我が家の写真を数枚ほど彼女に送りつつ、下記3点のざっくりとした要望を伝える。

1)リビング、ダイニングに統一感を出したい
2)アートやグリーンを飾りたい
3)子供のおもちゃがリビングに散らかるのをなんとかして、リビングを家族が集う癒しの場にしたい

実際に送った写真
家具やアイテムのテイストがごちゃごちゃ…

ほどなくして、彼女と1時間強のセッションをオンラインで実施。
概ね擦り合わせたのは下記の通りだった。

✔今後の進め方とスケジュール
✔活かしたい家具・アイテム
✔買い換えたい家具・アイテム
✔理想とするテイスト
✔メインカラー

そして、最後に予算...
これは、かなりぼんやりしていたし、妥当性もわからなかったので、とりあえず20万円と答えたのだった。

さて、本記事の冒頭にもあった通り、私は予算の大半もする16万円の高級ラグをこのセッションから然程時も経たたぬうちに、購入している。

私の身に、一体何が起きたのか…?

「ときめきJourney」始まる!

当初は気軽に依頼したインテリアコーディネート。しかし、それはまるで旅のようだった。見知らぬ場所で美しい景色に出会い、感動し、明日を生きるエネルギーに繋がるような旅。

そして、彼女が水先案内人として共に旅して出会ったのは、数々の「ときめき」であった。

タイトルをつけるなら、ずばり、
「ときめきJourney」である。

ただ、旅路にはプラスの感情だけでなく、ちょっとした不安の感情もつきもの。ときめきが炸裂しながらも感情が上下に揺れるさまにも注目して、以降は読み進めていただきたい。

ピンタレストでときめき爆発!

一回目のセッションで、ある程度の好みを把握したのか、彼女は選りすぐりのインテリア画像をピンタレストにまとめて送ってくれた。言語情報だけでなく、今度は視覚情報をベースにして、より具体的に「理想形」を擦り合わせるためである。

ピンタレストの中身を開くなり、
そうそう、こんな感じ!あー、これも好きだなぁーーー!!
自然と目がハート型になる。

これまでハイセンスなインテリア画像を、まじまじと眺める事がなかったこともあるのだろうが、いよいよかと思うと、テンションはこの時点で爆上がりである。

自身の好みを探ることは、自己対峙する行為の中で、なんとも自己肯定感の上がることなのだろう!ときめきが爆発したのだった。

ピンタレストから選んだ画像を纏めてくれた実際のムードボード
何度目にしてもときめく…

そして実際に選んでみると、北欧スタイルを好んでいることが客観的に見て取れるように。

“モダンなブルックリンスタイル”と不慣れな言葉を使って彼女に要望していた私だったが、選んだ画像を見た彼女が、みーこさんのお好みは“ナチュラルモダン”ですね!と分析した。

(“ナチュラルモダン”というカテゴリがあるのか…ふ〜む、御洒落な響きだ…)

踏み入れたことのない世界の言葉達を、いちいち味わう。

更に続けて、彼女はひとまずということで、モダンテイスト漂ういくつかのダイニングチェアを提案してくれた。今使っているダイニングテーブルに合わせるとして、どれが一番好みですか?と。

どれも御洒落で素敵だが、これまでに選択したことがないテイストのチェア達

ところが、モダンテイストを実生活に取り入れたことのない私…いざ自分事としてどれかを選ぶとなると、途端に迷いと不安が生じるのである。

そして、慣れぬ選択を迫られると現実逃避したくなるのか、自ら別の選択肢を探しだす暴挙に出てしまった!

その上で、なんとなくこれかなと思ったのが以下のチェア。元々の馴染みとするものが自然に表れた瞬間だった。

私が選んだチェアはカフェ風のナチュラルテイストだった
from KANADEMONO

すると、彼女は私の気持ちを察するかのように言葉を選んでくれた。

「もともと少しモダンな…とイメージしていたけれど、やっぱりナチュラルが安心するというのはよくあることですよ。」

理想に反して、ついつい馴染みのものに走ってしまいそうになる輩に、やんわりフォローを入れたところで、

色々な店舗(服、カフェ、美容院など)に出向いた時、ときめくテイストは?
との新たなクエスチョンをもらう!

好きな店舗の世界観でときめき爆発!

ついさっきまで、ささやかな不安感に包まれた私の心が、再びときめきにジャックされたのだった!

カフェならスターバックス、ライフスタイル系ならコンランショップやIKEA、服なら、どこそこ…。

チェアを選んでいた時とうって変って、すいすい回答が出てくるではないか!人は既に出来上がっている世界観に惹かれる習性があるらしい。

我が家のインテリア(すなわち世界観)を自分でクリエイトしていくことは、予想外にも自分軸が問われることかもしれないと思い知った。

とにもかくにも、好みを誰かに共有し、その魅力を分かち合えることは、なんと喜ばしいことか。

「私も好きなブランドばかりです!」

と、彼女は律儀に共調してくれた上で、

「みーこさんの好みは、やはりナチュラルカフェ風ではなく、当初のモダンナチュラルですね!」

と、改めて確認・整理してくれたのである。

加えて、全体テーマは、“北欧×モダンスタイリッシュ”と定義付けしたことで、「軸」が出来上がったのであった。

その流れで改めて提案してくれたのが、以下のダイニングチェア。

from KANADEMONO

私が当初選んだカフェ風チェアは、“カフェ×ブルックリン”的テイストにすることも可だが、“北欧×モダンスタイリッシュ”の軸で、現状のインテリアに統一感を出すなら、この手のチェアが良い、というのが提案の趣旨だった。

なるほど、これこそが、全て自前で選択していくと、次第に統一感がなくなってしまう罠なのかと思わず身震いする。

そして、その時には、先ほどまでの迷いと不安は完全に無くなっていた。

これまで「所詮は理想形」に過ぎなかったモダンテイストが、初めて自分事として捉えられるようになった瞬間だった。

“北欧×モダンスタイリッシュ”のテーマで具体的に進めることが決まったところで、約1週間後、二度目のセッション。

今日は彼女が具体的にコーディネート案を見せてくれるというので、ドキドキワクワク!である。

そして、案の定…

コーディネートボードでときめき爆発!

コーディネートボードとは、実際に販売されている商品と我が家の家具・アイテムを構成して、コンセプトやイメージを可視化したもの。

よって、先だって制作してくれた、ピンタレスト画像を集めただけのムードボードに比べ、自分事としてグッと現実味が沸いてくるのである。

そして、実際に提示してくれたダイニングルームのイメージはこちら。

棚のテーブルライト:部屋の雰囲気をその時々で変えられるように
花瓶:要望のグリーンをフォーカルポイントに配置

ダイニングの吊り下げライト・テーブル・棚を活かしたいとの要望に対し、くだんの紆余曲折した末に選んだダイニングチェアがしっかり配置されているところを確認。

ふむふむと、一時は足を踏み外しそうになったちょっぴり苦い過去を思い起こし、気持ちはここで改めて”北欧×モダンスタイリッシュ”に向けて、迷わず全速力である。

実は、写真映りの関係で、吊り下げライトの色を白と誤認していたことがセッション中に判明。実際の色味は艶感のないマットなゴールドのため、テーブルライトは別のを改めてセレクトしてもらうことに。

元ある家具やアイテムの関係性を考慮しながらのコーディネート。色味、素材、ボリュームを調整しながらの緻密な作業であることを実感する。

そして、リビングルームのコーディネートボードで、またも、ときめき爆発!

クッションカバーに敬意を表する

リビングルームは2つの案を作成してくれたが、どちらだけを選ぶだなんて難しすぎる…!

なーんて野暮な心配はいらないことをすぐさま知る。
彼女の対話から、様々な観点での選択があることが分かったからだ。

例えば、カーテン。
掃き出し窓の外にはウッドデッキが続いているため、第1案の厚みあるカーテンよりも、第2案のような生地の薄いリネン素材を取り入れたほうが建物自体の機能性とマッチする。

一方、念願だったアートは、第1案のほうがちょっとしたアクセントなっているようで好みだし、フロアーライトも第1案のほうがモダンなテイストが演出できると感じた。

夫々の案の中でときめくアイテムを会話に絡めながら、コーディネート案を改めて全体的に整えていく。

意外だったのは、クッションカバーの役割の大きさ。
リビングとダイニング、夫々に存在するアイテムに合わせてカラー、素材、模様をセレクトしてくれていたのは勿論のこと、知られざるファンクションが。

リビング/ダイニングの2つのゾーンをシームレスにつなげる役割を担っているのだと、彼女は説明する。

うーむ…。これまでは季節性に留意していたくらいで、好みや感覚でしかクッションカバーを選別してこなかった。

(君は小さいながらに、小粋な計らいをしてくれるアイテムなんだね…)

心の中でクッションカバーに敬意を表する。

高級ラグで人生観を揺さぶられる!

さて、いよいよ、ラグである。

彼女は、フローリングとエコカラット(壁の装飾部)の色味に落差があることを踏まえ、双方のテイストをマッチさせるためにラグを活用することを提案した。(さきほどのクッションカバーの役割如くである)

そして、コーディネートにあたっての要望の3つ目でもある、リビングを家族が集う癒しの場にしたいのであれば、ラグを敷くことは不可欠と言わん彼女。

提案を受けつつ、コーディネートのアイテムが掲載されている資料で、該当商品の金額をさっと一瞥してみる。

(むむ?な、なんと!第1案のラグは16万円ではないか!)

(なぜが「¥」でなく)「$」マークが瞬時に瞼の裏に浮かぶ。第2案のラグはその半額だが、いずれにせよ高価であることは変わらない。

そして、全アイテムの総計は、ラグを差し引けば、当初予算の20万円に近い金額であることにも気付く。

なぜ彼女は、予算を大幅に超える高価なアイテムを組み入れたのか…?
ラグはピンキリなのだから、このような高価なものでなくてもよいのでは?

ひとしきり頭が混乱した後は、強烈な好奇心に掻き立てられ、彼女に単刀直入に聞いてみたのである。

「予算超過しているけれど、それでもラグはあったほうがよいのかしら?それに、子供達が食べ物や飲み物をこぼしたりするので、高価なラグなのに勿体ないのではないでしょうか?」

すると、彼女の目が少しキリリとしたように見えたかと思うと、自身の経験を語り始めた。

〈後編に続く〉

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