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⑦ 彼は私の家にある酒を毎回一滴残らず飲んでいった

彼がアルコール依存症だったかは分からないけど、依存症かもしれないと思ったことはある。
私は専門家じゃないから判断できない。
ただ、彼はお酒が大好きで、私の家に来ると家中の酒を飲み尽くし、最後には料理酒まで飲み始めたことがある。
不味い、と言いながら飲んでいた。

酒を飲むと、最初は機嫌が良くなり陽気になる。
優しいことも言ってくる。
でもそのうち眠気が来ると、言葉がきつくなる。
普段なら怒らないようなことで怒り、私を罵倒する事もあった。

彼は朝から飲んだ。
私も一緒に飲んだけど。

アルコール依存症なら、酒がなくなったら暴れたりするイメージがある。(ありきたりな作られたイメージかもしれないけど)
でも、酒を飲み尽くしても、彼は酒がないぞ足りないと怒るようなことはなかった。

私が予め用意した酒を飲み尽くして酒のストックがなくなったら、近所の酒屋やコンビニに買いに行くこともあった。
大量に酒をカゴに入れ、一度に1万円以上の酒を買う。
彼は金を出そうともしないし、出したこともない。

彼が飲む酒のために私が総額いくら出費したか考えると目眩がする。
でも、当時の私は、彼が会ってくれるだけでありがたいし、彼が酒を飲みたいならいくらでも差し出しましょうと思っていた。
我ながら馬鹿である。
自分が馬鹿だったせいだから、気持ちが冷めてからも彼に「金を返せ!」と思ったことはない。

彼がアルコール依存症だったかどうかだけど、料理酒まで飲んでいるのを見て、初めて「さすがに変じゃないか」と私も思い始めた。

私は彼が来る時、最初の頃はビール6缶パック程度の量を用意してたが、そんなんじゃ全く足りなくて一瞬でなくなる。
酒がなくなると、いつか飲もうと隠していた高いワインも見つけ出して、いつの間にか栓を開けてたりする。
で、どんどん量が増えて、ビールカートン、焼酎の2リットルパック、ワイン数本程度の量を毎回用意するようになった。
週末に1泊か2泊彼が滞在する間に、ほぼ全て飲んだ。
先に書いたように、足りなくてさらに買いに行く事もあった。

私も一緒に飲んでいたけど、彼の飲む量の半分くらいだったと思う。
とにかく、彼は会っている間ずーーーっと飲んでるか、つぶれて眠りこけてるかどっちかしかなかった。

彼は仕事のある日は当然、朝から飲んだりはしない。
飲んでいい時と悪い時くらいは普通に分かっていた。

でも何年も付き合ううち、最後の方はあまりの飲酒量に嫌気がさして、とある質問掲示板に相談の投稿をしたことがある。

そしたら、「彼はアルコール依存症だ」と断定する回答がたくさんきた。
その上、「毎回大量の酒を用意していたですって?彼のアルコール依存症は、貴方の責任だ。責任を取るべきだ。」
というお怒りの回答もあった。

いやいや、知らんがな。
だいたい責任って何だ。

6年間かそこら、1~2ヶ月に1度会う時に沢山飲んだからってアルコール依存症になるわけない。

それに、赤ちゃんじゃないんだから無理やり私に飲まされたわけでもなし、100%彼の意思で飲んでるんだから。
もしも本人がアルコール依存症を自覚していて本当は飲酒を辞めたいんだと言っていたとかなら、私も全力でやめられるように協力しただろうけど。

今後、もし彼がアルコール依存症で苦しんだとしても、自業自得だろうとしか思えない。
私のせいではないから、罪悪感はない。

むしろ、好きなだけ好きな酒をタダで飲めたんだから、感謝してほしいくらいだ。
それで、飲んでる最中に眠くなれば、黙って寝室に行き私のベッドを勝手に使って好きなだけグーグー寝て、些細なことで私にムカついたら好きなだけ罵倒して王様みたいに振舞って、帰りたくなったら私のことなど考えずさっさと帰った。

タダ酒を飲みたいがためにあなたは利用されていたんですよ、都合のいい女ですね。
と言う人も沢山いると思うけど(実際に、例の質問掲示板ではそんな回答が何件もきた)、私は、都合が良かろうが利用されてようが、二人きりで会ってくれればそれで大満足だった。
もし彼が、私の家に来れば酒が飲めるから、という理由でわざわざ来てくれていたのだとしたら(時々不思議なプレゼントを持って)、むしろチョロいのは彼の方だったかもしれない。

今回はこのへんで。
それでは。

#元カレ #エッセイ #恋愛 #過去日記 #アルコール依存症 #タダ酒

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