見知らぬ両脇の人たち
友人に教えてもらった。
「セッション」という映画がとても良いのだと。
それを知ったときにはすでに上映が終わっていたが、しばらく経つと人気のあった作品なのか、特別良い音響のシアタールームで再上映されるのだという。
すべての予定を後回しにして鑑賞することに決めた。
先着順の座席で私の周りにいる人たちはすでに何度も観たことがある人ばかりのようで、こんな初見の者がここにいていいのかと卑屈になりかけたが、なっても仕方がないので背を丸めるのをやめた。
悪くない席に座った。上映が始まった。
映画好きな人たちしかいない空間なので、邪魔は一切入らない中で映画に呑み込まれていった。
心臓が何度も高鳴るのを繰り返し、ラストで今回最高潮の高鳴りを叩き出したところでバッサリ映画はエンドロールに入った。
エンドロールの間に呼吸を整え、余韻にひたり、証明がつき始めると肩の力が抜ける。それとともに両脇から
「良かったですね…」
「良かったですね…」
二人とも男性だった。普通だったらちょっと警戒してしまう瞬間だが、今回は違った。
同じ映画を観て、同じ思いをした仲間との声の掛け合いだった。
「初めて観たんですけど…すごかったですね…」
その後並んでシアターを出て、散り散りになった。
一人映画だったけれど、一人じゃなかった。
いつもより厚みがあった。
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