Sサイズじゃない女性がSサイズ男性のための洋服屋を始めた1年間を振り返って
2021年6月25日、身長164cm以下男性を対象としたアパレルブランド「calm」（カルム）が産声をあげました。Sサイズじゃない女性の私が、今まで普通の会社員だった私が、初めて自分でお洋服を作って、ホームページも作って、販売して、素敵なユーザーさんたちと出会って…ドタバタしているうちに、もう1年が経とうとしています。
最初は「サイズの合う服がない」という夫の困りごとを解決したいという想いから始まったcalmの事業ですが、この1年で本当にたくさんの応援してくださる方に出会いました。一方で、まだまだcalmのプロダクトの改良は必要ですし、そもそも「お洋服で解決するだけでいいのだろうか？」なんて、私の頭の中もモヤモヤすることが増えてきたことも事実です。
そこで1年というこの節目に、本当に私が伝えたいこと、成し遂げたいことを綴ろうと思います。
calmドタバタデビュー
calm第一弾のプロダクトとして、Tシャツを作りました。一番最初はホームページもなかったため、Makuakeのクラウドファンディングでの販売から始まりました。このクラウドファンディングの特設ページが公開されたのが2021年6月25日でした。
自分でホームページも作ったことがなければ、商品の撮影もしたことがない、そしてモデルさんもいない！という状態から、なんとか周りの方々に助けていただき、急ピッチで準備。わけもわからないまま、とりあえずMakuake公開の期日だけ決めていたので、それに間に合うようにドタバタでとにかくとにかく特設ページを作りました（笑）
探すのに苦労したモデルは演技力抜群の高野くんに依頼。感謝。
こんな調子で始まったわけですが、Makuakeの特設ページ公開から約1ヶ月弱で、目標金額20万円のところ、なんと約24万円と120％で達成。26人の方にcalmのデビュー作であるTシャツを購入いただきました。そのときに購入いただいたお客様とは現在も意見交換をさせていただいていたりしますし、何より「こんなのを待っていた！」「自分のための洋服だと思った！頑張ってほしい！」など、応援の声をいただけたのが、とても嬉しかったです。本当にありがとうございます。
脱線しますが、クラウドファンディングを初めてやったときの細かい内容はこちらに。これからクラファンやられる方の参考になるかも。
もともと、夫に喜んでもらえるといいな！という気持ちで作ったcalmのお洋服。このクラウドファンディングをきっかけに、「他にも同じ困りごとを持つ人がたくさんいる。夫にも、そして同じ気持ちを持つ他の人にも、ぴったりサイズのお洋服をたくさん作って喜んでもらいたいな」と思うようになりました。
calm誕生のきっかけ
そもそもなぜcalmを始めたのかというところですが、私の夫が身長164cm以下と平均的な日本の成人男性よりも小柄。そのため、なかなか既製品だとジャストサイズのお洋服が見つからないんですね。ユニクロや無印などサイズ展開も豊富なお店にも行くのですが、
XSやSサイズが店頭に置いてない
肩幅はちょうどいいけど、丈が長い
裾上げしたらせっかくのシルエットが崩れてしまう
など、これでもかというくらいぴったり体に合うサイズがないのです。「レディースを着たらいいじゃん！」とも言われるのですが、もちろんアイテムによってはレディースでもOKです。でも、ウエストがキュッとしぼられていたり、肩幅が合わなかったり、どうしても男性の体つきに合わないもののほうが多いのです。だから、洋服を選ぶときは毎回試着は必須だし、時間もかかる。試着して納得して買っても、おうちで着てみたら「やっぱりなんか違うかも…」となった経験は1、2回どころじゃありません（笑）
何枚も着てSサイズを買ったけど、家でもう1回着てみたらなんか違ったみたい。
そこで、軽い気持ちで「だったらキミが納得する、ぴったりサイズの服があればいいんじゃない？私が作ったる！」となったのが、calmの最初の最初です。夫の悩みをなくしたいな、という本当に個人的な想いからはじまりました。
Tシャツの次はスラックス
calmTシャツをクラウドファンディングで販売し、購入してくださったユーザーさん何人かとお話する機会もいただきました。そこで聞いたのは「サイズの悩みが大きいのはやっぱりパンツ」という声でした。
具体的にはこのような悩みでした。
そもそも自分サイズのパンツがお店に売ってない
必ず裾上げしなければならないので、時間やお金が追加でかかる
せっかくのパンツのシルエットが裾上げによって台無しになる
そこで、Tシャツの次にスラックスパンツを作ることにしました。calmのユーザーさんは30代の働き盛りの男性が多いため、仕事着としても使えるようなきれいめなデザインがいいと判断しました。色もユーザーさんへのヒアリングによって、ネイビーとグレーの2色を、サイズも2タイプにしました。また「裾上げ不要」というコンセプトで、身長160cm前後の人を想定した丈に設定し、さらに裾がダブルとシングルの2パターン楽しめる且つ、長さの微調整ができるようにしました。肝心のシルエットの問題も、そもそもSサイズ男性の丈に合わせて作ったので、きれいなテーパードデザインに仕上げることができました。
「calm Tapared Slacks」と名付け、前回同様Makuakeのクラウドファンディングで販売。結果としては目標金額20万円に対して47万円を超え、237%の達成率でした。リピート購入いただいたユーザーさんもたくさんいらっしゃいます。
もうこのときには「夫のためだけに作ろう」なんて思っておらず、「パンツのサイズに悩むSサイズ男性の皆さんにもっと知ってほしい！もっともっと喜んで欲しい！」そんな気持ちで企画〜販売をしていたので、目標達成したときには、事前にユーザーヒアリングに協力してくださったユーザーさんや、周りのSサイズ男性、制作に携わって下さった方全員、そして私の夫・・・皆さんのお顔が目に浮かび、感謝感激雨霰とはまさにこのことでした。
洋服屋の葛藤
calm Tapared Slacksのクラウドファンディングでの販売が終了し、発送完了したのが2021年の12月頃。まだクラウドファンディングでしか販売はしていなかったものの、この頃から私の中で「本当に洋服だけで夫やcalmのユーザーさんのお悩みの解決になっているのだろうか？」と疑問を持ち始めます。
calmのお洋服のアイテム数やサイズのパターンをどんなに増やしても、オーダーメイドでない限り「サイズが合わない」という問題は絶対になくならないことに気づいたためです。
また、ユーザーさんと深くお話することも増え、彼らが日本では身長的なマイノリティだからこそ体験したことをたくさんうかがいました。思春期の頃の身長に関するエピソードや、そのときの気持ち、そしてそれが今にどう繋がっているのか…など、かなり込み入った話をしているためここには書きませんが、実はみなさん共通する経験が多くあったのです。
こうした対話のなかで、彼らの表面上の悩みは「自分に合うサイズの服がないこと」かもしれないけど、深掘りすると本質的には別のところに課題があるのでは、と仮説を立てられるレベルになってきました。例えば、
かっこいいと思われたい！
自分に自信を持ちたい！
お洒落を楽しみたい！
モテたい！
（※あくまで例です）
のように、「〜〜したい！」という欲望があって、でもこの欲望を満たせない、という現状とのギャップが生じていたのです。
calmのお洋服は、このギャップを解消する手段の一つではあるものの、calmのお洋服だけですべてのギャップは埋まらない。つまり、「〜〜したい」という欲望を完全に満たすことはできないということが、お洋服を売りながらも心の中での葛藤がありました。
模索の半年間
なので、クラウドファンディングが終わってから半年間は、ホームページこそ作ったものの、Sサイズ男性のために何をすればよいのか、洋服以外の解決策は何かないのか、模索の日々でした。
いろいろな人にお願いして、calmの現状と課題をお話しさせていただいたり、プログラミングスクールに通って他の切り口での解決方法はないか考えたり、Twitterで出会った方と直接会って情報交換をしたり、お洋服作りとは一旦距離を置いて、”考える期間”としました。
プライベートでも長く住んだ東京から福岡に引っ越すことになり、小休止と変化が一気に交わる半年間でした。
私が目指すSサイズ男性のためのこれから
そして今は…と言うと、いろいろと悩みもがきながらも少しずつ自分の思考が整理されてきています。
半年間模索し考えた結果、やっぱり「自分の体型に合うサイズの洋服がなかなか見つからない」というお悩みは表面化しているんですよね。これはゆるがない事実です。なのでまずは、これに対する解決策としてcalmの既存アイテムの改良改善、そしてさらなるアイテム数の増加をしていきます。
でも、もっともっとcalmのユーザーさんの声を反映させたい。だから、次のアイテムはcalmのユーザーさんにも開発に携わってもらえるような、そんな企画を立てているところです。calmユーザーのみなさん、楽しみに待っていてくださいね！
それと同時に、Sサイズ男性の「〜〜したい！」を実現できるような新プロジェクトを計画しています。calmのお洋服だけでは体験できない、感動体験をしていただくプロジェクトで、まさにSサイズ男性の、Sサイズ男性による、Sサイズ男性のためのプロジェクトになる予定です。このプロジェクトによって、
Sサイズ男性ってかっこいいよね
Sサイズ男性って羨ましいな
Sサイズ男性ってお洒落で素敵！
世間がSサイズ男性に抱くイメージが、こんな風に変わることを目指しています。
でもこれはSサイズ男性だけとは思っていなくて、すべての人が生まれ持った体格にとらわれず、なりたい自分を目指す権利がある、ということを当たり前に思える世の中にしたい、それが今の私の気持ちです。
長くなってしまいましたが、センシティブな内容にもかかわらず、ここまで読んでいただきありがとうございました。
calmユーザーのみなさん、またこれを機にcalmを知ってくださったSサイズ男性のみなさんにおかれましては、「Sサイズ」と連呼されたり、ネガティブな表現もあったかと思いますので、少し嫌な気持ちになられたかもしれません。。どのような表現で伝えるのがわかりやすく、かつ的確なのか、まだ試行錯誤しているところです。不快な表現がありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。
また、私の想いに賛同していただける方、よかったらご家族やご友人にcalmのことをお話してみてくれませんか？Sサイズ男性じゃなくてもいいです。私が実現したいのは、「Sサイズ男性ってかっこい！羨ましい！」そんな風に思ってもらえることなので^^
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