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アメリカ的 公共(市民)施設

 アメリカニューヨーク市の中心部にNew York Public Libraryという名称の図書館がある。
本館のみ五番街の中心部にあり、市内に合計92の図書館を構えている。
Publicは直訳すると「公共」になる為、日本語の意味から公営と捉えがちだが、アメリカでは「市民」という意味となるため、実際は公営ではない。NPO法人が運営するこの図書館は1911年に創設された歴史のある図書館である。
年間来場者数は23万人年間貸出数は2380万点となる。蔵書数は1000万点と日本の国会図書館とほぼ同数である。
予算470億円のうち、50%が市の公的資金、22億円が州から出ており、残る約46%が寄付金から成り立っている。
この図書館の大きな特徴は、「ただの書庫」ではないという運営側のスタンスにある。
例えば館内で働く「司書」は常時来場する人々からの様々な要求に対して資料の検索やアドバイスを受けるスキルを保有する。
また、毎日のように各所で様々な講座が開かれている。「利己的な遺伝子」で知られるリチャードドーキンスなどの著名人の講演、ビジネス講座、移民に対する語学講習など多岐に渡った民間に向けたサービスを無料で受ける事ができる。専用端末からは国内外の金融に関わる情報をいち早く得ることが出来、個人投資家などが毎日のように通うという。
これらの運営資金の調達の為の趣向を凝らしたイベントや晩餐会を催し、企業や資産家、篤志家などを招待し、寄付金を募る努力も怠らない。
このように図書館が市民の「ハブ」となり、利用者は極力低費用又は無料で活用することができるその先には、アメリカの経済や未来を形成する一助として還元されるという思想が基盤としてあるという事が、大きなコンセプトにある。図書館から「知」を得る事は人の成長に繋がり、ひいては周辺もしくは地域、国の成長に繋がるという発想は、多くの人種を抱えるアメリカならではの公平な「公的思想」であり、民主主義下の「公」とは何であるかを考えることが出来る、最たるモデルではないかと筆者は考える。
果たして、筆者の在籍する日本において「公」とは何であろうか。歴史も文化も異なる国の事例ではあるが、今後ダイバシティや国際化を迫られているこの国での大きなヒントとなるのではないだろうかと筆者は大いに期待している。

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