遠い昔 ことばがなかったころの〈5〉
じっと待っています。
雪がとけるまで。
どんなに長く生きてきても、
昨日、頭の上に積もった雪を
どかすことはできないのです、
わたくしは。
この雪は、
溶けるまで、
このままです。
うさぎさん、
今日は雪道でしたでしょうに、
あの角曲がって来てくださって、
ありがとう。
君は雪の上に、
足跡をつけられます。
がにまた、うちまた、
けんけんぱっと。
わたくしは、
ただ、
じっと待っております。
この雪が
とけるのを。
今は、
そうすることしか
できない時だから。
けれど、
そうして、
雪が、
とけていきます。
すると、
ある日、
風が変わります。
わたくしは、
そういうもの達と、
そういう時達と、
暮らしております。
石より
風は
うまれていく気配を
まとって
土は
ほのかに
ゆるむ
細胞の
はじける 音
おぼえていたようで
あたらしい 大気
今 うまれた
わたしの細胞も
はるの一員に
ちがいない
………………………………
こちらの絵の原画を、
詩と共に、お届けいたします。
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