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ととにぽてぃかんそくじょ〈3〉

風の中に
かすかに

ととにぽてぃかんそくじょ
アンテナ うごかします
ギーッコ ギーッコ

……………………………

「蝶が、今、
ひら ひら と。

そんなことを
見ていても、
何かが進むわけでも、
ない、って。
………?

あちらを見ると、
キラキラと輝いている方がいて、
こちらを見ると、
ぐんぐん進んでいる方がいて、
自分が寂しくなります。
自分が苦しくなります。
いつも、いつも、
ずっと、ずっと、
何かが、
胸につかえていて、
うまく進めないのです。

たぶんそれが、
何なのか、
9割くらいはわかっていて、
それを「こうするといいよ」って
言われるだろうな、
ということも9割くらい、
わかっていて、
それをどうしたらいいかは、
5割くらい、
どうしたらいいかわからないのも、
5割くらい、
わかっているのです。

5割の何かと
5割のわたしとが

10割の大きさで、
胸につかえたまま、
いるのです。

そんな時なのに、ふいに、
蝶の気配を、
感じたのです。

今、ふいに、
ふわりと…

今、何を、
わたしは、
思っているのだろう?

あっ、蝶だ。

今、あの蝶は

ふわりと

その羽は

何を
………。

「そんなこと?」「だから何?」

そんなこと、
思ってる場合じゃない、
のでしょうね。
進まなくちゃ」

……………………………


風の中に
かすかに

ととにぽてぃかんそくじょ
アンテナが、拾います。
「そんなこと?」

古風な観測所は、見つけたことを、
紙にかきます。
今回の記録係は、
うさぎのにこ観測員です。


絵はがき〈2013年7月〉
©️Mifu Sato

からだひとつに
生きていくすべては
きちんとおさまって

やがて
土にかえる

その時まで

わたしのからだは
そよめく風に
ふわりと浮かぶ



心につかえたもの。
ことばにならないもの。
それは、ひょっとしたら、
ことばにしないもの。

ことばにした途端に、
否定されそうで…
ことばにした途端に、
薄っぺらくなりそうで…
胸に抱えておきます。

薄っぺらにしたくない大事な思い。
それを自分が持っていることを、
知っているがために、
心にいつも何かが、つかえて…
進めない、進んでいない、
ような気がしてしまいます。

本当に進んでないんだろうか?
みんなの言う「進んでる」って、
何だろうか?

「あっ、蝶が、今…」

心に何かつかえた最中に、
それどころじゃない、はずの自分が、
蝶の気配を感じること。

「そんなこと?」って蹴られてしまう、
その「そんなこと」の中に、
ことばにしないものが、
薄っぺらにしたくない自分が、
共に生き、共に進んでいる、としたら…

そこにいる蝶も、
あなたが見つけたおかげで、
存在価値があって、
あなたも蝶に気が付けるおかげで、
生きていけるのだ、としたら…

寂しさの中にあって、
苦しみの中にあって、
ふいに蝶の気配を感じる。
ふいに花咲く木の前で、足を止めてしまう。
「そんなこと」

誰かと比べようのない、
貴重な「そんなこと」

ととにぽてぃかんそくじょ、
大きな声では言えません。
観測員たちは、
「そんなこと?」
「だから何?」って蹴られると
寂しくなるので、
密かに、紙に記録しておきます。
小さな声で「断言」します。

「そんなことが、とてつもなく大事」

あなたのからだにも、
蝶のからだにも、
生きるための感性が、
きちんとおさまっていて、
生き「続けて」いる。
それが最後まで、あなたを
支え「続けて」くれる。
生き進むためのものを、
持って。
きっと。

……………………………


「蝶は、苦手で…」
誰しも苦手なものが何かしら…。
蝶でなくても、何か、
自分が大変な時、ふいに、
心を移せる、心がふわりと軽やかになるもの。
心をやわらかく戻してくれるもの。
「そんなこと」

かんそくじょの雑用担当の、
さとナンチャラという私は、
noteを始めてから、
あっ、蝶が…そんな感覚で、
たくさんの素敵な記事に出会いました。
今も毎日出会います。
どこかの誰かの記事に日々綴られてゆく
発見、観察、そして思い。
エッセイ、小説、マンガに俳句、短歌に詩、
映画評、書評、日記やつぶやき、
絵に写真に造形、そして料理に…本当にさまざま。
私の身ひとつでは体験、発見しきれないものや思いが、
noteの中に来るとあります。
蝶を見つけた時のように、ふわりと心動く、
そんなことに出会います。

大変な毎日…それでも、その中でも、
心動く何かを、蹴らずに、大事にしている
皆様の記事に助けられます。
いつも大事な思いを書いてくださって、
本当にありがとうございます。

……………………………


この先は、
かんそくじょの仲間たちと選んだ、
【蝶のいる絵はがきと詩】を紹介いたします。

今までも蝶の登場する絵はがきと詩を、
いくつか載せてきましたが、
今回は、昨年9月に出した
絵本詩集『かぜのえはがき』からも、
蝶のいる絵はがきと詩を抜き出してみました。
本を購入してくださった方々がいらっしゃいますため、
この先は有料記事とさせていただきますこと、
ご承諾いただけますと、幸いです。

『かぜのえはがき』には載っていない
絵と詩もありますが、
ここまででも、もちろん大丈夫です。
お時間作ってここまで読んでくださって、
本当にありがとうございます。
いつも読んでくださる皆様も、
初めて見つけて読んでくださった皆様も、
本当にありがとうございます。

……………………………

絵も詩も、無くても生きていける
「そんなこと」です。
でもいつか、
絵も詩も、ご飯を食べるのと同じように、
たくさんの人達の暮らしの中にいるようになって、
日々の中で、自分のために当たり前に詩を使う。
そんな風に…
今日の栄養補給に詩を。ちょっとスパイスや彩に。
ある時は、お薬のように。
そんな風に…
こんな時、こんな自分に、
この詩がいいです。
そんな風に…
なったらいいなぁと、
かんそくじょの仲間たちは
思っているところです。

……………………………


ととにぽてぃかんそくじょ
アンテナ うごかします
ギーッコ ギーッコ

絵本詩集『かぜのえはがき』より
絵はがき〈2022年8月〉
©️Mifu Sato

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