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ある日の あの日〈4〉

ほっとしたい…。
頭が…
がやがやわらわら…
ぎそぎそもやもや…


紅茶、飲もう。
紅茶、淹れよう。
そうしよう。

………………………………

ある日の仕事帰り。
いつものように、
西武池袋線に乗った。
途中、
頭のてっぺんから、
足の先っぽへ、
私の何かが、
ざあぁーっと、
流れ落ちた。
今のは?なんだ?
そう思って、
電車の窓にうつる
自分の顔を見た。

何も変わっていなかった。

けれど、
私は29年分のかぶり物を、
今、流した。
流し落とした。
と、気が付いた。

(後で、
まだずっとこの先も、
かぶり物をかぶる時が、
たくさんあるんだと、
気が付いたけれど)

ある日のあの日、
私は、自分が、
ほっとするための手段を、
探し当てられることに、
ようやく気が付いた。

………………………………

仕事でも淹れていた、
けれど、
仕事でなくなった今も、
紅茶、飲もう。
紅茶、淹れよう。
そうしよう。
と、思う自分がいるなら…

………………………………

いつでも
ずっと
きっと
わたしをあたためるだろう

………………………………

たぶん、なんとか
生きていけそうだ。

絵はがき〈2015年11月〉

あの日の空は
今日のためにあったのだと
気が付いた日

金色の香りが
わたしを包んでいた

今日の空は
たしかにやってくる
いつかのためにあったのだと
気が付いた日

金色の時が
わたしに流れていた

カップの中
紅茶が金色に
ゆらめいている

いつでも
ずっと
きっと
わたしをあたためるだろう

金色のひととき

(絵はがきと詩は、2015年11月にかいたものです)

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