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白黒はちわれのハルという猫

ハルという猫のことを書いてみたい。

ハルという猫は、短毛で、鼻すじから胸、足にかけては白くてふわふわしているが、それ以外は黒くてツヤりとした毛色をしている。猫好き界隈の表現をすると「白黒ハチワレ」というやつだ。
目はキョトンとしたまんまるであることが多いが、カメラが嫌いで私がカメラやスマホを向けると下半月の目になり耳を伏せて「いやなんだけど」という顔をする。この耳を伏せることを猫好き界隈の一部では「イカ耳」という。
そして外見で忘れてはいけないのは、鼻はピンク地の黒ブチで、口もとは顎ヒゲのような黒ブチがあり、一見すると「ぽかん」と口を開けているように見えておもしろいところと、見事なくねくねのカギしっぽであるところだ。


ハルとは保護猫の譲渡会で出会った。ちなみにもう一匹の飼い猫リュウも同じ譲渡会で出会っている。
二匹とも、最後に残っていた売れ残りである(この場合猫を売っているわけではないのでこの表現は語弊がある)。ハルは兄弟猫が他に2匹同じケージにいたが、その2匹はすでに里親候補が決まっていた。かわいらしい女の子の黒猫とハチワレの2匹だったように思う。
その時のハルは、はっきり言って今よりもおとぼけ顔で、体に対して頭が大きく、しっぽもグネグネで、関西弁でいうところの「シュッとしてない」猫だった。

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ペットショップではなく、譲渡会で保護猫を譲り受けようという猫好きからさらに一歩踏み込んだ猫好きが訪れるこの界隈であっても人気の毛色というのがある。黒猫よりも白か淡いパステル色、ブチ柄よりもアメリカンショートヘアーのような縞々柄、男の子より女の子、カギしっぽよりもシュッとしたストレートしっぽ、鼻はピンク一色で、肉球もピンク。そんな猫が好まれるらしい。
そのどれにも当てはまらない猫。それがハル。逆に愛らしい。
といっても、私は黒猫リュウのほうは抱き上げた瞬間に「この子にします」と即決したものの、ハルのほうは「どうしようかな、また出直してもいいかな」とまで逡巡していた。というのも、私もやはりこんな毛色がいいなというイメージがあり、憧れがあった。それは幼少期に好きだったホワッツマイケルの茶トラで、猫鍋で有名になったエレファントさんちのニャンゴローのような茶トラのハチワレ。そんな猫がいたらいいなとふんわり考えていた。

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茶トラかわいい。
いやいや、白黒ハチワレも実は好きで、元祖保護猫出身アイドル猫ともいえる神戸のはちわれ猫はっちゃんは、カレンダーを毎年のように買うほどファンだった。今でもはっちゃん好きだよ。猫の星で元気にしてるかな?


一緒に譲渡会に来ていた夫に相談した。ハルは譲渡会スタッフの手によって夫に抱かれていた。
「どうする?」
この場合のどうする?はこの子にする?出直す?という意味だ。
「どうするったって、抱っこしたらもう別の子にはできん。」
夫はそう言った。縁を感じると無闇に切れない男である。ハルはリュウと一緒にうちにトライアルにくることになった。


そんなこともあり、夫に対して恩を感じているのか、単に相性がいいだけなのかはわからないが、ハルは私よりも夫のほうに懐いている。夫が立ち上がるとハルもどこからかトットコやってきてすねをこする。こする。こすりつづける。夫が歩くとしっぽはツビビと立ち上がり追いかけ、夫が抱き上げるとヒゲを前に広げて「たのしいー」の顔をする。愛情が鼻の先からしっぽの先までたっぷりあふれている。
夫に対しては特別あふれているが、私や幼児の長女にも愛情を欠かさない。相棒のリュウの枕にもなってあげる。情の深い猫。それがハル。

譲渡会で売れ残っていた猫。
いまではうちに欠かせない存在の一匹だ。

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