宇宙に羽ばたけ美 少年〜Cosmic Melodyに未来を見た
2021年03月04日付で「音楽文」に掲載された文章の再掲です。
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わたしは音楽が好きだ。
中でも特に大切にしている曲というのがいくつかあって、たとえば、Believe Your Smile(V6)、言葉より大切なもの(嵐)、Hello Goodbye(相葉雅紀)、アイスクリーム シンドローム(スキマスイッチ)がそうだ。
浮き足立っているとき。イライラしているとき。疲れてしまったとき。心に優しさが欲しいとき。すべて忘れてしまいたいとき。
そのときの気分で選んだ一曲をひたすらリピートしていると、すーっと爽やかな風が吹き抜けたり、やわらかな温もりにほっとしたり、気づけば心は穏やかになっている。どんな自分も受け止めてくれる万能薬プレイリスト。
昨年ここに新たに加わったのが、美 少年が歌う「Cosmic Melody」だ。
「美 少年」は、その名に全く見劣りしないルックスを備えた、ジャニーズJr.内の6人組グループである。
21年前からジャニーズといえば嵐ばかり追いかけてきたわたしは、ジャニーズはデビューしてこそテレビやコンサートで活躍の場が得られるのだと思っていたが、美 少年はデビュー前にもかかわらずドラマ「真夏の少年」でメンバー6人で主演を務め、その初々しさ、まっすぐさ、ひたむきさをもって、日常に疲れたアラサー女性の心を奪った。
ステイホームで時間を持て余していた8月4週目の土曜日、美 少年が出演する配信ライブ(Summer Paradise 2020)があるというので軽い気持ちでチケットを買ってみた。案の定、ドラマとは違う「本業=アイドル」な姿に、完全に落ちた。
デビュー前の彼らが歌番組やコンサートでパフォーマンスするときには先輩の曲をカバーすることが多い。言わずもがな名曲ばかりなのだが、真似っこするだけじゃなくてちゃんと「美 少年らしさ」がわかる。自分たちが輝く魅せ方で、6人のチームワークで、ステージを作っているようだった。めくるめくキラキラの連続に、嵐のパフォーマンスを観ているときみたいに心の底からわくわくした。(後に知ったが、メンバーの多くが嵐に憧れているらしい。一気に親近感が湧いた。)例年以上に長く退屈だった2020年の夏が、にわかに華やいだ瞬間だった。
彼らが歌うのはカバー曲だけではない。ジャニーズJr.はグループごとにオリジナル曲を持っていて、美 少年も自分たちの曲を数曲持っている。
その中のひとつ「Cosmic Melody」(通称「コズメロ」)は、このグループをそのまま表したような王道アイドルソングだ。
わたしの万能薬プレイリストを見てお察しの方もいらっしゃるかもしれないが、最初に挙げた4曲はいずれもどこか切なさが漂う曲ばかりである。心に寄り添いながら、そっと包み込んで癒してくれるような曲たち。
それに対してコズメロは、切なさが全くないわけではないが、キラキラを振り撒きながら駆け抜ける、聴いているこちらも踊りたくなるような曲だ。大丈夫!大丈夫!と強く手を引いて、新しい世界へ誘ってくれる。
星が流れるようなイントロ。
遠くに響く鐘の音。
キャッチーなメロディー。
しっかり刻み続けるマーチのようなリズム。
そこに乗せられた歌詞は、まるでステージの上で輝く美 少年のように希望に満ちあふれていた。
"Let's go the party 踊れ 光を胸に
彗星をなびかせ
奇跡的な愛打ち上げて 見上げてゆく
The party 揺らせ 体を預け
歓声の果てまで
My honey 続け 生まれた世界
手を挙げて yeah yeah yeah yeah
Cosmic Melody"
曲も歌詞も全てが純粋で前向きで、両手で彗星をなびかせたりミラーボールみたいにくるくる回る振付も妙に健気で微笑ましい。
初めて聴いたはずなのに、なぜだかずっとこの曲と生きてきたみたいに懐かしくて心が弾む。わたしの耳はやっぱりジャニーズの音楽に育てられたんだなーと再認識した。
美 少年が憧れる嵐は、デビュー当時から事あるごとに冗談まじりで「世界中に嵐を巻き起こしたい」と口にしていた。最初は、そんなことできるの?(というか、嵐を巻き起こすって何?)と思っていたのだが、20年経ってみたら本当に世界へその名を轟かす活躍ぶり。こんな伏線回収あるのかと感動したことも記憶に新しい。
コズメロを聴いていると、美 少年はもはや地球にとどまらず、宇宙にまで歌声を響かそうとしているのではないかという気さえしてくる。だって2番のAメロなんて、
"一つ 二つ 三つ 四つ 五つ 「はいっ」六つ
並んだ星たちは ぺぺぽぷぱぴぷぴ"
これはもう完全に宇宙に向けて歌っている。今は"ぺぺぽぷぱぴぷぴ"ってなんのこっちゃ意味がわからないのだけど(このパートを振り付きで歌う金指くんがひたすらにかわいいことだけはわかる)、もしかすると20年後ぐらいにはこの曲が宇宙の果てまで響いて、この言語が通じる誰かに届いているんじゃないかと、心のどこかで期待してしまう。
夢みたいな話なのに、ひょっとしたらと思えてしまうのは、彼らがまだ17〜20歳で、これから何にだってなれる無限の可能性を感じるからかもしれない。
"全てうまくいくさ俺たち
飛び跳ねろ Wow wow wow"
2番のサビを聴いたとき、6人一緒ならどこまでだって行けると信じて疑わない無敵感がうらやましくて、ちょっと泣いた。
でも、後に続く歌詞に、無敵なのはただ若いからというわけではなく、アイドルとして輝くために必死に努力し続けているからなのだと気付かされる。
"目の前の今日は もう二度とは来ない
現実の先へ We can make it
過去と未来 未知の世界
奏でる My brand new song"
とあるドキュメンタリー番組で、「美 少年らしさって何だろう」と考え込むメンバーの姿を見た。たしかに、バンドとかローラースケートみたいなわかりやすい特徴があるグループではない。けれど、偉大な先輩方の背中を間近で見て、あるいはファンとしての目線で見て、憧れると同時にアイドルとしてのあり方やファンに喜んでもらうための振る舞いを学んでいる彼らは、歌もダンスも演技もアクロバットも、何に対しても一生懸命だ。とことんアイドルであろうとする姿勢こそが美 少年の魅力だとわたしは思う。
彼らを知ってからまだ半年しか経っていないのに、それでもはっきりとわかるくらいに美 少年は進化し続けている。毎日やってくる"目の前の今日"を努力に費やしているということが、パフォーマンスに現れている。
そんなアイドルを眺めているわたしは、"目の前の今日"に追われてばかりになってはいないだろうか?わたしらしさって何だろう?アイドルがファンを思ってくれるようにわたしも誰かのためを思えたら、まだ頑張れるかな。そんなことを考えながら、何度もこの歌詞を聴いてしまうのだ。
"Let's go the party 空に輝いている
星座を繋げて
幾千の日々 時間を超えて 奏でてゆく
The party 届け まだ見ぬ明日へ
この宇宙の果てまで
Just sing it 歌え 思いのままに
手を挙げて yeah yeah yeah yeah
Cosmic Melody"
6人で向かい合って誓いを立てるように歌う姿を見ると、すごく頼もしくて、ついていかなくちゃ!という気持ちになる。目まぐるしい進化を見逃したくなくて、もう一瞬も目を離せなくなってしまった。
この曲を聴くと、美 少年を観ていると、心がちゃんと前を向ける。日常に一喜一憂している場合じゃない。わたしも彼らと一緒に未来へ生きていくんだ。
時間も空間も超えて愛されるグループになってくれたら、ファンとしてはそれがいちばん嬉しい。どこまでもアイドルな彼らならきっと叶えてくれると信じて。わたしはまたコズメロを聴きながら、今日という日を積み重ねている。