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親に呪われた女の子とみんなのリーダーになった男の子の話 女性性と男性性融合のお話2

親に呪われた女の子の話


賢くて繊細でものがわかりすぎる女の子は親と喧嘩をしています。

女の子は親が求めるよい娘像に納得がいきません。よい娘とは親に認められるような生き方をするべきで、口答えせず、自分の意見を言わず、森を彷徨うことも、色鮮やかな格好も、才気走った発言もしてはいけません。その上、女は男の気に入るように愚かでか弱く従順に振る舞わなくてはいけないのだと言うのです。

「親の言うことが聞けないのならば、お前は駄目な娘だ。呪われるだろう!」

「呪われる?」

女の子は聞き返します。

「そうだ、呪われる! お前はきっと誰にも愛されないだろう。子をなさないだろう」

女の子の父は言いました。女の子の母は恐慌状態で叫びました。

「我が家の恥となる! 結婚できず子もなさない娘なんて、世間に顔向けできないわ! 良い子だからお母さんの言う通りになさい」

女の子は冷たい眼差しで両親を眺めます。この人たちにとって、他人に愛されることや結婚や子どもを持つことが人生の一大事のようだけど、私は違う、と思いました。

私は私の使命を知っている、それは星や大地や水や動植物と話して得たその知恵を大切な人に伝えることだ、女の子は心の中で呟きます。決して結婚して男に気に入られ子どもを産むことが使命ではありません。

「お父さんのいうことが聞けないならば出ていきなさい!」

「お父さんに謝るのよ、お母さんも一緒に謝ってあげるから」

舞台役者のように大仰な表情をした両親を見て、女の子はこの人たちは私の話を聞く気もないし、私自身を見てもいないのだなと思いました。親になるのが義務だからと子を持って、自分の子だからと自動的に愛すことにしているだけです。個人としての女の子を理解し愛する気は、はじめから無いのです。

女の子は両親に背をむけ、家を出て行きました。わずかばかりの宝物と食べ物と水筒とナイフと火打ち石と毛布を背負い女の子は森へ向かって歩き出しました。



○ みんなのリーダーになった男の子の話


勇気があって純粋な男の子はみんなの期待に応えて街のリーダーになりました。

みんなの頼まれごとに応え、みんなが楽しめるお祭りを企画し、みんなの困ったことを解決します。

みんな口々に男の子がいてくれて良かった、君は本当に素晴らしいリーダーだ!と褒めそやします。男の子はみんなに笑顔で「ありがとう」と応えます。街のみんなはいろんな感謝の贈り物を男の子に渡します。子どもたちも老人も女も男もみんな男の子と一緒にいたがります。男の子は時間が許す限り、みんなと一緒に過ごしました。

ですが男の子は1人になると暗い顔で膝を抱えます。


「みんなが喜んでくれているけれど、僕は楽しくない。僕は性格が悪いのかな?」

窓の外には銀色に輝く月が光っています。月を眺める男の子の瞳から涙があふれました。

「みんなから必要とされてる。街で選ばれたリーダーになった。豊かだし、健康だし、裕福だ。頭だって賢い。友だちにも家族にも恵まれている。でも僕は不幸せだ」

男の子の瞳から次から次へと涙がこぼれます。

「僕は恵まれてるのに、なんでこんなに虚しいんだろう。やるべきことが他にある気がする。会うべき人が他にいる気がする。でも僕はリーダーでリーダーとしての責任は果たしてるし、リーダーとして会うべき人には会っている」


男の子は泣きながら眠りにつきました。銀色の月が涙の跡が残る男の子の顔を照らします。月光の下で男の子は深く深く眠り、悲しみを忘れていきました。

続く。

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