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父と娘の珍介護道中(日記的エッセイ2010〜2022) 時々、母のこと、故郷のこと、自分のこと EP31

エピソード31
転倒続きで日にちの感覚があやしくなる

2021-01-03

2日は例年通り大磯の実家へ父が里帰り。
ここ数年なにかと淡白になっていた父でしたが、今年は帰りたい気満々だったので、本人も我々家族もケアハウスも、コロナの現状を鑑みつつ、
家族全員の体調管理はもちろん、手指消毒、マスク、取り箸、換気、と、
細心、最善の注意を払って決行。
お迎えは弟が担当してくれたので、私は大磯の六所神社、高麗神社、お墓お参りをして合流。

「煮染め作ったの? 」と初めてのことのように驚く父。
「そうだよ。今年もお父さんに喜んでもらおうと思って」、「そう。美味しいね~」、「ああ、よかった。ありがとうございます」というやりとりもあれば、
お正月にこれは食べたいだろうと作った数の子には、「これは歯に入っちゃう」と顔をしかめる。
ま、確かにそうだけど。正月の一品というだけで、毎年そう食べたくもなかったのかもなと今更ながらに思ったり。

孫娘に優しくされて、とても安心したうれしそうな表情を見せる父。
滞在時間2時間半ほどでしたが、ケアハウスに送って行くときに「ウチはまとまってるほうだね」としみじみ言う。
「頑張ってるお父さんがいるからだよ」と応えました。
去年に比べるとガクッと脚力が弱り、移動はなかなかに大変でしたが、里帰りできてよかった。

別れ際、「コロナがあるからしばらく来なくていいんじゃないか」と。
来て欲しがりの父にも、それくらい深刻さがしみてるんだなと思いました。
本当にみんなが笑顔になれる日が早く来てほしい。

2021-01-15

久々東名ぶっ飛ばしーので父の元へ。
今回は、緊急事態宣言が出てすぐ、ケアハウスからできるだけ面会を控えてほしいとの連絡があった。
ただ、絶対ダメじゃなく、必要があれば事前連絡で対応するとのこと。
もちろん、体調管理はマスト。

お正月、「コロナが怖いからしばらく来なくていいんじゃないか」と言っていた父だけど、たぶん、また忘れちゃってるから、一度は行って、しばらく来れないことを伝えないとと思ってた。
じゃないと、「どうして来ないんだろう」と不安で孤独のクレイマーになりがち。

あと、日記用週間カレンダー(転倒が続いてベッドで過ごすことが多くなり、日記を書かなくなったとき、「今日は何日?」と聞いても、あの超几帳面な父が、いい加減にカレンダーを見て、いい加減な日にちを答えるのにびっくりして、ベッドでもメモ程度でも書けるような週間カレンダーを手作りした。1行でもそれを書くことで日にちの感覚を取り戻してくれればと)が、もうあと1週間ほどでなくなってしまうので、続きを届けたかった。あ、マスクもね。
なのでスタッフさんにはお手数をおかけしちゃうけど、事前連絡して1階の相談室で面会することに。

車椅子を押してもらって来た父と、アクリル板越しにほんの数分面会。
「お父さん、元気?」、「元気だよ」、「よかった。こんな世の中になっちゃったから、しばらくまた頻繁には来られないけど、お互いちょっと我慢して頑張りましょうね」、「そうだなぁ。頑張らないと。そうだ、美保ちゃんに渡すものがあるから、ちょっと部屋に来てくれる?」、「だから~」と、ここで振り出しに。
「コロナが怖いからね」と言いながら、実感としてどこまでわかってるんだかわかってないんだかよくわかりまへ~ん。

兎にも角にも、元気でいてくれてよかった。ケアハウスも面会謝絶にするより手間もご苦労も多いはず。こういった体制を作っていただけて本当にありがたいです。

2021-02-05

3週間ぶりに父に会いに。
もちろん今は、要予約制で、相談室でアクリル板越しの面会。
春一番のおかげか、今日は空気が澄んでいて、行く道すがら相模川の銀河大橋から見えた富士山が見事。
運転しながらスマホ操る技術がないので(てかiPad miniなのでどだい無理だけど)、心のシャッター切りました~。
父のケアハウスの6階のレストランからも真正面に富士山が見えるので、まず「今日は富士山きれいだね」で晴々と盛り上がれてよかった。

父曰く、ご飯はお通じとの相談でちゃんと食べられているけど、レストランもアクリル板で仕切られているから、会話もよくできず、つまらない。
嫌な世の中になったもんだという。
「ホントにそう。つまらないよねぇ」と私も激しく同調。
ほんの10分だけど、日々の様子(スタッフさんの努力)がわかって安心しました。

2021-04-02

2週間ぶりの父の面会。いやー、今日は会うなり激おこで参りました〜。
突拍子もなく「18日だと思い込んでいたから」と苛々というのだけど、前回私は3/19に来ていて、それ以来だから、何をどう勘違いしているのか謎だらけ。
「お父さん、何か勘違いしてるよ」と言っても、「もういい! 今日は具合が悪い」と忌々しげ。完全に笑顔が消えてしまっる。
以前だったら「何言ってるの?」と派手に喧嘩もできたけど、人と話してないと日にちの認識とかも薄くなると察せられて、悲しい哉喧嘩もできず、ただ動揺。
こういうときは深呼吸じゃ。

話すうちどうしても必要なものが出てきたので、スタッフさんの許しを得て私も父の部屋へ。
車椅子を押しながら、「今日は具合が悪いんだね。あれもダメこれもダメって言われてやんなっちゃうよね」、「うん。解除されたのになぁ」、「そうだ。高校野球見た?」、「見た」、「東海大相模勝ってよかったね」、「そう。よかった」などと話すうち、父は少し気が紛れたよう。
私も平常心を取り戻せました。
やっぱ言葉を交わすって、その声のトーンも含めて大事だね。

部屋に入ると、あの几帳面な父とは思えないほど机の上がぐちゃぐちゃ。
日記も3月の頭くらいまでしか書いてない。
たぶん、気力がなくなってしまってるんだね。
整頓して、新しく作ってきた4月からの日記用カレンダーを「使ってね」と置いてきたけど、なんともいえない殺伐とした空気が部屋を支配している感じがして、
胸が痛かった。
お花見にでも連れて行ってあげられたらなぁ、でも、今はどうすることもできないなぁ、などと思い悩みながら車で帰宅したら、なんかドッと疲れてしまった。
ま、こういう日もあるさねぇ。

2021-04-16

毎度2週間ぶりの父の面会。
姪が一緒に行きたいと言ってくれたので、父にとって久しぶりのサプライズ・イベントとなりました。
面会時間は姪がびっくりするほど短かいのだけど、それでもいつもよりは長くて(笑)、父はお正月に会ったばかりのそろそろ三十路も近い孫に、
「大きくなったね~」と言っていつもより滑舌よくたくさんしゃべっていました。嬉しいことがあると、やっぱり脳が活性化するんだね。

「これから一緒にお昼を食べに行くんだ」と言ったら、「じゃあ、お父さんもちょっと出してあげよう」と2千円のカンパまで。ありがたや~。
で、車で二子玉に移動してランチ。
雑談的おしゃべりがいっぱいできて私も楽しかった。こういうの必要だよね。
姪も随分と大人になったもんだ。

2021-04-30

毎度おなじみ父の面会。
先日大磯町役場に、父宛の新型コロナのワクチン接種券を、自宅ではなくケアハウスに送ってほしいとお願いしたところ快諾してくれた。
父にはポストを見るように言ってあって、ケアハウスのスタッフさんの話ではもう届いてるとのことだったが、本人が電話で「まだ来ないんだよ~」という。

あれ? スタッフさんとの話は私の幻か、と思い、役場に問い合わせたらやっぱ送ってくれていて、ケアハウスにも到着を確認してるとのこと。
ありゃ? どゆこと? と思って、再びケアハウスに連絡すると、
やはり接種券は届いてた。
でも、父は、「みほちゃんが役場とやってくれてる戸籍の何かが届かない」と言っているそう。なーる。
接種券がいつの間にか本人の頭の中で「戸籍の何か」にすり替わり(ま、たしかに戸籍ベースだろうが)、しかも接種券が届いたことを忘れている、という二重奏でございました。

今日、父と一緒に現物を見て確認。
で、「私が役場にお願いしたのは、戸籍の何かじゃなくて、このコロナの接種券のことよ」と本人に説明したら、「あ、そうかね」と。
大磯の高齢者の接種は5月の終わりから。
そう伝えると、「ワクチンはいろいろ遅れてるからね~」と急に時事に精通している人に(笑)。

「ケータイはかけられるけど、かかってくるのがどうもおかしい」と言ってた謎も、実際そこでかけてみて判明。
音はちゃんと鳴っているのに、取り方を忘れちゃったんだね~。
というわけで、電話の取り方を何度か練習。
「ああ、こうやるんだね。よかった」と初めてのことのようにいう父。
ま、今日は笑顔になってくれてよかった。
いいお天気。隣接の保育園の建物に、今年も鯉のぼりが悠々と泳いでました。


2021新年里帰り、手作りの週間日記カレンダー、孫が面会に来てくれた


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