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家庭料理のおはなし その5:毎日の料理が楽になる、正しい「手抜き」を支えるもの

こんにちは。正しい手抜きメソッド・おだしマジック! 家庭料理研究家の高窪美穂子です。

この数ヶ月ですっかり変わってしまった世界の状況。
予想だにしなかった状況が訪れ、自宅での時間が圧倒的に増え、それに伴い食事の準備も急激に増加した・・・という方が多かったのではないでしょうか。

かく言う私も、そんな中のひとり。
職業柄、何でもどんとこーい! と言うわけでもなく、料理をすることが好きでも急激な生活の変化にストレスを感じて息切れしたことも。

そんな時には、ロジカルに考えて正しく「手抜き」をして凌ぎましたが、ほとんどの方が「手抜きしたくてもやり方がわからない」というお悩みを持っているようで・・・
そして何より「手抜き」には、とても後ろめたい気持ちを持ってしまうようなのです。

大変だしつらいのに、でもちゃんとしなきゃ! とどうしても思ってしまう。
そんなあなたが楽になるために必要なこと、が今日のおはなしです。

◆ちゃんとルールでがんじがらめ、から、緩める場所を間違えて最悪の体調に

ちゃんとしなくちゃ、ちゃんとしなくちゃ!
私自身も、考えてみると幼い頃から何かにつけて「ちゃんとしなくちゃ」と思っていましたっけ。

ちゃんと着替えなくちゃ!
ちゃんと歯磨きしなくちゃ!
ちゃんと勉強しなくちゃ!
そんなこんなの延長で全てにおいてちゃんとしなくちゃ、と思うようになったのでしょうし、親の方針もあり、長じて家事全般も何もかもとにかく完璧に、完璧に!と思っていました。

ちゃんとルール、とでもいうのでしょうか。
実家で暮らしていた時は当然のこと、やがて独立し一人で暮らしていた時も自分だけの世界で、ちゃんとルールはきっちり守られ、生活ペースも思いのまま。
一緒に暮らす人ができても、ちょっと微調整するだけ。
大人だけの生活なら、ちゃんとルールはまだまだしっかり守れます。

ところが、子どもが生まれた途端、世界は激変しました。
ちゃんとしたくても、どうやってもできないのです。

寝たくても寝られない、料理をしたくてもできない、そして食べたくても食べられない!
子どもが動けるようになると、どんどん増大する子育ての作業量。
仕事復帰もして激務の中、夫婦二人でてんてこ舞いしながら必死で過ごす毎日の中で、ちゃんとルールの取捨選択をしなくちゃならないことになります。

その時点で、一番手取り早くて時間もかからない!ラク!と思い、料理作りを捨ててデリバリー、お惣菜に外食に頼るようになりました。
ところがそんな生活を続けてしばらくすると一気に体調を崩し、アトピーが人生最悪の状態にまでなってしまったのです。

ちゃんとルールの正しいはずし方がわからないままの完全ミス。
それまではデリバリーやお惣菜を食べるにしても、全面的に頼った経験がなかったため、自分の体がまさかそこまで食品添加物などの化学的なものへの耐性がないことを全く理解していなかったのです。

身体は自分が食べるものでできている、ということはわかっていたはずなのに。
父のアレルギー体質を受け継ぎ、小さい頃からアトピーやアレルギーと共存して生きてきましたが、考えてみたら、メインで食べていたのはいつも家庭料理。

外食も高比率ではしていませんでしたし、それまでデリバリーはもちろん、お惣菜類もほとんど食べたことがなかったのです。
まさか、一般的に販売されていて食べられているものでそこまで体調を崩すとは・・・

こうなってしまうと、体調を回復させるためにはなるべく自分で料理を作って食べるしかない!
でも、今までのちゃんとルールを復活させるには、前提条件が全く違います。
本当に本当に悩みました。

体調を良くするために、なるべく自分で作った食事を食べよう。
でも、目のまわりそうな毎日の中で、大人だけの生活だった頃のように、料理に多くの時間を割くことは不可能です。
どうしたらよいかと散々悩んだ末に、いくつかルールを決めました。

◆料理や食事に関するマイルールその1:自宅で作る料理は素材を選び、一切、化学的なものを使わない

それまでも家で作る時は当たり前のようにだしをとり、旨味調味料類は使わず、使ったとしても年1個程度のコンソメキューブのみでしたから、これを機会にすっぱり使わないことに。
調味料類も見直し、自分で調べたり試したりして、昔ながらの製法で信頼できる原材料のみを使った基本調味料を揃え、各国料理を作る場合も調味料類を厳選して使うことにしました。
食材も全て原材料をチェックし、自分にとって食べて良いものかどうか。
試行錯誤しながら知見を重ね、自分の中にある一定の基準値に照らし合わせて選ぶようにしたのです。

その頃の仕事はインターネット編集で、担当していた商材には食品もありました。
そのため仕事上で原稿を書くために調べ物をする必要があり、結果、食に関する莫大な知識を得ることができました。
その知識と照らし合わせながら、まずは買って試してみて自分自身で次も買うかどうかを判断する。
毎日の生活もあるから、まずは身近な店舗で売っているものからはじめ、いろいろなものを試しては取捨選択していきました。

その繰り返しが経験値の蓄積となり、自分が料理するため購入する食材を選ぶ「目利き力」が体系化できたのです。

◆料理や食事に関するマイルールその2:調理はなるべくシンプルに短時間で素材を活かす

素材をきちんと選ぶことができたら、今度は調理です。
毎日の食事作りは、とにかくなるべく手間はかけたくない。
手間をかけない調理というと、電子レンジ調理を思い浮かべる方も多いのですが、私自身の電子レンジデビューが大変遅かったこともあり、冷凍した肉やごはんの解凍に使うことがメイン。
また、いちいちラップに包んで、などの手順を逆に手間に感じてしまうため調理にはほとんど使っていませんでした。
※現在では電子レンジは全く使いません。

なまじ不得意な電子レンジ調理を使うより、慣れ親しんだやり方をよりシンプルに効率的にした方がずっと短時間で料理が済む。
そう思い、料理をするたびに工夫し、よりシンプルで短時間で仕上がり、しかも美味しくできないかと工夫し、この点でもノウハウを積み上げていきました。

◆料理や食事に関するマイルールその3:外食に行くお店では、食品添加物も旨味調味料も一切気にしない!

そして一番重要なのが、この3つ目のルールでした。
仕事も育児も家事もパーフェクトにこなすことが難しかったから、体調を崩すような結果を招いたわけです。
ですから、食事作りに疲れた時は外食で息抜きをすることにして、選んで行ったお店での食事を美味しくいただく、ということに決めました。
添加物や旨味調味料を使わないお料理を出すお店ばかり行けるわけではないので、選んだお店がその時にいちばんいいお店、と考え、外食を楽しむことを第一に。

今、この仕事をしていると色々な方から「外食するんですか?」や「どんなお店に行っているんですか?」などの質問をたくさんいただきます。

もちろん一定の基準はありますが、質問をされる方が想像しているようなお洒落なお店ばかり行くわけありません。居酒屋さんもラーメン屋さんもいきます。
そして、どこでも楽しくお食事をいただきます。

ただし、お食事後に身体が受け付けない状態になる場合もあるので、そうなった場合は、次からはそのお店は選ばない。それだけです。
アナフィラキシーショックを持っていて、何度か危ないことがありましたので。

とはいえ、なかなか「疲れた」の一言が言えず、倒れそうになったことはその後も数知れず。
夫から言い出してくれるまで自分から言えなかったことも多く、その度にダメ出しも心配もされました。
かまって欲しい、見て欲しい、の気持ちもあったと思いますが、それでは決めた意味がない・・・
そうしていろいろ失敗もしましたが、ルールを決めて四捨五入すると20年になった今では、ダメな時はダメ、と言えるようになりました。

◆「本質」がわかることで、正しく「手抜き」できるように

この3つの大枠ルールを決めて日々の食事作りをしていく間に、少しずつ家庭料理の「本質」がわかってきたように思います。

料理を作るのは若い頃から変わらず大好きですが、若い頃の料理作りには「こんな料理ができるなんて凄いね!」と言われたい、という気持ちもどこかでありました。
正直なところ。

でも自分が今、毎日作って食べている家庭料理は、生活の一部である日常の料理。
一緒に生活して、食べてくれる人を支える料理だからこそ、シンプルで毎日食べても飽きない料理であることがいちばん大切であること。

できる時は凝った料理を作るのも素敵だけれども、毎日作る必要はないこと。

素材をきちんと選ぶ目を持てたら、素材の味を生かすシンプルな調理がいちばん!
その方が素材も喜ぶし、作る人も楽で、食べる人も美味しくて、いいことづくめなこと。

つらくなったら、一緒にいる人にちゃんとその気持ちを伝えて一緒に解決策を見つけることが、関わるみんなが楽になる近道なこと。
私の場合、今回の自粛期間中つらくなった時はつらい!とちゃんと伝えて家族に作ってもらったり、一緒に料理したり、好きなお店のテイクアウトや通販で買ったものを食べたり、で息抜きをすることを心がけました。

品数は問題じゃない。
豪華なのが重要じゃない。
何よりも大切なのは、食卓を笑顔で囲めること。

たとえば、その日は疲れて買ってきたお惣菜を食べるとしたら、ちゃんとお皿に盛り付けるだけでいい。
その一手間をかけることだけで、自分にも、一緒に食卓を囲む人にも心を掛けることになり、大切にしているよ、というメッセージが伝わることが何よりも大切なのだ、と思っています。

手抜きをしたいけど、やり方がわからない。どうしていいかわからない。
そんなお声をよく聞きます。

でもね、ちゃんと「本質」が見えるようになると・・・
自分軸で判断して行動できる知識を持って「なんでこうなるのか」という理由がわかるようになると、正しく「手抜き」ができるようになるのです。

それが、家庭料理を作り続けるためにいちばん大切なこと、なんですよ。

家庭料理には、人を支える力があります。
次のコラムもお楽しみに。


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