犬のストレスサインを見つけたら
パピーパーティーのインストラクターとして仕事していたのが12年ほど前になる。
その頃、子犬がブルブルと体を震わせたり、鼻ぺろするたびに、「ほら!これがカーミングシグナルですよ!」と声高らかに参加者に説明していたのを覚えている。
今思えば、「だから何だ」と思う。
いつからか、カーミングシグナルと言うより、ボディーランゲージということが増えたが、当時は、トゥーリッドルーガスさんがカーミングシグナルを発見したというようなことで流行っていた。書籍も出版していて、先ほど調べたら、Amazonで8000円以上の値がついていてびっくりした。
ちなみに、今日はその名前がどうのこうのと言いたいわけではない。ボディーランゲージでも犬語でもカーミングシグナルでもストレスサインでも、言い方はなんでも良いのだけど、
犬が何かを感じた時にする仕草がある。
注目したいのはどちらかというとネガティブな感情をを示すサイン。
あくび・舌ぺろ・鯨目・ウロウロ・片方の前足をあげる・・・
など他にも色々ある。
それらが確認されるのは、ほんの一瞬だったりする。次の瞬間には収まっていたりするから。けれど、慣れれば見つけるのはそんなに難しくない。
今日は、そのサインを見つけたらどうするかに重きを置いて書きたい。
ストレスサインは悪者?
近頃気になるのは、「ストレスサインを出させたらいけない」と思っている人が多いということ。その考えから、「ストレスサインが出ちゃったから失敗、あ〜だめだ、私だめだ、未熟だ・・・」と評価している節がある。
私はその考えは違うと思っている。
ストレスサインは、その状況下で犬がどのように感じているか?を見る情報の一つ。もちろん、終始リラックスしていたり、適度に活動的であれば言うことはないけれど、それって生きていてあり得ることだろうか。
特に犬は人の側で生活している。ご飯も散歩も、ブラッシングや足拭き、その他のケアも基本的には飼い主がやる。散歩ではいろんな出来事に遭遇するだろう。全てにおいてストレスをゼロにすることを目標にすることは現実的ではない。かといって、ストレスかかっても仕方ないよね〜と開き直ることをお勧めしているわけではない。
色々と配慮した上で、犬に何かをしようとした、または、している時に、ストレスサインが見られたら、その時しようとしていたこと、または、していたことを一旦やめてみるとか、やり方を変える。または、他犬や人との関わりの中で見られたなら、その状況から離れるようにするなど、更なる配慮をしましょう、ということを私は言いたい。
テストを採点するように◯✖️をつけるのではなくて、流れの中で見て行きたい。
よろしくない状況になっていることを早く察知して、
それをすぐに修正するように常に考えていたい。
これについて考えるときにいつも思い出すのが、とある演奏家の方との会話。
「プロの方は本番では間違えたりしないんですか?」と私は聞いた(愚問だと思うけど)。その答えは「間違えることありますよ。でも、プロと素人の違いは、いかに早く元の流れに戻せるかです。」だった。
舞台の仕事をしていた時、カラオケ大会で、歌い出しがずれたまま最後まで突っ走るおじいちゃんをよく見たけど、それではいけないということだ。
拍子のずれに気づかないのか戻せないのか・・・。
10年以上前、声高らかに「これがカーミングシグナルです!この子はストレスを感じています!」と参加者に説明していた私に言いたい。
犬のストレスを察知した後に、どうすべきかを一緒に伝えるべきと。
その時どうすべきかを判断するために、ストレスサイン(ボディーランゲージ)を読み取れるようになりましょうね、ということだったのに、ストレスサインを見つけただけで終わっていて、それが正解・不正解の評価を下す答え合わせ的なことになっていたら意味がない。
犬がストレスを感じたその後にすべきことを用意しつつ、観察できるようにしたい。