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(反対討論全文)陳情第16号「流山市幼児教育支援センター付属幼稚園の廃園方針」の見直しを求める陳情書について

本議会で、陳情第16号「流山市幼児教育支援センター付属幼稚園の廃園方針」の見直しを求める陳情書の審議が行われ、採択17:不採択7採択されました。

不採択の7票は流政会のメンバーです。議会では残念ながら一方向の視点からの答弁しかありませんでしたが、今後の方向性を決めるためにも、これまでの経緯やかかる経費、すでに顕在化している課題について、大切な論点を整理するために、独自調査を行った上で、会派の代表、石原修治議員が反対討論をされました。


はじめに

陳情第16号「流山市幼児教育支援センター付属幼稚園の廃園方針」の見直しを求める陳情書について、流政会を代表し、不採択の立場で討論します。

今回、陳情者の方から提起いただいたことで、流山市の幼児教育や就学前後のあるべき姿についての議論への大きな大きな問題提起がなされました。皆様の声を私たち流政会の全議員は、非常に重要なことであると重く受け止めております。声を上げて下さったことに敬意を表しますと共に感謝申し上げます。

そして、流政会としては、陳情項目、
(1)教育委員会議に至るまでの経過及び廃園理由として示された内容の行政の手続き上の瑕疵と政策形成における現状分析の欠如
(2)隣接地に公立保育園があり、市立幼稚園と合わせて、認定こども園化する実現性について
独自調査をおこないました。この調査の結果と考察を交えて討論いたします。

流山市立幼稚園協議会での協議(教育委員会議に至るまでの経過)

まず、教育委員会議に至るまでの経過についてです。
令和5年5月26日に第一回目の流山市立幼稚園協議会が開催され、本市の幼児教育及び幼児教育支援センター付属幼稚園の将来像についての2点を諮問され、月1回のペースで全5回協議が行われました。
協議会の委員は、幼児教育や福祉の専門家、私立・公立幼稚園関係者、特別支援学校の校長、市民委員は4人、海外教育経験者、ベビーシッターや保育士、保護者等、子どもの成長に直接関わる多岐にわたる人々で構成されました。

諮問は特定の方向性を問うというより、今後のありたい姿を問う内容であり、協議会では幼児教育支援センターおよび付属幼稚園の機能強化から廃園に至るまで、多角的な視点からの意見を集約し、答申では様々な可能性を提示する形で議論が進行しました。

流山市幼児教育支援センターは、流山市の幼稚園、保育園、小学校間の連携を強化する中核施設として、幼児教育アドバイザーの配置と部門横断的な組織構築を目指すことで一致見解を得ました。

しかし、付属幼稚園の将来に関しては、存続か廃園かで2つに意見が分かれました。
存続を支持する意見は、流山市特有のインクルーシブ教育を実施する実践的な園にすること、幼稚園、保育園、小学校、放課後児童クラブが隣接する地の利を生かし、認定こども園への転換を含めた新しい方向性での再生を望む声がありました。

一方で、廃園を推奨する意見では、既に保育・教育需要が満たされており、公立施設の維持に多額の税金を投入するよりは私立に委ね、誰もが取り残されない受け入れ体制を私立幼稚園で構築する支援策を設けるべきだとの提案がありました。
第5回目の議事録には、教育委員会が議論を中立的に進めたことが記載されており、提案された様々な可能性を整理する過程での瑕疵はなかったと考えます。

教育委員会会議での審議の妥当性について


しかし、令和5年10月26日に開催された教育委員会会議では、「流山市幼児教育支援センター附属幼稚園の廃園方針」について言及され、協議会の答申を踏まえながらも廃園の時期を確定しました。
この分析では、定員60名の幼稚園が、2018年の47名から2024年には18名へと在籍児童数が減少する見込みであり、これは保育無償化の影響や保護者の選好が保育園に傾いていること、さらに私立幼稚園の充足率が77%でありながらも、バスや給食など保育サービスの提供に工夫を凝らしていることから、付属幼稚園の児童数増加は難しく、廃園が避けられないと判断されました。

陳情項目の1点目の論点は、この判断に瑕疵や現状分析の不在があるかどうかです。

本来、子ども・子育て支援新制度の下で、子ども・子育て支援法第61条に基づき、教育及び保育の「需要予測」、「確保すべきサービス内容」、「実施予定時期」を明記した子ども・子育て支援事業計画の策定が各市町村に求められています。これは、国や県からの補助金を受けるための計画的な行政運営が必要だからです。流山市では、平成22年に17園だった保育園が、令和5年には107園に増加し、13年間で約90園が増設されました。この結果、待機児童問題は解消され、令和元年10月から始まった幼児教育・保育の無償化や保護者のニーズ変化も見られます。

つまり、付属幼稚園の定員割れは、実践が悪いのではなく、過去10年間にわたる保育園数の増加と保育・教育環境や保護者ニーズの変化によるものであり、その影響が大きすぎることが存続が難しいと判断された最大の要因です。

しかし、この影響の大きさが具体的に共有されていないことに対し、流政会は違和感を感じ、独自に調査を行いました。

(独自調査)私立幼稚園と私立保育園の空き状況について

最初に、市が報告する私立幼稚園の充足率77%に関して詳細を知るため、全てではありませんが可能な限り多数の私立幼稚園へのヒアリングを実施しました。その結果、定員を100%満たしている園は少なく、中には充足率が40%以下の園もあり、今後の運営に不安を抱えている園も存在することが明らかになりました。

私立幼稚園はそれぞれの建学の精神に基づき、在籍児童の獲得に向けて様々な努力をしております。こうした児童獲得の努力があっても、尚、充足率が低下傾向にあることは幼稚園協議会でも共有されています。 加えて、私立保育園に関しても空き状況を確認しましたが、以前より明らかに空きが目立つようになっています。

流山市では、待機児童問題への対策として、保育園の整備を進めてきました。この結果、保護者は待機児童の心配をせずに済むようになりましたが、保育事業者には逆に負担をかける結果となり、定員に達しない状態が続くと事業の継続が難しくなります。
需要予測は実態に即したものにしてほしい」という要望は、保育事業者から数年にわたり声が上がっています。 流山市全体として教育・保育の需要を見ると、在園数の増加は今となっては求められていない状況にあると言えます。

(独自調査)認定こども園にかかるお金

さらに、陳情項目2点目や答申に記載された「隣接地に公立保育園があり、市立幼稚園と統合して認定こども園を設置する可能性」については市から答えがなかったため、独自の調査に基づき論じます。

市は「民間にできることは民間に任せる」という方針のもと、保育園の整備を進めてきました。これは、公設と民設の間で大きなコスト差が存在するためです。

公立と私立の差:設置する際の初期費用

まず、公立で認定こども園を設置する際の初期費用についてです。現在の幼児教育支援センター附属幼稚園と江戸川台保育所を合わせた総面積が1,412平方メートルの場合、北海道枝幸町立枝幸認定こども園の例では、総事業費が約10億円で、国の補助を考慮した後、約8億円が自治体の負担になりました。また、定員180名の場合、総事業費が約13億円で、これが全額自治体の負担となる京都府京丹波町立たんばこども園の例もあります。改築の場合でも、新築の約60%のコストがかかるといわれていますが、自治体の負担は高額です。一方で、私立保育園の場合は、設置主体も一部の費用を負担し、国の補助が半分入るため、自治体の実質的な負担は約1/3になります。

公立と私立の差:毎年の運営費

運営費における費用差についてです。定員180名の京都府京丹波町の公立子ども園では、運営費が約2億1435万円かかる一方で、公立施設に対する国の補助はわずか4万円です。これにより、市がほぼ毎年全額を負担することになります。これに対し、私立保育園では、国と県からの補助があるため、実質的な運営費は約1/3ですみます。

さらに、令和元年10月1日から幼児教育および保育の無償化が実施されました。この制度により、3歳から5歳児を対象とした保育園、幼稚園、認定こども園などの保育サービス利用料が無償化され、加えて、住民税非課税世帯の0歳から2歳児も無償化の対象となりました。保護者にとっては経済的負担が軽減される一方で、保育料の補填には税金が使用されるため、特に子どもの数が多い流山市のような自治体においては、税金の支出が増加します。このため、税金の効率的な使用が一層求められる環境です。

繰り返しになりますが、流山市は子ども・子育て支援法第61条に基づき、保育園を含む保育・教育施設の整備を需要と供給に基づいて進めていますが、令和6年度における新たな保育・教育施設の需要は0(ゼロ)です。
幼児教育の無償化によって保育料の補填に税金が用いられること、子どもの数が増加している流山市においても、全国的に待機児童がゼロの状況や、私立幼稚園や保育園での定員割れが顕著になっている中、公立の認定こども園を設置すれば、私立幼稚園・保育園に運営上の圧迫や混乱をもたらす可能性があり、計画的な行政運営の観点からも、国や県からの補助金を受ける現在の制度とは相反する状況にあります。

こうした計画性や財政面について説明されることなく廃園方針が提示されたことは極めて遺憾ですが、市の将来の財政負担に鑑みると、認定こども園化への移行と全市に対応する教育支援センターの機能強化を同時に進めるのは難しいという判断は、ある程度理解でき、瑕疵とまでは言えないと考えます。

公立と私立でかかるお金に差が出るのは国の政策

公立施設に対する国や県からの補助金は期待できません。しかし、これは現在の国の政策の方向性によるもので、すぐに変えることはできません

流山市は、このような制約のもとで、子どもたちの幼少期をどのようにサポートし、将来に向けたビジョンを持ちながら、限られた資源をどのように効果的に利用するかを決定する責任があります。当局の現状分析が不在だったのかどうかまで問えませんが、流政会の調査結果と考察からは、その妥当性についての市民に対する説明が不十分だったと指摘せざるを得ません

特別な支援を必要とする児童に対して

私立幼稚園でも支援が必要な子どもが143人に

協議会では、付属幼稚園が特別な支援を必要とする園児の割合が増え、子どもたちの行き場所として重要な役割を果たしてきたとありました。一方で、議会を通じて、私立幼稚園において支援が必要な子どもが143人に上ることも判明しました。

ワンストップでの相談窓口は、公の機関として設置するべき

保育園では支援を必要とする子どもを受け入れるための要件が設けられていますが、幼稚園にはそのような基準がないため、ミスマッチも発生しやすい状況も推測されます。発達支援が必要な子どもや、異文化背景を持つ子どもなど、特別な配慮が必要な子どもたちに対するワンストップでの相談窓口は、公の機関として設置するべきです。

補足:特別な配慮が必要な子どもが増加しているため相談窓口のコストは大きくなるものと推測。本来は自分の家の近くの園で受け入れてもらえることが理想なので、質の高いワンストップ相談窓口は重要)

また、私立幼稚園への補助的支援や追加の支援により、子どもたちが適切な保育と居場所を失うことなく過ごせるよう、市全体で充実した支援を実施することが重要です。連携の中核を担う公設相談窓口の具体策や私立幼稚園への支援策が明確になってから廃園について議論することが適切であるとの意見には強く共感いたします。

よって、繰り返しますが、居場所を失い、行き場所を無くしてしまう子どもや家庭が生じることが絶対に無いように、実効性の伴った明確な方向性を早急に示すことを強く求めます

また、先進的な事例であった付属幼稚園の取り組みをこれまでの成果としてまとめ、流山市の独自のインクルーシブ教育を確立することは極めて重要です。付属幼稚園は、子ども一人ひとりの発達段階に応じて受け入れ、保育の方法やアプローチを個々の子どもに合わせ、さまざまな機関と協力しながら体制を整備し、支援を行ってきたとのことです。卒園や就学に向けて、中途半端に終わらせず、地域と共に取り組んできた努力があるということですが、教育委員会が現場に足を運んで教育の実践や課題を吸い上げてきた形跡は薄いと言わざるを得ません。

それはコロナ禍であらゆる問題が山積していたこと、教師不足で人的資源が分散し対応がしにくかったこと、様々な理由があったことは考慮いたします。しかしこれからは、教育委員会や新たに立ち上がったプロジェクトチームが現場に足を運ぶと共に、担当する部局やチームに外部専門家を招聘することへの検討を提案し求めます

補足:議会では、園の実績を吸い上げて全市に展開するというのはNGという指摘もございました)

公立幼稚園を運営しながら幼児教育のありたい姿を研究するという難しさ(柏市)

柏市でも2011年、最後の公立幼稚園を廃園にすることを選択されました。その分、幼児期における教育内容の研究、小学校と幼稚園・保育園・子ども園との連携等について研究し、成果を広める事業を拡充されたそうです。特別支援教育や教育に対する様々なニーズに対して、幼児教育を充実していくためにはどう人やお金を振り向けていくかという財源論に向き合った議論が展開されたようです。公立幼稚園を運営しながら幼児教育のありたい姿を研究するという難しさについて、柏市の当時の関係者から聞くこともできました。

流政会からの要望

要望①:流山市独自のインクルーシブ教育を確立すること

子どもの教育を0歳から18歳まで大きな見通しで捉えた、だれ一人取り残さない実践が付属幼稚園にあります。これを吸い上げ、流山市独自のインクルーシブ教育を確立することを求めます。この仕組みの構築は、療育を必要とする子どもたちへの配慮を強化することに留まらず、障害を持つ子どもたちの増加に伴い、教員と園児の双方にかかる負担を軽減し、幼児教育の質を保障することにもつながります。

補足:議会では、これまでの園の実績を吸い上げて全市に展開するというのはNGという指摘がございました)

要望②:現状分析と今後の方策について、説明責任を果たすこと

子どもや子育てへの取り組みにおいて、親や地域社会の理解を深めるための行政の努力は必要ですが不十分でした。地域への説明責任を果たすことを強く要望します。同時に限られた予算をどのように分配していくのか、これまで公立幼稚園の実践を成果として吸い上げ、全市に活かしていくのかは流山の全市民に対して説明が必要です。

本陳情は不採択といたしますが、当局が現状分析と今後の方策について、説明責任を果たすことを強く求めます。

今後の議論

「議会では討論が長い!」という野次もござましたが、今後の方向性を決めるにも論点整理が重要なので長くなりました。より良い子育て環境を創っていきたいと思っているのは私たちも一緒です。
より良い政策議論が出来るよう最善を尽くします。政争にしてはならない、そのように考えております。

市長は議会の最後の「早急に方向性を示す」とおっしゃってくださりました。どのような方向性になるにしても、既に顕在化している課題に対する対応がおざなりになったり、新たな問題が発生しないよう、冷静に対応していきたいと思います。


応援頂けると、他自治体への視察や研修費、専門家にアドバイスを求める、同じ思いを持つ議員さんに直接会いに行き対談する等、活動量を増やすことが出来ます。まっとうな政治を行うためのサポートよろしくお願いいたします。