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長野久義選手に教わる、「気配りのレシピ」

今更感が否めなくなってきたが、先月の25日に放送された、「アメトーーク 今こそジャイアンツ芸人」を視聴した。
過去の名場面やイイ話を放送して、ファン獲得をはかるという企画だったのだが、既にファンのわたしも楽しく視聴させてもらった。

その中で、2018年オフに丸佳浩選手のFA移籍に伴う人的補償で広島東洋カープに移籍した長野久義選手の話題が出て、2012年シーズン最終戦で、坂本勇人選手と最多安打を分け合った出来事が紹介されていた。

この試合は、坂本選手が長野選手に追いつくかたちで最多安打に並ぶと、打席に入るはずだった長野選手が交代。
ベンチから二塁上にいる一緒に最多安打を獲得した坂本選手へ、喜びの「ガッツポーズ」。坂本選手が涙した、というファンの間では有名な感動エピソード。(もちろんこの後坂本選手も交代し、最多安打を分け合った。)

実はこの試合、現地観戦していたのだが、この話に加えて延長戦となった10回に矢野謙次選手のサヨナラホームランで試合が決するというファンにとってはたまらないシーズン最終戦だった。
10年近く経った今でも現地観戦の中では思い出深い試合だ。

「気配りの天才」長野久義

この話から派生して、長野選手はとても「人が良い」という話になる。

最近話題になった話といえば、昨シーズンの広島駅に出没エピソードだろう。
日本シリーズの初戦から2連敗で、チームとしても暗い雰囲気が漂う中、大阪から福岡へ新幹線で移動中のジャイアンツナインに、広島駅で衝撃が走る。

ホームに、満面の笑みでかつての仲間たちが乗る新幹線に手を振る長野選手の姿があったのだ。

この長野選手のはからいで、ナインは元気付けられたに違いない。
でも、本人は「たまたまですよ」とすっとぼける。

2連敗で落ち込むチームを励まそうとした行動、そんな素晴らしい行動をしたのに決して前に出ない、偉ぶらない姿が、ニュースとなり瞬く間にわたしたちの元へ届いた。

「さすが長野さん…!」と感動したが、「長野さんらしいな」と良い意味で驚かなかった。
なぜなら、わたしたちファンはずっと、長野選手が「気配りの天才」であることを見てきているからだ。

アメトーーク内でも、ナイツの塙さんが長野選手から受けた気配りの話をする。

ジャイアンツファンである塙さんが、長野選手の奥様であるテレビ朝日の下平さやかアナウンサーとお仕事をしたときのこと。「旦那から」と下平アナウンサーから手渡されたのが、カープ長野のサイン入りユニフォーム。

「カープも好きになってくださいね」という長野選手の気持ちが込められているらしいが、自分の妻がジャイアンツファンの塙さんと仕事をすると聞き、気を回して行ったことだろう。

長野選手は、このような気配りを繰り返し繰り返し行っている。
食事の場で先輩を立てるのはもちろん、後輩にまで気を遣う。後輩がミスをしたり落ち込んでいると、すかさずフォロー。裏方さんにも何かのタイミングで必ず差し入れをする。

このようなことを繰り返しするから、周囲からの人望は分厚かった。
人的補償で移籍が決まった時も、チーム内のショックは計り知れないものだった。

長野選手を見ていて凄いなと思うのは、気配りというのは、広い視野で物事を見た上で周囲に目を向けて、なおかつその周囲を気にかけないと出来ないことだと思うからだ。
つまり、「自分より周囲の人」の行動を徹底している。

例えば、自分が試合で活躍して勝利した日に、チームメイトが打てず落ち込んでいたとする。
チームや自分の成績が1番のはずのプロ野球界で、自分が活躍して勝利なんて最高の結果なのに、報道陣に「長野に笑顔はなかった、と記事にして」と頼む。
自分が目立ってなんぼのプロ野球の世界でこんなこと出来るだろうか?

逆に、チームが連敗続きの時、自分も苦しいだろうが、「裏方さんも疲れている」と、差し入れをする。
自分が苦しい時に、他の人のことを気にかけてあげられるだろうか?

ふと自分の行動を振り返る。

仕事では自分のタスク量に追われて、後輩が困っていそうだったのにカバーしてあげられなかったな、とか、異動してきて不安そうな同期の精神的なフォローあんまり出来てないな、とか。
私生活でも、普段おしゃべりなわたし、人の話聞かないで自分の話ばかりしちゃうな、とか。

少し考えただけで、自分の行動にぞっとしてしまう。

本当に大事なのは自分だけだろうか

長野選手ほどの気配りは難しいにしても、少し「自分より周囲の人」精神を意識してみると、行動が変わってくるはずだ。

後輩が困っていそうなら、自分が忙しくても、少し立ち止まって「大丈夫?」って声をかける。同期には「仕事慣れてきた?」って一言かける。自分の話の前に、「最近どう?」って人の話を聞く。
その一言を足すだけで、大げさかもしれないけど救われる人も出てくるかもしれない。

寂しかった長野選手の移籍。
戦力ダウンはもちろん、生え抜き選手がまた1人いなくなってしまうのも辛かった。
でもそれより、長野選手ほどの人格者がチームを去る寂しさが大きかったように思う。

少しだけでも、少しずつでも、長野選手が教えてくれた自分のことより周囲、な「気配りのレシピ」を実践していこうと思う。

なぜなら、わたしも周囲の人の少しの気配りで気持ちが軽くなったり、明るくなったりすることがあるし、なんなら面識のない長野選手のエピソードを聞いただけでもほっこりする。

生きていく上で、1番大事なのは自分だろうが、大事なのは自分だけじゃないはずだ。
自分が起こした少しの気配りで、誰かが少しでも幸せな気持ちになるなら、幸せじゃないですか?

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