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ザ・ラスト・アラサー

アラサーである。
正確には、あと数ヶ月でサーティーンになる。アラが取れるわけだ。

自分が10代20代の時は、30歳になるなんて思わなかった。いや、想像がつかなかったが、いざ目の前に「30歳」が立つと、仰いてしまった。

「結婚」「出産」「育児」「昇進」

そう言った、目に見えるステータス、人生における大きなステージに立たずに、わたしは30歳になる。

ハッキリと言おう。焦った。
結婚してない、子供もいない、薄給の独身オタク女。
そんなわたしのままでいいのか、と。

と、いうわけで。

やって来ました「エステティックT○C」の脱毛体験コース。

取り敢えずわたしは、30歳になる前に「両ワキの脱毛」をすることにした。

脱毛、憧れがあった。
諸事情でわたしは年に何回かドレスを着る。その度に全身の毛を剃るのだが、ワキ。お前はいつも、びみょ〜な剃り残しを作らせるな、わたしに。

夏場なんて、通勤電車で油断した日には「おしまい」だ。ワキから出てくる太く元気な子供達ときたらもう、もう。

体験コースを経て、震える心で17万ほどかけて、わたしのワキは脱毛へ一歩踏み出した。
これが1月末の話だ。

そんなこんなで、幼稚な29歳8ヶ月の独身夢女子オタク女は、大人の階段を登ったのである。

ところで、わたしには母がいる。
60歳を過ぎてから趣味の洋裁を仕事に変えた、恐ろしいパワーの持ち主だ。
彼女は最近、県内で地元から少し離れた土地のお教室に通い始めた。因みにこの人は、様々な理由で片道2時間もかかる山にまで洋裁を習いに通った経験のある人だ。現代か?
母は毎日楽しく学び、仕事をしている。それもわたしは知っていた。

昨日、泣きながら在宅勤務をしている限界社会人、わたしのiPhoneが、母から連絡が来ていると教えてくれた。


スクショである

○○ちゃん

同じ塾に通っていた、別の学校の同級生の名前だった。
ぶわわわわ!記憶が、蘇る。

みほこちゃん、ノートの裏に落書きしよう。
みほこちゃん、一緒にご飯食べよう。
みほこちゃん、みほこちゃん。

ああ、○○ちゃん。高校生になって、年賀状のやり取りもなくなり、連絡先も分からなくなってしまった○○ちゃん。懐かしや、懐かしや。

え、ウエディングドレス?!?!?!?!

わたしの脳内、芋ジャージを着て笑っていた中学生の○○ちゃんの姿が一気に不明瞭になった。ノイズが走りまくっている。なんだこれは。芋ジャージとウエディングドレス?A○Bの新曲?

一先ず、素晴らしい!素敵!とだけ送り、何故だかバクバクする心臓を抑えつつ話を聞くと。

「入籍を終えて、これからお式の○○ちゃんです!」

と、返ってきた。
そうか、○○ちゃん。結婚するのか、いや、したのか。

「結婚」「出産」「育児」「昇進」

そのどれも手に入れていない独身腐女子オタク女は、両ワキ脱毛完了まであと残り何ヶ月かな、などと思っていた。

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