見出し画像

勿忘草

「花束みたいな恋をした」をようやく観た。
先に明示しておきますが、私は坂元裕二さんのファンである。そして映画について批評や解釈云々を書くわけではありません。あしからず。

坂元さんの書物は全て揃え、「私たちの教科書」以来のドラマは全て観た。
この映画も初日に行きそうなものなのだが、コロナ禍と若者の恋愛映画であろうが故に…今まで時間を要してしまった。「大豆田とわ子と三人の元夫」が放映されているからそちらに没入し満足していたというのもある。

私が坂元さんに魅了されている理由。それは彼の作品の中に私を見つける事ができるからだ。

劇団にいた頃、劇団の作風がマイノリティで繊細な人達の物語が多かったせいか、上演後のアンケートに「私の話ですか?」とか「私の事だと思いました」とか書かれる事があった。若かりし私は「んなわけないでしょうよ…」と、その感想にメンヘラ判子を押印しかねないくらい退いていた。

しかし坂元さんの作品を観ると私自身がそう感じるのだ。…痛いですね。
もちろん、私の話でしょ?とまでは思わない。
私みたいな人は結構いるのだな、と客観的に思い知らされる。ずっと少数派で生きてきたと自覚し、劣等感と同時に自分を守ってきた感覚が、同じような人が他にもいるよと教えてくれる。

今回の映画を観ても「穂村弘」「今村夏子」「押井守」「ガスタンク」「JAXAのトート」「きのこ帝国」「ゴールデンカムイ」本棚の「AKIRA」「今日の猫村さん」、、、私も通ってきた作品たちだけでこんなにある。絹ちゃんが「ゼルダの伝説」を「走っているだけでも楽しい」と言った時は首をブンブン縦に振りそうだった。本当、楽しい。(ゼルダとNieRシリーズは制覇してても走るために時々プレイしている)
次に観た時はまた新たな発見がありそうなくらい好きなものや気になるものが次々と提示されるのだ。

そりゃそうだ。坂元さんが好きなんだから、坂元さんが好きなものは私もきっと好きに違いない。坂元さんが好きで映画を観た人は私みたいな人が多いだろう。

タイタニックや半沢直樹には興味が湧かず、ディズニーランドより下北沢に行きたい。ミニシアターやライブハウスのライブが好き。でも外食はドリンクバーのあるファミレスが落ち着く。基本、家が好き。でも興味があるものの為なら即行動しちゃう。(これらの事は私の話で映画には出てきません)

好きなものをわかってもらえて、感覚が近くて、違和感を共有できる相手。そんな人はきっとそうそういない。そう思って生きてきた。
以前、「俺とおんなじ生き方してきたのかと思った」「双子やん」と言ってくれた人がいた。その人は私に恋愛感情は抱かなかったようなので、恋に発展するには何か足りなかったのだろう。当時私はその人に少なからず好意があったので結局は疎遠になったのだが、今話す機会があれば、同じところを見つけられるのだろうか。それともあの頃とは変わってしまっているのだろうか。

麦くんと絹ちゃんは見事に恋に落ちて、別れてしまう。
歯痒い。どうにかならないの?大切な人なのに?後悔しないの?私は単細胞なのだろう。一晩たった今も解せないままだ。
勿忘の歌詞のように巡り巡る運命を超えて愛の花を咲かせておくれよ。

でもこの映画を観て、そんな人、分かり合える人はそうそういないと思っていた自分に変化が起きている。そんな人、は結構いるのかもしれない。知らないだけで。そう思うと人生折り返しの自分でも、まだまだ人と関わっていきたいと思える。

こんなご時世で外に出るのも躊躇する日々が続きますが、読んでくださった方、私にも、そんな人、との出会いが沢山ありますように。

最後に、映画の中で二人が初デートした「ミイラ展」が大阪で開催しているらしい。クレイジージャーニーのDVDを揃え、番組をほぼ録画している私としてはこれは行かねば、と使命感に駆られている。書を捨てよ、町へ出よう!(←書いてみたかっただけ。)