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音楽が世界を膨らませる

#スキな3曲を熱く語る というお題で募集がかかっている。
少し前から私の今までの人生で寄り添ってくれた音楽について何度か書いてきたのだけど、それとは別に今回は違う趣旨で選んでみた。

私は過去に劇団で活動していたのだが、(1996年〜2006年くらい)その劇団は年に一度の本公演と年にニ、三度の自主公演のような公演をしており、自主公演に至っては照明、音響、舞台美術のプランも自分達が担当していた。
長年の活動の中で私が音響担当で音源を選んでいた時もあり、その中で印象に残っている3曲を紹介する。

1曲目は Stina Nordenstam 「Fireworks」

演劇を上演する際、客入れの時から小さめの音楽が会場では流れている。時間になって最後の音楽が大きくなり暗転し、観客達はいよいよ始まる上演に対峙し緊張する。その最後の曲を私達はキンソン(緊張ソングの略)と呼んでいた。
そのキンソンに使った事があるこの曲。歌の途中で彼女が鼻歌のような歌詞のない部分が二度あるのだけど、その二度目で音が大きくなり会場が暗くなってゆく。撫でる風のような、或いはふわっとさせてくれる、とても稀有な声。これから登場するであろう女性のアンニュイな様子を醸し出す、そしてこれからこの場で起こる揺らぎを予感をさせたはず。

この曲に出会ったのは私がまだ20代前半の頃。まだサブスクなどなかった頃に毎週タワーレコードを徘徊していた私。視聴コーナーで彼女のファーストアルバム「Memories of a Color」を聴いて、なけなしのお金で即買いした。それくらい彼女の音楽は私を魅了した。「Fireworks」は2枚目のアルバム「And She Closed Her Eyes」に入っている。

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2曲目は レオシュ・ヤナーチェクの「おやすみ」

この曲は沢山音源があるけれど、私が選んだのは「存在の耐えられない軽さ」というミラン・クンデラの小説の映画のサントラの曲である。冒頭のピアノの音が柔らかく、且つ繊細。そして主張してくると力強い意志を感じる。
この曲を使った芝居は、遠距離恋愛の彼女がいるにも関わらず、3人の女性を妊娠させてしまった男と妊娠した3人の女性の話。
その事実の背景で、男はひとり風呂屋からの帰り道、電柱を見上げた時に抱えていた孤独に気づく。そんな時、静かにこの曲が聴こえてくる。

思い出しただけでゾクゾクする。素晴らしい選曲のセンス!(自画自賛)こちらは言わずもがな、映画を見てCDの購入に至った。これも20代前半の頃の話。

芝居はナマモノなので観せられませんが、「存在の耐えられない軽さ」、小説も映画も良いので是非。(内容は劇とは関係ありません)

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3曲目は高木正勝さんの「girl」

この曲は「COIEDA」というアルバムに入っていて1曲目と同じくキンソンで使用。後に公文のコマーシャルでも使われていた事を知る。なので、耳にしたことのある方は多いはず。冒頭の繊細なピアノの入り、徐々に音が絡み合い、色んな感情が昂って飽和状態。

使用した芝居は職場の女性3人が同じ仕事をしていながらも其々の事情や考え方の差異により食い違い、交錯していく内容だったが、芝居が始まる緊張感を高めるには絶好の要素を兼ね備えた選曲だったと思う。

この曲を生で聴いた時、高木さんのピアノは生き物だと思った。いや、もちろんそうなんだけど、なんていうか、ピアノと彼が一心同体で、生命力に溢れていた。周りの空気まで音が動かしているように思えた。

この曲をどうやって見つけたかというと、それ以前のアルバム「JOURNAL FOR PEOPLE」をレンタルで借りたのがきっかけだったと記憶している。多分。
というのも、私は劇団活動をしていた時は、聴きたい音楽を探すのとは別に、使える音楽を探していて、高木正勝さんのCDはほぼ借りていたからだ。そして気に入ったものはなけなしのお金でタワーレコードで購入する。ありがとう近所だったビデオインアメリカ西七条店。33歳で結婚し、私にとって最後の芝居だったので34歳の頃の話。もう15年も経ったのだな、と今、何も変わっていない自分に愕然とした。

今、高木正勝さんの曲は朝ドラ「おかえり、モネ」で毎日聴いている。もうすぐ終わるのが本当、寂しい。

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…というわけで、最後に今の気分を吐露してしまったが、これが私の選んだ3曲。
3曲とも心に寄り添う素晴らしい曲なので、劇とは関係なく是非聴いてみてください。

最後に。音楽が世界を膨らませる というタイトルにしたけれど、音楽が私を膨らませる と書いた方がしっくりくる。だけどここは敢えて、個人から世界へ。としておこう。

間に合いそうなら学生時代にモダンダンスを専攻していたので踊った3曲、も次回選びたいと思う。