思い出せないから生きていられる
「人間はどんなことでも忘れるようにできてるから、だから生きていられるんだよね」
ぽろぽろ泣いた失恋、あの人の心無い一言、どうしてもやりきれなかった部活の夏合宿、その時は「もうダメだ」とお先真っ暗になった。けれど、時間が思い出を風化させ、心の負担を軽くし、いつのまにかまた頑張れるようになる。
辛いことが忘れられなかったら、すべてを背負って生きていかなきゃいけなくて。どんなに楽しい思い出がうまれても、辛い思い出を抱えて過ごすのは結構ストレスになるだろう。
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2016年から、5年日記をつけている。「つけている」と言ってもその内容は飛び飛びで、副業を始めた2016年の夏あたりから1年以上すっぽりと間が空いている。
その間、つらいことも楽しいこともたくさんあった。あったはずなのに、空白の日記を見ても何も思い出せないのがなんだか切ない。逆に去年の今頃は、あまり思い出したくないような出来事までしっかり書き記されてあり、その時のことがしっかり頭から離れない。
残しておいてよかった、とあの頃の自分をほめる記述もあれば、別に思い出したくないのにな、と読むのもためらうもの、または「なんで書いておかなかったんだろう」と悔やむものまで、さまざまだ。今どんな気持ちで読もうとも、その時は書きたかったし、書けなかった。未来の自分が読んでどうなるかなんて一切気にしないで、心に残ったことをそのまま書いているのだ。
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忘れてしまったことは、生きるために忘れることが必要だったこと。残っている記述は、何かしら生きていくために必要なこと。無意識だけれどそんなふうに、情報の取捨選択が頭の中で行われているのかもしれない。
だから私は忘れるし、そしてたまには覚えている。
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