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走りながら考える日本版RSI [Zoom同時通訳]

広告代理店でインハウスをしていたときは、空港の充電スポットを利用した広告アイディアを思いつき、ハケンの通訳者なのに企画書書いて自主提案に行ったり。

製薬会社でインハウスをしていたときは、(通訳業務が属人的で不透明になっていたため) 通訳者のOutlookスケジュールをRED/AMBER/GREENで可視化し、スケジュールからavailabilityを確認して通訳予約フォームを自動送信できる仕組みを作り、通訳者初の「生産本部長Kaizen Award」をもらったり。

すぐに通訳以外のことに心血注ぐフシがある。

コロナの問題が始まってからも、私がメインで担当している製薬・医療機器業界は、「供給を止められない」という事情もあるのか、4月アタマまでオフィスに出勤し20人規模の要通訳の会議や研修をしていた。

その後「緊急事態宣言」を機に、突然みんな在宅勤務になってしまう。

一方私は3月から日本会議通訳者協会の遠隔セミナーや遠隔飲み会でZoomを使用し、「意外に一体感あるしめっちゃいいっすよ」と周囲にリコメンして回っていた。「同時通訳者用の機能もあるらしいですよ」とか。

Zoomの言語通訳機能というのは、参加者に同時通訳者のロールを割り当てるもので、通訳者ロールを割り当てられると、参加者が見ている普通の画面にプラスαで訳出する言語を切り替えるGUIが表示される。

Zoomの公式サイトを見ると、同時通訳者のロールを追加することも可能とか。つまり理論上はパートナーと組んで、長時間の通訳を遠隔で対応することも可能なのか。

そこで問題が二点。

一点目。同時通訳者のロールでZoomに入ると、オリジナル音声しか聞こえないため、パートナー通訳者の訳出音声をモニターできないということ。しかしこれは、一般参加者用のインビテーションを各同時通訳者に追加で発行し、通訳回線用 (イヤホンマイクでオリジナル音声を聞き訳を送信する) PC以外のデバイスで一般参加者としてZoomに入り、設定→言語通訳→音声選択 (オリジナル/英語/日本語/オリジナル音声をミュート) →完了を押すと、2回目以降は日の丸と星条旗をクリックして音声切り替えが可能になる。

二点目は交代どうするの?ということ。これについては、私が一昨年LinkedIn上でスカウトされたアメリカのエージェントから、昨年RSIの案件を請け負っていたことがヒントになった。InterprefyやKUDO等のマジRSIでは、通訳者のPC画面に[Hand over now]というボタンが表示され、それを押すと、パートナー通訳者には[Your interpreting partner has requested a handover. PLEASE UNMUTE]というポップアップが表示され、パートナー通訳者がアンミュートすると、自分は1分以内に話をまとめてミュートにする。ではどのタイミングでHand overするのかと言うと、ごっつアナログなのである。PCの時計(自動調整されているから)で00分、15分、30分、45分でキッチリ交代する。オンサイト通訳の「ちょうど話が込み入ってきたから〜」「キリのいいところまで〜」「さっき多めにやってもらったから〜」「急なバイオブレイクがあったから〜」はナシで、なんしかキッチリ交代する。

それでできそうじゃね?

そのやり方で本当にできるのか検証してみましょう〜ってことで、同じ医薬をよく担当している先輩Aさんにお電話。「いつかはやる時が来ます。必ず。そのときに面識もない、なんやったらちょっと怖い人とやるんと、今私とやるんとどっちがいいんすか?」そして担当のコーディネータさん、Aさん、私の三人で通訳者ロールの指定と音声チェックのリハを事前にしてから、定期的に呼んでいただいているお客様の20人規模の会議でプチ実証実験しました。

大〜成功〜と言いたいところだけど、あれですね、やってみると色々出てくるもんですね。特にZoomの言語通訳機能は昨年リリースされたばかりでまだまだ進化中なので。でも通訳者サイド&お客様サイドで工夫したら回避できる問題もあったので、書き出してみようと思います。

[お客様のオペレーション起因のもの]
音声チェックをする担当者や何をどうチェックするかが決まっていなかったため、会議のファシリテーターが英語チャネルに向かって日本語で「え〜え〜聞こえてますか?」「○○さん、今何チャネルにいるんですか?」「英語だよ」「あっXXさん、おつかれさまです」「あっおはようございます」「え〜通訳さん、聞こえます?」みたいなことやってるうちに (いかんせん一人ずつしか喋れないので) 会議開始時刻になってしまい、結局通訳者の一人が通訳者ロールを割り当てられていないことが発覚しないまま、会議がスタートしてしまう。

<学び> 音声チェックのプロトコルを作る (音声チェック担当はオリジナルチャネルのまま英語と日本語を話し、通訳者は順番にEtoJとJtoEがモニターから流れることを確認) →お互い慣れるまでたいがい時間かかるので日英2チャネルx通訳者2人分の音声チェック行う時間を確保したスケジュールを組んでもらう

[Zoomの機能起因と思われるもの]
通訳音声が突然聞こえなくなる事象があった。チャット欄に色んな人から「Can't hear you」「通訳音声が聞こえませんがどうしたのでしょうか?」「can you tell translator to get back to english channel?」とバンバン届いてプレッシャーはんぱない。
原因は不明だけど、頻繁な日英の切替があった時に発生。切替時にキモチゆっくりスライドさせるとうまくいったとか。ほんまか。

[通訳者&デバイス起因のもの]
ー開始時に Aさんが通訳者に指定されていなかった
<根本原因>
Zoomを初めて使うデバイスは、自動的にはユーザアカウントに紐づけられないので注意。Aさんは以前スマホでZoomアカウントを作成、PCで通訳回線に入る際はメールのリンクからブラウザで入った。
(いったん会議から退出し、再度入る際はリンクから入らず、作成したアカウントにサインインしてから入ることで解決)
ー私がモニター回線に入れなかった (違うデバイスで入っても通訳者に指定されてしまい、パートナーの声が聞こえないままで午前中がんばる)
<根本原因の仮説>
PCやiPadのキャッシュあるいはキーチェーンにより、一度Zoomにログインしたデバイスはユーザアカウントが自動的に一元化?されて?しまう?
(昼休み中に別アカウントを作成し、念のためiPadのZoomアプリをアンインストール&再インストールし、別アカウントから入ることで解決)
ーAさんの声が聞こえたり聞こえなかったりすると何回か言われた
<根本原因の仮説>
Wifiがダメ?なの?
*次回は通訳回線を有線接続にしてみる。そもそもガチRSIは有線の通訳者しか登録できないので。

あ、あと私の実験にお付き合い頂いたAさん、ありがとうございました。通訳完璧でした。「一緒に冒険の旅に出てくれるかどうか」って結構大事です、自分的に。Zoomを一週間で猛勉強して色々考えてくれたコーディネータさんも、当日は終わるまで携帯握り締めて待っててくれたらしいです。ありがとうございます。

この日本版RSIにおいては、同通パートナーはほんと重要でして。基本メモ出し一切できないので、分野の知識とスキルが手堅いってこと。加えて「通訳音声が聞こえない」「モニターできない」等の通訳以外のトラブルシューティングを、「通訳しながら」やらなきゃいけないので、同通パートナーとのコミュニケーションが大事過ぎる。今回は、コーディネータさんとZoomリハ1h、二人でZoom練習1h、前夜にブリーフィング1h、プラス昼休みと中休みはすべて(食べながら)LINE通話でトラブルシューティングと作戦会議していた。これを面識のない通訳者と一緒に入って再現可能か?と言われたら普通に難しいわな。チャットでしかやりとりできないと情報量も限られるし。

自分の経験から、ガチの (いわゆるプラットフォームの) RSIは向く案件と向かない案件があると思う。基調講演みたいなのはいいけど、小部屋に分かれてディスカッションの時は、マイクがテーブルの真ん中に一個しかないとかで、PCの音や咳や雑談拾いまくってやりにくかったので。それに比べるとZoomは各自がパソコンから入ってくれてるし、一人ずつしか喋れないので音が取りやすい。初回だからトラブルもあって顔出しなのにめっちゃあたふたしてしまったけど、我々の必死感も画面から十分伝わったことでしょう。とほほ。次回はもっとスムーズにできると思います。失敗は成功の母。


※この情報は2020年4月時点のものであり、機能拡張などにより画面表示が変わる可能性があります







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